September 13, 2011

◆『籠鳥檻猿』

本日ァ今年初の鳥越落語会でござんす。
喜多八師匠の入院騒ぎと東北の震災の影響で九月まで一度も開催されませんでした。

『第五十六回 鳥越落語会』
@浅草橋二丁目・浅草橋区民館四階ホール

いつもでしたら受付には若い女子が何名かいらっさるんですがね、本日はご老体が二体でした。

柳家ろべえ◆垂乳根(たらちね)

「先日暇だったんで、京都まで自転車で行って参りました」
「箱根よりも鈴鹿の山越えが辛くて半端なかったですね」
「で、今日帰って参りました」

ろべえあにさん、「泥棒の噺を」と切り出しましたが、後で上がる師匠と根多が被ると気付いて「夫婦のご縁」と切り換えておりました。

柳家喜多八◆短命

ろべえあにさん、見るからに市販の物ではない湯呑みを片手で持って高座に置いてゆきます。

「いつも綺麗どころが受付に居るんですが」
「今日はね、まァ爺が二人居ましたね」
「まァ彼らはご贔屓さんなんですよ、噺家が厭がるぐらいの」
「もう、根多とか全部知ってんだもん」
「で、これ(湯呑み)は受付に居た爺の手作りなんですよ」
「・・・家に十個ぐらい転がってるんですけどね」
「ほんとにねぇ(手拭いを取り出して湯呑みの中を拭き始める)」
「ろべえも中に湯が入ってる風に持ってくりゃァ此処でどかんとウケたかもしれないのに」
「あいつ、ほんと藝が無いなァ」

お仲入りで御座ィます。

ニューマリオネット(伊原寛)◆操り人形

伊原先生はかつて奥様と共同作業だったそうですが、腰をお悪くされて以来は独り立ちだそうです。

「安来節」 ・・・ 腰の捻りが滑稽感を演出
「獅子舞」 ・・・ 終演後に中の演者二名が顔を見せるという藝の細かさ
「会津磐梯山」 ・・・ 徳利から猪口に注ぐ手付き、段差から落下してから這い上がる様は秀逸

柳家喜多八◆土竜泥(もぐらどろ)

「前座の頃は伊原先生にはお世話になったもんです」
「浅草(演芸場)に出てる時、通り掛かった中華料理屋に伊原先生がご夫婦でいらっしゃってまして」
「普通、先輩藝人が先に食堂にいらしたら、後輩は遠慮するもんなんですがね」
「その時たまたま目が合っちゃって、『おいでよおいでよ』なんて呼ばれまして」
「一番安いラーメンでもと思ったんですが、思いもかけず高価な五目そばを戴きましてね」
「胸にぐっと来ましたね、そういう食べ物の恩は忘れませんよ」

追い出しが鳴りましてお開きでござんす。
さして食欲も無ぇてんで、立ち寄った大衆居酒屋はあたしゃァ初でしたが、無名藝人の巣窟でして、店内はカラオケ完備にて久方振りに他人の熱唱する「あずさ2号」なんてぇ耳にしました。
何故か元朝青龍関の従兄弟なんてぇ従業員もおりまして、複雑な人間関係の相関図が見え隠れします。
彼らの異様な盛り上がりを横目に、河岸を変えようと席を立つ機会を伺うばかりで御座ィます。

(了)

投稿者 yoshimori : September 13, 2011 11:59 PM
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