May 21, 2012

『流刑地より乗馬で3.5ハロン』 (第17回)

◇女である。

◇「闇の使い走り」として、黒いことをしている。(でもパシリ)
◇前回は「勇者」の称号を得る為の代償が「仲間」という、一生十字架系な哀しい結末となっている。

◇さて今回、西方都市に住む修道士より受けた依頼、「死者の間」で夜な夜な徘徊する迷える者どもを一掃するという、「おそうじ」ミッションである。
◇ひと通り駆除を終えると、地下墓所の奥から走り寄ってくる顔色の悪い女がひとり。
◇「知っていますよ、分かってますよ」と訳知り顔で話し掛けてくる。
◇何をですか。
◇「あれ、おいしいですからね」
◇だから何が。
◇「そうですね、お祝いに晩餐会を開きましょうか」
◇くれるのものは何でももらいますが。
◇「分かりました、ではもうひとり参加者を連れてきてもらえますか」
◇誰をですか。
◇「あの、例の修道士さんはどうでしょうか」
◇じゃァ聞いてきますよ。
◇修道士の下を訪ね、晩餐会の話を切り出すが、脅しなだめすかしても「神に仕える身だから」となかなか首を縦に振らない。
◇万策尽き、賄賂でも渡そうかと小銭の音を聞かせると、「うんうん、すぐいく、いまいく!」と目の色を変えやがった。
◇現地に到着。
◇晩餐に参加する者の半分は知らない人、残りの半分は何処かの街で見た顔ばかり。
◇業種でいうと、露天商(肉専門)、雑貨屋、馬屋、等々。
◇「さあ、はじめましょうか」
◇顔色の悪い女は修道士に飲み物を与えている。
◇与えられた修道士は疑うことも知らずに一気に飲み干し、「何だか眠いにゃー」と瞼をこすり出した。
◇「では、こちらへ」と女が案内した先には兇々しい台座が据えられており、負のオーラも甚だしい。
◇明らかに血と分かる赤黒い痕が染み付いた台に修道士は寝かされ、その上には殺傷力満載な尖った鉄分銅がぶら下がっている。
◇「さぁどうぞ」
◇どうぞてあなた。
◇「ひとくち目はゆずります」
◇これ喰うの?
◇「どうぞどうぞ」
◇・・・食べない選択肢もあるのだが、スルーしてしまうと得られる「名声」がひとつだけ足りなくなり、「完全なる蒐集」を目指す身としては由々しき事態である。
◇思慮二秒、・・・いっただきまーす。(瞳孔全開きで)
◇「ふふ、これであなたも仲間入りですね」
◇・・・うぇ。
◇カニバる猛者どもが集う街からの引越しを考えたのはこの瞬間からだった。

(續く)


追記:
金柑食? 新手のダイエットかしらね。(情弱)

投稿者 yoshimori : May 21, 2012 11:59 PM
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