本日ァ若松河田での落語会でござんす。
大江戸線に揺られてゆるゆると向かいまさァね。
『第四回 戸山寄席 桂扇生独演会』
@戸山二丁目・戸山生涯学習館一階
桂扇生◆薬罐(やかん)
「ご近所の方はご存知かもしれませんが」
「(三遊亭)金馬師匠のご自宅がこのすぐ近くにありまして」
「ピンクのタイルが全面に貼られてましてねぇ」
「地元の方は『ピンクハウス』と呼んでますね」
桂扇生◆竃幽霊(へっついゆうれい)
会が終わりまして、高座から去ろうとする扇生師匠を呼び止めた図書館長より「質問こーなー」が急遽設けられ、扇生師匠は帰るに帰れなくなります。
客席に座るひとりの方からの「へっつい幽霊には若旦那が出てくるけど、扇生さんのは出てこないんですか?」との設問に、扇生師匠は立ったままで省いた若旦那の場面を説明してゆきます。
「本来であればですね、へっついの幽霊話を立ち聞きした熊さんがはばかりで紙を落っことすんですね」
「で、たまたま表を通りかかった大家の若旦那を呼び止めて紙を貰う場面がありまして」
「道具屋に三両付けてもらって引き取った訳ありのへっついを、熊さんと若旦那が報酬山分けを取り決めてから担いで持ち帰るんですが」
「これ、別に若旦那が天秤棒の後棒を担ぐこたァないんですよ」
「その前の話までは、道具屋の主人が雇った人足で運ばせてたわけですから」
と扇生師匠は仰いますが、道具屋は幽霊話で店の信用を落としてるわけですから、なるだけ人目に付かない遣り方でへっついを処分したいはずなんですね。
とはいえ、熊さんひとりじゃァへっついは運べませんで。(しかも同じ長屋住まいだから人目も何もありゃしません)
道具屋の主人が後棒担ぐのが正解なんでしょうが、理詰めじゃァ噺が詰まんなくなっちゃいますなァ。(何故か道具屋に置いてある間だけは幽霊が出てこないですし)
「運んでいる途中でへっついを落っことしちゃいまして、角をぶつけて転がり出た白い塊が三百両なんです」
「熊さんと若旦那は二人で山分けするですが、熊さんは博打で、若旦那は吉原できれいに遣い切ってしまいまして、その晩に若旦那はへっついの幽霊から『三百両返せー』と迫られるんですよ」
「これには怖がりな若旦那が弱っちゃいまして、こいつァ見ちゃいられないと熊さんは若旦那の実家に出向きまして、これこれこういうわけだからと話して三百両をもらい受けるんですね」
「これ、どうですか」
「おたくのむすこさんのともだちとなのる、にんそうのわるいおとこがいきなりれんらくもなしでうちにのりこんできてですよ」
「あげく、むすこさんがゆうれいになやませられているから、おかねをだしてやってほしい、きんがくは300りょう、って」
「完全に振り込め詐欺じゃないですか」
「・・・という理由であたしは若旦那を出さないんです」
丁度お時間となりましてお開きで御座ィます。
大久保通りを目指してふらふらと入った道には先ほど扇生師匠が仰ってました、三遊亭金馬師匠のご自宅がありました。
確かに目にも鮮やかな桃色御殿でござんす。
四代目金馬師匠は「抜弁天の師匠」とも呼ばれております。
ご近所の余丁町(よちょうまち)にあります嚴嶋神社(いつくしまじんじゃ)には辨財天様が祀られておりまして、そちらの通称が抜弁天(ぬけべんてん)と云いますな。
この辺りは犬公方綱吉公によります生類憐れみの令にて設置されました、二万五千坪の敷地面積を誇る、お犬様の為の小屋跡地に含まれるそうですな。
せっかくの大久保通りですからまっつぐに足ィ伸ばしまして、りとるこりあんな街に迷い込みますと、豚三層肉目当てで一軒の店にたどり着きます。
その店では俳優の照英さんが早い時間から飲んだくれている様子でして、帰り際に女将からの腹筋ぱんちもらっている絵面がなかなか印象的でしたなァ。
今宵はこの辺で。
(了)
<覚ヱ書キ>
ハングンニョリ◇サムギョプサル(チャンギルム、サンチュ、ケンニプ、サムジャン、マヌル、パ)、クルジョン、スンドゥブチゲ
ミッパンチャン◇ウォンチョリム、ペチュキムチ、ケランマリ、カクテキ、トルキム、オムク