October 25, 2012

『特先な鮮果で作ワ上げました!』

◇千代田区の一角、辛そげな雰囲気の店に来ている。
◇以下はその記録。

◇「皮蛋の和え物」
◇…もう前菜からして真っ赤なんですけど。
◇表面には分葱が散らしてあり、白身も黄身もとろけ具合が激しく、独特の香りも少なく感じる。
◇聞けば、⻩⾝が半熟状で匂いの弱いものは「溏⼼皮蛋」と呼ぶという。
◇なるほど、他店でよく見る「硬く匂う」品よりは遥かに食べ易いに違いない。

◇「黒酢豚」
◇さすがに辛い要素は皆無である。
◇肉の間に潜む赤ピーマンが異なる物体に見えてしまうのは、先入観に他ならない。
◇イメージ的に黒酢系は「具なしで真っ黒なとろみ」なのだが、当店のそれは普通に肉々しい色味の酢豚で、実際に食してみれば立派に黒酢である。
◇具材は定番の玉葱ピーマン人参。

◇「めっちゃうまい⿇婆⾖腐」
◇…メニューにそう書いてあるから仕方ないじゃないか!
◇まず旅館での膳における「固形燃料を下部に内包する調理及び保温器」を想像していただきたい。
◇その専用器の上部に据えられた鍋状の鉄板には紙製の皿が置かれており、中には世にも辛そうなマー婆さんの豆腐らが地獄のひとつの如くくつくつと煮えたぎっている。
◇薫ってくる花山椒こと「ホアジャオ」は麻(マー)と辣(ラー)を一手に担った鬼神の如き勢いで鼻孔に攻め入って止まない。

◇…ラウンド終了のゴングが鳴り響き、倒れる身体をロープが支え、落下する角度でリングを降りた。
◇俺たちの夏は終わった…。

(了)

投稿者 yoshimori : October 25, 2012 11:59 PM
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