えェ、本日ァ浅草橋での落語会でござんす。
実は前日だったなんてぇ知人の楽曲を伴った舞台の日をうっかり今日と思い込んでおりまして、失意の中での移動で御座ィます。
『第六十回 鳥越落語会』
@浅草橋二丁目・浅草橋区民ホール
柳家ろべえ◆芝居の喧嘩
声が出なくなったなんてぇろべえあにさん、何かの足しになるだろうと足ツボまっさーじの店にゆきまして、声の出るツボや髪が生えるツボを教えてもらったなんてぇまくらを語ります。
よく高座で話す根多なんてんで、ある日楽屋にて師匠格の噺家さんから呼び出されまして、髪が生えるツボを尋ねられ、あまりの剣幕にそれが嘘だとも云えず、つい口から出任せで「顎です」 と伝え、感謝されて今日になりましたら、本日の助演の柳家はん治師匠に楽屋でご挨拶しますてぇと、「おー、ろべえ」と顎押さえながら手を振られました。
「まだ未練があるんですねぇ」
柳家喜多八◆抜け雀
「選挙ね、考えた末に行ってないですね」
って考えた素振りもありませんな。
「弟弟子なんですけど、はん治のやつ、長襦袢忘れたって云ってましたよ」
「ろべえに借りるみたいんですけど、その辺注目しといてください」
「(左)甚五郎の噺、甚五郎がいやらしいですね」
「もっとぼーっとしてるはずなんですけど」
「この時期、世間は『芝浜』を求めるんですかね」
「あたし?演るわけがないですよ」
「あれはどちらかというと、講談浪花節の世界でしょうね」
お仲入りで御座ィます。
柳家はん治◆百川
確かに布団返しに高座に上がったろべえあにさんの長襦袢は剥ぎ取られており、はん治師匠は忘れたはずのそれを着ておりました。
サゲ:
「たんとでねぇ、たった一文字」
柳家喜多八◆大晦(おおつごもり) 樋口一葉:原作
「毛深いのがコンプレックスでしてね」
「前座の頃、池袋(演芸場)で『もぐら泥』演ってたんですよ、こう袖まくって腕出して」
「そしたら、最前列に座ってる若い女性客から『汚いッ』って云われまして、ショックでしたね」
「自棄ンなってその日の夜に腕毛全部剃って、ついでに脛毛も全部」
「翌日また池袋に行って前座仕事ですよ」
「…前日の女性客こそ連日来ませんが、そういう日に限って常連の方は見てるんですね」
「『あいつ、腕剃りやがった』って聞こえてきて、また落ち込むっていう」
「都会の蚊は弱ってますね」
「排気ガスとかで空気が悪いからよろよろ飛んでますよ」
「見てて可哀想だから、『一杯飲ってけ』って腕出すんですけど」
「で、ひと通り吸い終えますと、野郎腹ァいっぱいですから、動きもどこか鈍ってるんですよ」
「ちらっと蚊の方を見ると、野郎はさすがに気付かれたと思ってびくっとするんです」
「フェイントで叩くような仕草をしたらですね、慌てて逃げようとした蚊があたしの腕毛に絡まって手足ばたばたしてんですよ」
「あれは声に出して笑いましたね」
本編:
若旦那の行き掛けの駄賃的行為が粋ですな。
追い出しが鳴りましてお開きで御座ィます。
琉球な響きの店の暖簾をくぐり抜けましてあれから、十円の鰤刺しをアテにしながらの遣ったり取ったりする運びとなりますがね、それはまた別のお話。
(了)
投稿者 yoshimori : December 16, 2012 11:59 PM