本日ァ中目黒での地域寄席でござんす。
今にも泣き出しそうな空の中、風がびゅうと吹いております。
びる風に巻かれますてぇと、怒風激しゅうして小砂眼入し歩行成り難しってな具合です。
『中目黒落語会 中目黒寄席 第百十回公演』
@上目黒二丁目・中目黒GTプラザホール
桂宮治◆つる
サゲ:
「黙って飛んできた」
桂文治◆擬宝珠(ぎぼし)
「うちの師匠、先代の文治は落語協会会長の(桂)歌丸師匠に一服盛られまして、哀れな最期を遂げました」
「そんな文治を襲名して何年か経ちましたね」
「普通はね、総領弟子が継ぐんですよ、こういう師匠の名跡は」
「(古今亭)今輔師匠の総領弟子の(桂)米丸師匠も継がなかったんですよ、米丸の名で売れてましたから」
「(三遊亭)圓馬師匠の総領弟子の小圓馬師匠も継がなかったですね、当時はテレビで売れてましたからね」
「…皆さん嫌がるんですね、カネがかかるから」
「あたしの兄弟子、一番弟子が伸乃介あにさん」
「二番目が柳家蝠丸あにさん、この方は実のお父様の名を継ぎました」
「三番目が伸治あにさん、これは師匠の前名ですね」
「四番目に小文治あにさん、これは大師匠の名跡ですよ」
「で、あたしが五番弟子なわけです」
「名跡の襲名は揉めますね」
「最近では(三遊亭)圓生問題ですかね」
「こういう名跡が止め名になってしまうと、遺族の方に所有権が移るんですね」
「で、(三遊亭)鳳楽師匠と(三遊亭)円丈師匠の『圓生襲名対決』なんてぇのがありまして、新聞の一面を飾るわけですよ」
「円丈師匠はあんな性格の方ですから、世間が盛り上がったところでさっと身を引いて譲ろうとしてたらしいんですね」
「そうしたら、(三遊亭)圓窓師匠が途中から乱入しまして、未だに揉めているという」
「皆さん、中目黒へは渋谷で乗り換えですよね」
「あたしゃァ渋谷が苦手でしてね」
「渋谷にゆくなんて仲間にでも云おうものなら、『人攫いに遭うよッ』なんて脅されたりしてました」
「当時、(古今亭)志ん橋師匠が駒場東大前に住んでらっしゃいまして」
「渋谷からはたったふた駅ですよ」
「本来であれば、渋谷で井の頭線に乗り換えれば近いんですがね」
「あたしゃァ渋谷が嫌でございますから、桜台から吉祥寺まで出まして…」
「そこから井の頭線の上り電車に乗りまして、駒場東大前に通ってましたね」
本編:
若旦那とかつては親友だった熊さん、若旦那の悩みの対象は「女」と思い込んでおりましたら、そうではないと撥ねられます。
「てこたァこれは『崇徳院』ではないんすね」
「花魁も出てこねぇから『幾代餅』でも『紺屋高尾』でもなくて」
「…夏じゃァないから『千両蜜柑』でもないと」
「じゃァいったい何なんすかッ!」
お仲入りで御座ィます。
桂宮治◆お見立て
サゲ:
「どれでもお好きなのをお見立てください」
桂文治◆親子酒
サゲ:
「こんなぐるぐる回る家、もらったってしょうがない」
この会では珍しく追い出しが鳴った気がしました。
お開きとなりましてあれから、小雨の中を東横線で渋谷に戻るんですがね、副都心線に乗り入れて初めての乗車で御座ィましたから、地下五階からの移動は難儀でしたなァ。
蓮天で縄ァ手繰りまして、激しくなる雨さえ厭わず次の暖簾をくぐった先にて備前者の強風考察なんざ聞かされるんですがね、それはまた別のお話。
(了)
投稿者 yoshimori : March 18, 2013 11:59 PM