◆女である。(3人目)
◆2013年3月19日より世に解き放たれた新しい3つの選択肢を全て取り入れての再出発。
◆件の三要素には新旧こそあるものの、降順なんぞは守らない気持ちで連絡船に乗って遠く離れた異国の街へと運ばれる。
◆向かった先とは、文化も風習も棲まう生物さえもがかつての世界とは大きく異なる土地である。
◆かつては栄えた鉱山が廃坑となって久しい、火山灰が降る街を歩いている。
◆この街にはそう遠くない過去に背任の廉で死罪となった土地の実力者がいた。
◆彼に処刑命令を下した現役の評議員が暗殺対象になっているという。
◆まァ言わずもがな、既に刑に処されている罪人に通じる関係者の暗躍に相違ない。
◆評議員補佐が云うには、暗殺を画策していると思しき容疑者らはその素性をひた隠しにして街に潜伏しているという。
◆どれですかねー。
◆「それが分かるようなら何も心配はないんだ」
◆なるほど。
◆「墓地で見張るんだ」
◆誰のですか。
◆「処刑された男の父親は街を再建した功労者だったが、その息子がもう駄目駄目だったのだ。墓にはふたりとも功罪の差別なく葬られている」
◆ははァ、そこに花を手向ける輩が怪しさエントリィなわけですね。
◆「そうだ。だがこれだけは云っておく。墓には善行を積んで亡くなられた奴の父親の遺骨もあるのだ。よく見極めてから行動するのだぞ」
◆へいへーい、と空返事で評議員補佐の邸宅より離れて墓地へと向かう。
◆内部へと入り込むと程なくしてひとりの住人(♀)がのこのこと現れる。
◆「ぅっわっ! びっくりした、まじびっくりした、誰がいるのかと思った、驚かせないでよ」
◆こんばんは。
◆「えー? ていうかここには身内しか来ないと思ってたからさ、海の向こうから来たあなたがいるなんて思わないよね」
◆どなたの墓参りですか。
◆「ここには亡くなった同族しかいないの。誰ってこともないわね」
◆ほんとですかァ?
◆「何よ、失礼ね。用が済んだら出てってちょうだい」
◆へいへーい、と生返事で墓参りの住人の下を去り、評議員補佐へと報告。
◆「…いや、まさか…あいつがな…。まだ決め付けるには早計だ。ブツを押さえなければ」
◆物証を取れってことは自宅内に侵入ですね。
◆「私が秘密裏に許可するのだから何でもありだろう」
◆そういうのは秘密警察のすることですよ。
◆「いいから! これ鍵だから、頼んだぞ」
◆へいへーい、と鍵を受け取って墓参りの住人宅へ。
◆…こんばんはー…。
◆「またお前かー! お前のせいで全てが台無しよ!」
◆えー? わかりやすすぎるー! 展開はやすぎー! 黙ってれば次の手段がなくなるのに!!
◆「黙れ、死ねぃ!」
◆墓参り娘を返り討ちにして荷物を漁ると暗殺者集団への依頼書を発見。
◆評議員補佐へ報告。
◆ガチでしたね。
◆「よし、ご苦労。これで評議員もお喜びだ」
◆ははァ、ではこれで。
◆「いやいや待て待て。実はもうひとつ頼まれてくれるか」
◆だいたい想像つきます。
◆「じゃァその暗殺者集団を、な?」
◆彼らを始末しないと枕高くして眠れないんですね、わかります。
◆「うちの部下の精鋭を送り込んであるから、合流してくれ」
◆へいへーい、と敵の砦を目指すと、精鋭とやらは既に息絶えており、ひところし業界では名を馳せる猛者どもが元気よく襲いかかってくるので、満身創痍ながらにも殲滅に成功。
◆そして、評議員補佐へ最終報告。
◆やっつけてきました。
◆「お前すごいな。評議員から直々に感謝の言葉を伝えたいそうだ」
◆評議員閣下より謝辞をいただき、ついでに墓参り娘の邸宅を行政が没収した形で譲り受けることに。
◆間取りは悪くないが、いかんせん日当たりが絶望的な風土の為、室内は何処となく暗澹としている。
◆…ただ問題なのは一点。
◆評議員サイドの手配漏れか、未だに墓参り娘の亡骸が床に転がっているのだ。
(續く)
◆◆◆
(改題) 『ラグドオル神の気紛れ』 #001-002
(改題) 『狂おしいほど咀嚼』 #030
(改題) 『侵略と統治』 #026-029
(改題) 『小夜啼鳥の左眼』 #021-025
(改題) 『流刑地より乗馬で3.5ハロン』 #013-020
(改題) 『1000万本の召喚の杖』 #012
(改題) 『黒馬新聞 北方版』 #007-011
(改題) 『月長石ト鍛造ト言霊ノ國』 #005-006
(改題) 『竜殺シ氷地獄』 #001-004