April 09, 2013

『遺棄された島』 (第2回)

◆女である。(3人目)

◆建築現場にて体長が1メートルに満たない種族のひとりから声を掛けられ、のこのこと付いてゆく。
◆片言の上に早口でしかもセンテンスが間違っている為、相互の理解度に疑問を感じながらも会話が続けられる。
◆引率されてたどり着いた族長との謁見の場は、このミニマムな種族どもがそう遠くない過去に我が同族(北方出身で長身)から力ずくで奪い取った館だった。
◆…何か頼み事するにしても、頼む相手を間違えてやしませんかと。
◆「ドウゾクナカマオマエツヨイニクツレテクルスグニ」
◆…保護者おらんのかいな。
◆「ニゲタツヨイワカルニクハヤク」
◆肉を連れてくるの?
◆「ニクチガウヨツアシツヨイワカル」
◆肉で誘導して逃げた四つ足を連れてくればいいの?
◆「ツヨイワカルハヤク」
◆へいへいーい、と牛肉持参で四つ足を探す。
◆程なくして見つかった四つ足は鼻息も荒い牙を持つ猪だった。
◆こっちですよー、と誘導して柵の中へ押し込む。
◆連れてきたよ。
◆「オマエツヨイサスガ」
◆この辺はコミュニケーション取れてるかな。
◆「アカクサ」
◆次のミッションかな?
◆「10コハヤク」
◆赤色の野草を10本ね、はいはい。
◆その辺で摘んで戻る。
◆「アカクサ!」
◆もう終わり? 他には?
◆「ヤッツケルコッチカラ」
◆誰を。え? ここの前の持ち主? …それは無理やろ、後味悪すぎ。
◆「コッチカラ!」
◆叫ぶ族長の声を無視しつつ、依頼は保留にしておく。
◆報酬が何かは分からんが、加害者に加担して被害者全員を抹殺する件は、悪に染まってからでよかろうと館を後にするのだった。(やるんかい)

(續く)

投稿者 yoshimori : April 9, 2013 11:59 PM
コメント
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?