08:50
目覚めて室内の異物感に驚く。
…そうだ、これを河川敷に投棄しよう。
今日は多摩川を目指す予定。
09:45
近所のカフェで泥のような珈琲を啜る。
投棄対象は何も知らずに冷コーを飲み、軽食を摂っている。
10:20
投棄対象に「どうせ家に帰っても居場所がないんだろう」となだめすかして山手線に乗せる。
10:40
新宿駅に到着。
待ち合わせまで少し時間があると知り、目に付いた店の暖簾をくぐり縄を手繰る。
ここで投棄対象とは別行動となる。
10:55
京王新宿線のホームへ。
同行者2名(通称:石積み、メヒコ)と合流。
11時7分の特急に乗る予定と聞かされる。
1名は当日キャンセル、他2名(通称:虫喰い、舞台女優)は遅れて現地へ向かうという。
11:00
投棄対象の姿が見えないので、主催者(石積み)が本人に架電。
「え? 電車に乗ってんの? 笹塚? しねばいいのに」
投棄対象は気を利かせて先に車両に乗り込み、席取りをしていたのが仇となって、先発の急行で既に移動していた。
明大前で待ち合わせることとなり、我々は粛々と特急に乗り込む。
11:12
明大前駅に到着。
捨てられた内臓が近付いてきたと思いきや、投棄対象本人だった。
11:27
京王稲田堤駅に到着。
ここが「飲んだくれの聖地」となる。
11:55
多摩川河川敷に到着。
海の家的な簡素な建屋と簾で陰影を落とす木製の椅子がそこに。
河川を跨ぐ鉄橋には南武線と京王線が行き交っている。
川面ではウィンドサーファーとカヌーイストが領川権を争っている。
12:00
従業員と思しき中年女性が「営業中」と染め抜かれた幟を掲げている。
そして、スーパーカブに跨るとノーヘルのままサングラスだけを装着し、颯爽と車道へと向かうと営業中幟を立て始めた。
12:05
飲んだくれ始める。
13:00
虫喰いと合流。
河川敷では虫を食べない予定。
14:00
舞台女優と合流。
裏方の仕事も兼業しており、大道具関係のFAXをぶっこんでて遅くなったという。
14:30
主催者は石積みの為の石を拾い集めては、メッセンジャーバッグに詰め込んでいる。
そのまま入水しかねない行為である。
14:45
主催者が突然立ち上がった。
「第一回かき氷早喰い対決~」
まぢか。
全く勝てる気がしなかったのだが、予想以上に挑戦者が頭キーンで続々と倒れてゆく中、舞台女優と同率で一位を獲得。
賞金を山分けする。
震えが止まらないぜ。
15:00
メヒコが黙りがちになっていると思いきや、かき氷ダメージが思いのほか激しかったらしく、ここで脱落。
河川敷を去り行く後ろ姿を見送る。
16:00
小屋で飼われているらしき大型犬が中年女性の持つロープを咥えて離さない。
後で聞けば、彼女の歌う「遠き山に日は落ちて」「ふるさと」に合わせて犬が喜んでいるという。
どう贔屓目に見ても、散歩で愚図って動かない獰猛な犬に手をこまねいている飼い主の図にしか思えない。
19:00
対岸よりムーディーなサキソフォンの音色が響く。
日も落ちて風も冷たくなってきたので、二次会の席へと移動。
外から中へ移っただけだが。
19:10
スナック類をつまみながら飲んだくれは続く。
舞台女優が商品名「おっと○と」を購入したのを見て戦慄する。
自分は幼少の頃よりこれを食すと頭痛がしたものだ。
それでも何匹かやっつけてみる。
今の成分は大丈夫なようだ。
20:30
おっと、大事な用を忘れていた。
投棄対象を河川敷に流さねばなるまい。
そっと後ろから忍び寄ると、大きな麻袋を被せ抵抗する投棄対象に何発か打撃を与え、さだまさしのあの曲を唄いながら多摩川へそっと流すのだった。
21:00
そろそろ潮時だ。
気が付けば、誰の姿も見えない。
参加者の消息を記して締めくくるとしよう。
石積み:再び石を探しに川辺に出ると言い残して姿を消し、水に何か落ちる音とともに行方が分からなくなる。
虫喰い:蝙蝠の群れを追いかけて、そのまま闇に消えてゆく。
舞台女優:役柄にはまり込んで壮絶な割腹シーンを地で演じ、通行人に介錯を頼みながらも絶命。
さァ帰ろ。
(了)
投稿者 yoshimori : June 2, 2013 11:59 PM