February 21, 2016

◆『君だけが仄赫く萌える町』

本日ァ知人が席亭を務めるという目出度い日でござんす。

『はじめての、らくご。はじめての、春風亭昇々。』
@中央区八丁堀四丁目 コワーキングスペースhanare

春風亭昇々◆初天神

初めての落語ということで、身分制度、扇子、手拭い、前座における楽屋での立ち振る舞いについて説明します。

「前座時代の修業なんて地獄ですからね」
「一日も休みはないんです」
「寄席の楽屋に師匠方を迎え入れて履物を間違えないように下駄箱に入れて、お茶も人によって温度とかいろいろあるんで、間違えないように淹れて出して、着物着せて、着物脱がして靴履かせて帰らせるんですよ」
「介護みたいなもんです、介護士四級ぐらいの資格くれっつーの」

「もうお爺ちゃんばっかりなんですよ、楽屋なんて」
「(桂)歌丸師匠の師匠って未だ現役なんですよ」(桂米丸)
「あんなお爺ちゃんよりもお爺ちゃんがいるんで、上がなかなか片付かないわけです」
「この歌丸師匠の師匠がですね、新作を演るわけなんですが」
「前座に太鼓を鳴らすタイミングを頼むんですよ」
「『ここでこう宇宙人が出てくるから銃を撃つ真似したら太鼓叩いてね』」
「…小学三年生が考えたみたいな内容の新作です」

「楽屋には不思議な師匠方がたくさんいますね」
「まァその人は年輩の方でして、前座時代に着物を着せて高座に送り出そうとしたら」
「『何かもこもこするなァ』とか云うんです」
「首を傾げながら高座に上がって一席演って、ハネて楽屋に戻るわけです」
「やっぱり同じように『何かもこもこするなァ』とか云ってまして」
「その師匠がこう、袖口に手を入れて引き抜いたらハンガーが出てきましたね」

「(桂)文治師匠という厳しい師匠が居るんですよ」
「『掛け取り』という噺を演ってて、鳴り物のシーンで前座が太鼓打たなかったことがありまして」
「文治師匠、楽屋の方を見て『ここでドーンだ!』と怒鳴りましたらドーンt鳴って、客席は大受けなんですよ」
「『ここでカーンだ!』の後でカーンと鳴りますと、やはり大受けでして」
「で、前座から下がって来ました文治師匠の前に、前座が土下座して謝ってるんですよ」
「前座の背後にはその子の師匠である(春風亭)小柳枝師匠が腕組みして座ってるんですね」
「そんな状況ですけど、文治師匠は厳しい方でらっしゃいますから、こう扇子を振りかぶりまして」
「『馬鹿野郎ッ!』って頭を叩くんですよ」
「そしたら、小柳枝師匠びっくりしたんでしょうね、ぴょーんって座布団から跳びましたね」
「…普通、親のいる前でひとんちの子ども殴らないですよね」
「あの前座の頭が小柳枝師匠が跳ぶスイッチだったんじゃないかと」

「電車に乗ってたんですよ」
「目の前に座ってるジャージ着た男が、こうファスナーをですね、上げたり下げたりしてるんですよ」
「うわー、変なのの前に立っちゃったなーなんて困って、周りを見たらですね」
「(進行方向を指して)こっち側を向いてる人たちと(後部車両方向を指して)あっち側を向いてる人たちにチームが分かれてるんですよ、私の位置を境にして」
「…これはどちらかの仲間に加わりたいなと、向く方向を考えてて思いました」
「向く方向を微妙に変えつつ、視線の端でそのジャージを見たんですよ」
「よくあるじゃないですか、視線を感じるなと思って実際その人を見ると全然こっち見てなかったことって」
「でもそのジャージ、がっつり見てましたね、私のこと」
「…で、後で気付いたんですが、私のこの、いわゆる社会の窓が全開だったんですよ」
「彼は私に教えてくれようとしたんですね、こんな(ファスナー上げ下げ)動きしながら」
「めちゃめちゃいい人でした」

<本編>
飴屋からの団子屋エンドでした。
凧屋までは演りませんで。

春風亭昇々◆部長の娘

<サゲ>
「ごめんなさい、私面喰いだから…」

仲入り

春風亭昇々◆生徒と先生

「高校の時、『椎茸』って仇名の同級生がいたんですよ」
「何故椎茸というかと云いますと、木の子みたいな髪型してたんですよ」
「で、下の名前が『ヨシタケ』っていう、絶妙なネーミングでした」
「この椎茸が知ったかぶりでしてね」
「江戸川でふたりで釣りしてまして、全然釣れないんですよ」
「『向こう岸行こうぜ、俺この川よく知ってるから釣れるって』」
「向こう岸ったってすげぇ遠回りしないと橋越えられないんですよ」
「『俺の見たところ、この川浅いぜ、足首までしかないから渡れる』」
「ふーんと思って相手にもしなかったんですが、そのうち『柴田ぁぁ、柴田ぁぁ』って私の名前…本名を呼ぶ声がするんですよ」
「声のする方を見ると、椎茸の首から下がぜんぶ川に浸かってるんですよ」
「『思ったより深かったなァ』」
「…それ以来、彼の姿を見ていません」

「この椎茸、空手部の部長だったんですよ」
「…部長ったって、ひとりしかいないですからそうですよね」
「学園祭で出し物をやろうって話になりまして」
「私ら幽霊部員と椎茸部長で演武をやるんだと」
「『お前ら、瓦と板を割れよ、俺はコンクリートブロックを割るから』」
「…無理ですよね、ろくに鍛えてないんだから」
「ある日、部室から凄い騒音が聞こえるんですよ」
「見たら、椎茸が電ドリでコンクリートブロックに穴を開けようとしてまして」
「でも、全然歯が立たないらしく、汗だくんなってがりがりやってるわけですよ」
「そのうち、台の上からブロックが落ちまして真っ二つに割れてしまうんですね」
「『これは好都合だ』」
「当然練習もしないまま当日を迎えまして、ここで奇跡が起きるんです」
「幽霊部員の我々は板割り、瓦割りに成功しまして」
「そこで椎茸部長…当てどころにしくじりまして、足裏で横から蹴るつもりが下の方に当たってブロックが床に落ちて割れたんです」
「会場はざわ…ざわ…元から…ざわ…ざわ…割れてた」

<本編>
登校拒否の男子生徒を迎えにき担任の先生は独特なロジックで生徒を学校に復帰させます。
修学旅行でのバスの席順がクラスのアイドル、鈴木の隣となった男子生徒はささやかな幸せを噛み締めますが、鈴木がお気に入りの先生が放つたった一言で世界が崩壊してしまいます。
「お前どうせ当日来ないんだから、鈴木の隣は俺が座るんだ」

この後、昇々あにさんとの打ち上げなんてんで、鍋を突いたり、『人狼』が始まったりして夜は更けてゆきます。

(寥)

投稿者 yoshimori : February 21, 2016 11:59 PM
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