残り数ページを読んでしまいたいという衝動から、駅前の自販機前で馳星周をめくっていると、「白ゴス」というカテゴリーが存在するのかは疑問だが、メイドが髪に付けるようなリボンライクなアクセをなびかせた女子が自販機と自分の間に立つ。
いや、狭いんですけど。
待ち合わせしてる風でもなく、ただそこに立っている感もありつつ、彼女の去り際一瞥すると、ゴスなメイクで彩られた目と目が合う。
新種の生き物かとも思う。
(了)
『五加皮』
五加皮酒とは、「五加皮」の他、「川弓」、「当帰」、「牛膝」を加えた薬用酒。
数杯の麦酒に飽いて菜譜から他を探すも、選択肢の少なさゆえのオーダーとなる。
酒度は高い。
ネットで調べると、「下半身に作用する強壮効果」が期待あるとの記述が目立つ。
店員の含み笑いはそれだったのかと膝を打つ。
(了)
ぴんぽんぱーる。
白い腹部を見せてはいますが、元気に泳いでいます。
左から順に、ねたみ、つらみ、そねみ、うらみDEATH。
名前が無いのは負け組ですね。
勝ち残った者だけが、名を呼んでもらえます。
(了)
古い話で恐縮だが、特許庁他関係機関による「模倣品・海賊版撲滅キャンペーン」に起用された佐田真由美が、AV女優にしか見えないのは何故か。
メイクが某AV女優に似ていることもさることながら、背景・衣装の色合いがひどくエロサイト寄りだからだ。
以上。
(了)
フィギュア版 "biohazard4"、何が出るかな?
期待通りチェーンソー男だったが、シャツが微妙な色合いでがっかり。
ジャケ写は緑色なのに、実際は赤紫。
チャイニーズ!
(了)
早朝のファミレス、ろくでなしの集う場所。
2時の方向、向かいに座る連れに対して、職場の同僚の不幸っぷりを聴かせる眼鏡の男。
①合コンで酔った女の子に携帯電話をふたつに折られ、
②歌舞伎町にいるキャッチがしつこい上に手を出してきやがって乱闘になったという。
③もうひとエピソードあった気がしたが、失念。
頑張れ、眼鏡の男の同僚。
(了)
バーのカウンターに女子二名。
「元彼の今カノが変な女でさ」
そんなのと関わってんの?
「元彼の着歴見てかけてくるんだけどさ、しつこいんだ」
それ怖くない?
「こえーっていうか、うぜー。電話口で『散って死ね』って言われてもさー」
どういう表現だ(笑)
「散らねえし、死なねえし!」
散らねえし、死なねえし!!
「うちら6時間も飲んでるね」
あははははは。
終電をとっくに逃している事実を確認してからまた飲み始めるのだった。
(了)
チャイニーズレストランと謳いながら、何故か中東の地名。
「女に興味ないんですか? それともあれなんですか?」
あるさ。あれって何だよ。
「モ」
分かった、みなまで言うな。
「じゃあ何なんですか。ぶっちゃけ面倒臭いんでしょ?」
それを言ったらおしまいじゃないか。
「だからー、1ミリも自分の為にならないのにも関わらず、合コンをセッティングするって言ってるんですよ。何が不満なんですか」
うーん、それはそれでいいんだけどね。もぐもぐ。
「煮え切りませんねー」
むう。
「で、仮に合コンやったとして、全然駄目だったらどうします?」
お前を殺す。
ひでえ。
(了)
茉莉恵からPS2『THEお姉チャンバラ』を購入。
茉莉恵って誰よ?
この際名前はどうでもよろしい。
ただの店員だしな。
ビキニでテンガロンなギャルが、ゾンビを斬りまくるという素敵アクション。
歩く死人を斬って捨てる度に噴き出す血だか何だかな液体を浴び過ぎてしまうと、制御不能の暴走状態になりやがて力尽きるという設定も知らずにプレイしていたら、当然さっぱり進まない。
主人公の心臓を付け狙うという妹の存在も見ないまま、静かにケースに戻すのだった。
(了)
店頭では陶器製のエレファントが迎えてくれている。
店内では荒波に揉まれるヨットの映像が流れている。
「アメリカズカップ? にしては画面がやたら地味だな」
ほんとだ。全体的にトーンが暗い。
「あ、ボルボ主催のレースみたいだから、海は北欧だ」
どおりで薄ら寒い映像なわけだ。
「音声は聴こえないけど、海に消えたヨット乗りの話になってる」
どこまでも暗いな。
北欧差別?
(了)
深夜営業のカレーうどん専門店。
キャラものを多数ぶら下げたキャリーバッグをひとつ席に座らせた、家出少女にしか見えない女子のモビルスーツのような太い脚が視界に入る。
家出少女、店員を呼び出して「サランラップあります?」と訊くも、訊いた相手が中国系だったらしく、「なイ」と一蹴。
あっさりと無下にされて、ただでさえ丸いのが更にふくれっ面に。
見れば、ライスを丸残ししている為、持って帰ろうという魂胆だったようだ。
お母さんが心配してるから、まずは家に帰れ。
(了)
江東区の僻地、街灯すら設置されていない車道と雑草が生い茂る歩道。
バスに乗ってたどり着いたものの、帰りの時刻表には「21時15分」が最終とある。
見たこともない生き物の聴いたこともない鳴き声に怯えながら、バスの運転手が魑魅魍魎の類でないことをただただ祈るばかりだ。
(了)
「この人工芝はあれだな」
は、何でしょうか。
「何かこう、いまいちなんだよ」
どの辺がでしょうか。
「フィーリングだよ、フィーリング。分かれよ」
はい、勉強不足でした。
「まあ、また寄らせてもらうわ」
は、はい、お疲れ様です。
もう来ないでぇ。
(了)
「国立(くにたち)」の由来を聞く。
中央線国分寺駅と立川駅の中間にできる新しい駅から名付けられたという。
何てアイデンティティの無いネーミングだろう。
大森区と蒲田区合併した「大田区」よりも酷い。
名所と謳うのは、「たまらん坂」。
自転車で通学していた一橋大学の学生がたまらんかったようだ、坂があれで。
バスの停留所名は「多摩蘭坂」。
清志郎的には「多摩欄坂」だったようだ。
だからどうしたというはなし。
(了)
「はい、お電話ありがとうございます。日本エンドレスです」
終わらないのか?
「はい? もう一度お願いします」
エンドレスなんだろう?
「はい、日本エンドレスです」
終わりだよ、日本は。
「失礼ですが、どういったご用件でしょうか」
次の総裁も私だ!
がちゃん
(了)
バーのカウンター、隣席は三十路を越えたネイルアーティストとダンサーが熱い語りを繰り広げる。
互いを持ち上げて、「あたしらやっぱりいい女よねー」という結論に持っていこうとしているようだが、そこは女の性、牽制しつつ話が微妙によれてゆく。
中盤、他人をはらはらさせる場面を経て、終局へ向かうふたり、最後には「ニューヨークへ行く」という着地点に降り立つ。
ずいぶん話飛んだな。
(了)
女、一度帰ると言ったものの、何に引かれたか結局は酒を飲んでいる。
やや大蒜の効いた焼き蜆は気に召さなかったのか、ひとつきりで終いにしている。
店に置いていた焼酎を手酌で飲み干し、終電を気にしている様子もない、はずもなく財布をいそいそと取り出す。
「じゃあそろそろ」
男は改札まで女を見送り、馴染みとなるにはまだ早い店でひとりビールを飲んでいる。
「先日はすいませんでした」
何だっけ?
「折角来て頂いたのに」
ああ、全然。気にしないで。
「いや、そう言って頂けると」
男は柱の陰に隠れる酒瓶の銘柄を伝えてもらい、飲み方すらも任せている。
「どうぞ」
ありがとう。
煙草を吸い終わると同時にグラスを飲み干し、支払いを済ませ扉へと向かう。
「ありがとうございました。またご贔屓に」
ごちそうさま。
やや痺れた前頭葉をなるべく動かさない歩きで家路を急ぐ。
眠い、とベッドに倒れる。
眠りに落ちる瞬間、男は思う。
蜆、旨いのにな。
(了)
タイ人女性がカレーうどん専門店で働いている。
その違和感はともかくとして、彼女が選択した動機は何だろう。
聞いた話だが、タイ人は「甘くて辛くて酸っぱくないのは食い物じゃない」と断言するという。
カレーは前述の条件を満たすだろうが、それは現地のカレーのみだ。
彼女のまかない食は、デフォルトからかなりアレンジされているだろう。
いつか何かの間違いでレギュラーメニューになると信じる。
『チンタラーちゃんのまかないカレー(うどんは付きません)』
・・・付かないのか。
(了)
席に座ると、自動的に酒が出てくる。
言葉ひとつ交わすことなく、空腹を満たすことも可能だ。
勝手に出てくる品を残さずやっつけてゆく。
会計時に初めて気付く自分の愚かさ。
ここキャバクラじゃんかー。
(了)
公園にゆく。
家なき子らがベンチを占拠している。
イイ顔で寝ている。
夢? 夢ですかー、うーん、何かなー、やっぱふとん? 屋根さえあれば後は特に。
志が低いので、次に行かない。
遠くで打球音が聴こえる。
かきーん
懐かしいな、と幼い頃の自分を思い出す。
初めてグローブを買ってもらった小学三年生。
目を閉じていても眠りに落ちてはいない。
一日の大半は横になっているので、かなり危険度の高い虫か人間が来ない限りは身を起こすことも無い。
日が暮れる。
明日は晴れるだろうか。
って、これ寝てる人の心情やないか。
(了)
人は運だけでは生きてゆけないが、運がないと生きられない。
すべからく全ての人が同じ土壌に立っている訳ではなく、スタート時点で既に「一発リーチ棒」を持つ人間がいることを忘れてはならない。
が、前述したリー棒の存在は認めたくはない。
バランスが大事って話ですよ、先生。
(了)
飲んだくれな日々の中、次元大介について今まで自分は何を知っていたのかと激しく壁を拳で殴る。
殴る殴る。
煙草を頼んだら、「次元がいつも吸ってるんですよね」と渡された時の衝撃といったら。
次元は、ポールモールなる煙草をねじらせて、いや正確にはシケモクとして吸うのだ。
話は十数年前にさかのぼる。
当時17歳だった雑貨屋の長女は「ルパンごっこ」について教えてくれた。
詳細は忘れたが、各々キャラクターを選び、アドリブのみで一話を完結させる趣旨ということだけが伝わった。
彼女には歳の近い兄がふたりいたので、不二子役は不動だろうと信じていたら、
「あたし、いつも次元だったの」
なんてコメントに困る発言をなされ、ポールモールに火を点ける度に彼女が次元だったことを思い出すのだ。
(了)