知人宅で飼われている猫の名は、
MiG(ミグ)
という。
ソヴィエト連邦初の亜音速飛行するジェット戦闘機、「MiG9」から付けられたとは思えないほどに猫は肥満していた。
置物かと疑うほど動かないのだが、5分くらい見つめているとたまに瞼らしき部位が脈動しているので、少なくとも生命あるカタマリであると認識できる。
十年以上も前の記憶なので、まだ生きているとは思えないが、現在、旧社会主義諸国で超音速戦闘機として現役の「MiG23」くらいの後継機ぐらいは残していて欲しいと願う。
(了)
■小学校教師だった父が亡くなったと知らされ、村へ帰省するジョンス。
■母は悲しみのあまりに雪降る中三日三晩、小学校の前から離れないという。
■母を家に連れ帰るジョンス。
■何故か室内には、『タイタニック』のポスターが貼られている。
■しかも2枚。
■村の風習を守り、父を町から担ぎ手と共に村へ運ぶという。
■物凄く分かり易く面倒でたまらんといった表情をするジョンス。
■ジョンス、「車で運ぼうよ、寒いし」と説得するが、母、頑固。
■挙句、葬式で用いる赤い布を織るから、機織りマシーン(木製)をいま直せ、すぐ直せとゴネる。
■ここで、現在(モノクロ)から、過去の記憶(カラー)に切り替わる。
■40年前の母役には、チャン・ツィイー。
■三編んだ髪を両側に垂らしたお下げ、戦中の日本人女性のような服装(どちらかというと寒冷地仕様の厚着)という、絵に描いたような村人姿。
■母がどれほど父をストーキングしていたかが延々と語られる。
全体の尺の8割を占める過去映像の中、チャン・ツィイーの顔映像が7割を占めるというめくるめくプロモーションビデオ状態に仕上げてしまった監督の女優への偏愛っぷりが伺える。
あの寒冷地仕様の厚着ですらフェチのひとつかとさえ疑うのだった。
(了)
「頚椎間板ヘルニア」という大仰な病名を頂いたのは今月になってから。
「頚椎間板が後方に脱出して脊髄の圧迫を起こすもの」とある。
整形外科医が言うには、「頚椎の四番目、五番目あたりの軟骨が突出して神経に触っている」らしい。
「治療は安静が第一で、頚椎牽引を行い、鎮痛薬や筋弛緩剤の投与、局所の温熱療法などで症状の軽快を待ち、軟性コルセットで再発を防止する」とやたら具体的な指示を受け、その通り体現している。
「仕事休んで、首引っ張って、薬飲んで、湿布貼って、首にカラーを巻け」ということだ。
「痛みがひどい場合は、副腎皮質ホルモン剤を注入する硬膜外ステロイドブロックを行うが、根治治療は脱出した頚椎間板の外科的切除」って、それって大手術ぢゃあないですかっ、先生!
「まあ、君の場合はね、手術までは」
行かないんですね?
「む、まあ、そんな感じで」
はっきりしろよ!
現在、療養中。
(了)
(内容についてがっつり述べています)
様々な恋愛映画的な紆余曲折は省くが、建築家(♂)が、2000年を迎える直前の時点で何も知らない声優(♀)を訪ねるのは意味が無い上に、積み重ねた想いも何もかもが台無しだ。
声優にとっては、「頭のおかしい人がキター!」としか思えないし、2000年を過ぎて建築家の死の真相を知った彼女は、建築家に会うことなく別の時間にいながら泣きっぱなしで放ったらかしだ!
ハリウッド版は上記の件、改善されているというが、それはそれでつまらんな。
(了)
昨日、北海道日本ハムファイターズが44年ぶりに優勝したわけで。
一夜明けた今日、札幌ドームにて新庄先生の引退会見が行われ、持参したグラブにまつわるエピソードいくつか。
■「阪神1年目の初めての給料で買った」
■7,500円。
■「常に携帯し、遠征先でもテレビの上に置いて湿らないようにとか気遣いしてきた」
■「17年間一緒に過ごしてきたグラブが、『もうプレーできない。もう限界』と言っている」という。
あたしゃねえ、涙が止まらないですよ。
で、その前にインタビュアーが質問した「一番の思い出は?」の問いには、
「阪神時代、成績が悪いのにファン投票で選ばれたオールスターゲームで、ペットボトルが投げられ、トランペットとか鳴らなかった。ショックな気持ちはいまでも忘れない」
それを一番の思い出にしないでえ。
(了)
■100円で「日本語吹替版(前・後編)」を購入。
■翌日同店にて「字幕スーパー版(前・後編)」を発見。
■悩む。
■「どうせ100円だし」と「字幕スーパー版」に手を伸ばすが、前作、前々作を吹替で観たことを思い出し、静かにケースを元に戻す。
■帰宅後、ビデオデッキにテープをぶち込むも、再生しない。
■?
■手動でテープを巻いてみると、絡んでいることが判明。
■即クレーム。
■確認した店員、「何か絡まりまくっておりました」と代替として新たにビデオを渡す。
■当然在庫の「字幕スーパー版(前・後編)」を貰えると思いきや、
■ふつーに「日本語吹替版」。
■字幕スーパー版は?
■「在庫に御座いません」
■終了。
内容に触れるが、
風呂怒さあ、自分で何もできないじゃん。
従順下僕な砂無がおらんかったらあんた一生廃人やで。
真の英雄はあの下僕だ。
(了)
■台北、前田・伊藤は800万円を携えてヘロインだかコカインの取引へと向かう。
■台湾人に襲撃され、伊藤は死亡、前田は負傷し、金を全額奪われる。
■奪った金が人の手に渡る過程で見る見る減額してゆく。
■それを突っ込まれると必ず「手数料だ!」って逆ギレされる。
■伊藤の死を知った加奈子は、日本から台北へ。
■前田と共に伊藤を殺害した台湾人捜索に協力する。
■あっけなく射殺される前田、ついでに撃たれる加奈子。
■襲撃側とは異なる組織の下っ端、シャオハウに助けられる加奈子。
■ブローカー高橋より、伊藤を殺害した組織の情報と、拳銃を受け取る。
■シャオを長として、二つの組織が縄張り争いしている様子。
■シャオはいずれの組織に肩入れすることもなく、「みんな仲良く」というスタンス。
■加奈子がぶっ潰したいのはアタイ、アサン組。
■アタイ、アサン組と仲良くできないのが、ロン、ジェ組。
■特にジェ。
■あらあら内輪で殺し合い始めちゃいましたよ、唐突だな。
■加奈子、紆余曲折を経て伊藤殺害組織をぶっ潰すわけですが、シャオハウに助けられたっていう恩もあるんで、いつの間にか内部抗争に発展した別組織も潰してみよかと、乗船するはずの密航船に背を向ける。
千葉真一先生のJAC出身であるはずの水野美紀は、ガンファイトと全力疾走のみという、身体使ったアクションが皆無である上に、台湾俳優の動かないこと動かないこと。
加奈子が日本への渡航を中止してシャオハウの元へ向かうのはいいとしても、彼ったら結果、超犬死。
あ、じゃあ加奈子がシャオハウの仇討ちするんだと思いきや、肝心のエピソードも見せないまま終劇という、カタルシスもへちまもないエンディングには辟易しますよ。
(了)
「はい、注射するんで腕出してくださいねー」
あ、何腕でもいいですか?
「何腕でもいいですよ」
じゃあ左で。
「これビタミン入ってるんだけど、口の中がにんにく臭くなるのねー」
にんにく? あ、ほんとだ、何だこれ。
「どういう仕組みかは分からないですけど、そういう成分なんですよ」
あ、鼻から来ますね。
「まあ、元気が出るからいいよねー、にんにくだし」
いや、そんな理屈は無い。
(了)
■競売にて目当ての指輪を落札しようと出席するものの、電話参加の女性に1ドル差で競り落とされ、煙幕とともに奪い、空飛ぶスバル360で脱出する三代目。
■スペツナズ出身という男の妨害により指輪は奪われ、教会で三代目は死亡。
■(中略)
■「つまらぬものを斬ってしまう」男、尊師の下で布教活動。
■(中略)
■三代目、もちろん生きてる。
■某国軍部に兵器を供与し戦争を誘発させ、産油国からオイルマネーを巻き上げるという何処かで聴いたような計画。
■ラスボスである筈の世界銀行頭取(♀)をまんざらでもない感じにさせておいて、ジャズシンガーに「おたから」を贈り、争奪戦は終了。
コルトパイソンを愛用されている先生はいつも通りアナログアナログしてて宜しいのですが、「よく斬れるていうか何でも斬れる、但し豆腐だけは無理」というどうしたってマンガにしかならない獲物をお持ちの先生を、イロモノとして扱うしかないポジションに据えた功罪を今一度考えてみてはいかがでしょうか。
(了)
■キャバクラ店内にて、接客中。
■女、「実は女子大生なんですぅ」との発言に、男、「どんなサークルなの?」と質問。
■女、「くのいち研究会、略してぇー、『くの研』!」との返答。
■男、勝手な妄想を映像化(女子5名程度が浜辺にて水着姿で忍術練習に励む図)。
■『くの研』合宿所では、年配の女性が演歌を唄い、調子はずれな手拍子で盛り上がる。
■ひとりがくしゃみをすると、空からトランクス一枚の男が降ってくる。
■男が降る度に、『くの研』メンバーの秘密が暴露されてゆく。
■不倫、整形、AV出演、大人のxxxx常用、等。
■一見下世話な秘密が無さそうなメガネっ娘には、連続殺人犯という一面がありましたと。
もうやめます。
(了)
■急性虫垂炎で入院している女子高生。
■夜な夜な病室に訪れる女の子、声掛けても返事なし。
■若作りなナースより「隣室のなっちゃんじゃないかしら、ほほほほ」と説明され一応納得。
■例の女の子、日に日に近づいて来る様子、もちろん夜な夜な。
■不審に思い隣室を覗くと、絵に描いたようにしっかりと廃墟。
■入院している病院には都市伝説として、「満月の夜に心臓を捧げる儀式」があるという。
■正気を失った医師は、女子高生から心臓を取り上げるかと思いきや胎児を摘出。
■例の女の子、「あたしこの子とお医者さんごっこするの」と初めての台詞を。
■女子高生。「キャー!」と悲鳴を上げると、病院全体が空に向かって一直線に光を放つ。
何それ。
(續く)
密閉された車内でFMを聴いている。
何故車内かというと、テイクアウトの鮨を待っている。
何故に鮨を待つかというと、そういう日だからだ。
途中から聴き始めたのだが、ラジオパーソナリティーの喋りは中国人のものであると確信。
流暢ながらに時折混ざる非・日本語的発音、急にぞんざいになる口調、その危うさ。
声だけの緩急ではらはらさせられる、と同時に癒しにも似た何かが。
声の持ち主は中国琵琶奏者であるという。その名は、
tingting
危うい。
(了)
■ソウル、拷問を受けるパク、LAへの核攻撃を強制自白。
■情報を得たエージェント、NSA(国家安全保障局)レイバーンに報告。
■テロ組織「第二の波」幹部、ファヒーンの関与が判明。
■デヴィッド・パーマー大統領は、中東某国首相に情報を寄越せと詰め寄る。
■中東某国首相、「世界の三分の一を敵に回すことになる」との返答。
■妻テリーと死別して一年、ジャック・バウアーは休職中。
■ジャック、立派な髭面ホームレスに。
■ジャック、ベビーシッターとして働く娘、キムを遠くから眺める。
■ケイト・ワーナー、妹の婚約者レーザ・ナイル(中東系)が信用できない。
■CTU(テロ対策ユニット)LA支部、国際金融業者サイエド・アリがテロに関与しているという情報を得る。
■レーザ、サイエドと取引があるとの情報。
■パーマー大統領は、捜査をジャックに依頼。
■ジャック、断る。
■やっぱりやる。
■キムの雇い主は、ドメスティックヴァイオレンス夫。
■9時。
え? これ続けるの? まじで?
(了)
「いらっしゃいませ」
コピー機使いたいんですが。
「色付きですか、白黒ですか?」
モノクロで。
「白黒ですか?」
ええ、まあ。
「これを手前の機械、左上の差込口に挿して下さい。終わりましたら大きさと枚数を仰ってください」
はい。あ、え、手前の?
「手前が白黒。奥が色付きです」
手前がモノクロで、奥がカラーですね。
「手前は白黒です」
ああ、はい。カードを左上スロットに?
「左上差込口です」
ああ、ええ、はい。あとサイズと枚数をキャッシャーで伝えればいいんですね?
「大きさと枚数です」
あ、うん。分かったから。
頑なに横文字を使わないのは何故?
(了)
馬肉の原産地を高々と掲げ、是非にと問い掛ける張り紙で占められる店内。
昼時、リーマンに紛れ、「酎ハイ300円」との表示を眺めながら、生姜焼定食を頼む。
奥の席にはアングロサクソン男女4名が慣れない箸を使いつつ、揃いも揃ってハンバーグ定食を突付いており、韓国語を話す女子2名は麻婆豆腐をさらっている。
何か違和感が拭えないまま、店員の動向を眺めていると、新規で客が入店する度に、「ハンバーグ終わりました」と先制するのを忘れない。
嗚呼、生姜焼ってば味がしないよ。
(了)
六歳児誘拐殺人の罪で起訴され、裁判を経て13年間服役したイ・クムジャ。
刑務所での呼び名は、「親切なクムジャさん」。
囚人への「親切」は、最終目標=「復讐」に向けての基礎を着々と築く。
パク・チャヌク監督、世間で言うところの「復讐三部作」第三章。
詳細は割愛するが、終盤廃校において目的は達成され、雪降る森林でライトアップされたクムジャの泣き笑い、ていうか笑い泣きが印象的。
もう誰だか分からない顔になっている上に、今まで見たことも無い複雑な表情、しかも怖い。
「人生に絶望しっぱなしよりも、アクティヴに人殺しをって話ですね!」
全然違う。
(了)
頭痛がする。
そうだ、そうだこんな時はカレーうどんを食べよう。
クレイジーケンバンドでも聴きながら、熱いうどんでもすすろう。
嗚呼、いけない、選曲は不可能だった。
店だしな。
やっとたどり着いたと扉に手を掛けると、向こう側から押し返されるかのような手ごたえ。
の、暖簾が中に・・・。
あたまいてー。
うどーん。
(了)
死因は不明だが同郷の知人が亡くなっていて、故人を偲ぶ会に出席している。
同級生が場を仕切り、遺品を分別、カテゴライズし始める
食器、湯呑。
衣類、ジーンズ(しかもダメージ)。
目覚めた後も、夢であることに気付かない。
(了)
『紅虎餃子房』、『万豚記』で知られるレストランプロデュース企業の名が、
KIWA CORPORATION
「際」ですよ、キワ。
きわ【際】①はて。終着点。②さかい目。すれすれのところ。(〈実用版〉現代国語辞典)
どう贔屓目に見てもプラス表現じゃないのさー♪
(了)
メキシコ、バハ・カリフォルニア半島の南端は、総称して「ロスカボス (Los Cabos)」と呼ばれる。
コルテス海、太平洋に面したマリーンなリゾート地である。
「カボ」はスペイン語で「岬」の意。
南葛MF、カボ太郎。
(了)
中華料理店で餃子とビールを注文する。
厨房から聴こえてくるのは、北京語、タイ語、英語、そして日本語。
それでは時間を追って発せられる言語を聴いてみよう。
①客が入店する 「いらしゃいませー」 → 日本語
②ホールから厨房へ「三名様、三番です」 → 英語
③客のオーダーを厨房へ伝える 「レバニラ一丁~」 → 北京語
④一部従業員同士が雑談 「明日、成田に行く」 → タイ語(たぶん)
⑤オーナーが出勤する 「お、チェンちゃん、今日もxxxx(不明瞭)だねえ」 → 日本語
⑥一部従業員同士が賄い食についてコメント 「(内容不明)」 → 北京語
⑦定食に付くライスの盛りを待つホールの女の子のひとりごと → (言語不明)
カウンターの奥にはヒットマンみたいな装いの客の男が、かわいい着信音の後、電話相手に怒号を浴びせている、関西弁で。
思い描いていた近未来像だ! (違うと思う)
(了)
『史上最強の“個人”ネットラジオ』というトークライヴを観に行く。
しかも、ハコは歌舞伎町のキャバレー。
ゲストは以下の通り。
「芸能・社会」 梨元勝・須藤甚一郎
「政治・思想」 平野貞夫・鈴木宗男
「プロレス」 ライオネス飛鳥・ダンプ松本・阿部四郎
「アニメ」 後藤邑子
実際に観たのは、急遽出演が決まったというムネオの「政治・思想」からだったのだが、次の「プロレス」トーク内でライオネスだかダンプが、
「リング上で殺しちゃっても罪にならないんすよ、ねえ?」と発言し大いに腹筋を鍛えさせられたものだが、冷静に考えると空恐ろしいと今更ながらに気付いた。
途中、会場内の席を移動し続け、荷物は置き去りにしても猫のぬいぐるみだけは手放さない、ウェイターのコスプレする眼鏡の男が気になってトークに身が入らないという妨害に遭いつつも、トークライヴは終局を迎える。
続く「アニメ」に登場する後藤邑子が誰だかさっぱり知らない上に、上記の誰もが知ってるゲスト陣が、実は彼女の為の布石に過ぎないという事実が判明し、中途退出。
いろんな意味で濃い。
(了)
死んだ牛を焼く。
死後に解体され冷凍され解凍された肉片を焦げよとばかりに焼く。
立ち昇る白煙すらも罪深い。
砂塵に混じる腐敗臭すら次第に麻痺して感じなくなる。
豚が好き。
(了)
今日は渋谷区内にある歯科医院に行く日。
だというのに、朝から練馬区にて、雑誌の巻頭グラビアをしげしげと、それはもう娘を思う父親の気持ちで眺めている。
十代かー(遠い目で)。
この娘と同じ歳の頃、自分は脳内で電波な宇宙人と闘っていたなと感慨もひとしお。
嘘です。
歯科医院に電話する。
当日に大変恐縮では御座いますが、小生が先日予約致しました九時半を十一時に変更してはもらえませんでしょうかいえいえご迷惑なのは重々承知しておる次第で御座います土下座でも何でもはいええはあ恐れ入りますそれでは後ほど、等と意向を伝え、粛々と渋谷へ向かう。
坂の上の歯科医院。
詰め物、削り取る。
歯、削る。
かぶせものをかぶせられる。
いやいや有難う御座いましたこれは徳島名産の酢橘で御座います宜しければどうぞいえいえいどうぞどーぞご自宅でご家庭で色々使えると思いますのよはあまあお酒にも良いかもしれませんそれじゃ、と無理ぐり受付に酢橘を置いて帰るわけです。
受付に座る歯科助手のリアクションも確認しないまま。
歯科助手かー(遠い目で)。
(了)
土砂降り、横殴りに遭う。
不謹慎を承知で公言するが、天災には無意味に魅力的だ。
実際に自宅に浸水したり、倒壊したりするのは全くもって望まないが、ニュース映像における
「突風により傘が裏返ってもなお手放さず前進し続ける丸の内のOL、もちろん全濡れ」
という半ばコスプレにも似たシチュエーションを目にし、倒錯した思いに気付く。
って鈴木君が言ってました。
(了)
第3回は中止となりました。
代わってお送りするのは、朝鮮民主主義人民共和国主催による、第一回世界平和会議です。
・・・
諸事情により世界平和会議は中止となりました。
関係者各位には謹んでお詫び致します。
(了)
矢野先生の打球が真っ直ぐにレフトスタンドへと吸い寄せられる様を眺めながら、手にした紙コップの中身を一気に飲み干すと、グローブ代わりにそれを差し出して、しかも捕球に成功していた外野指定席に立ついつかの観客の姿を思い出すも、本塁打球は前々々々列に落ちて、成す術もない。
広島に対して何かを期待するのは間違っているだろうかとも思う。
(了)
井川先生の完封を見届けんが為に、尿意とか便意とかに「ハウス!」と言い続けた結果だったと信じている。
地味な試合展開だったが、夜明けのスナックのママの如き枯れ声が象徴するように、打球が飛ぶ度に訪れる無為な高揚と、両腕の前後運動に全てを費やす。
電光掲示板に現れる、広島と中日の離れた点差を眺めては溜息を漏らす男達の嘆きを聴くのだった。
(了)
過酷な労働条件ながら派遣された業種は、「IT」という矛盾。
「事務所が決めたヒエラルキーで最低ランクの階層があるわけですよ」
肉体労働とかそういう系?
「そうです。引越しとか、イベント会場の設営とか」
設営は厭な響きだな。あっさり怪我しそうだ。
「で、その中で分かりにくいのが、いわゆる仕分けって作業なんですよ」
中元、歳暮みたいな感じかな。
「それもそうなんですけど、それは軽いほうですね」
郵便局ぐらいしか思いつかない。
「まだ若造の頃、一度仕分けを頼まれたことがあって、その時足の爪が剥がれてるからって断ったんですが、『運ぶのは豆電球だから』って口説かれて引き受けたんですよ」
豆電球!
「現地に行ったら、いっきなりプラズマテレビが置いてあるわけですよ」
豆じゃねー。
「豆電球なんてどっこにも無いんですよ。あるのは冷蔵庫とかひとりじゃ無理系のばっかりで」
大型家電じゃんか。
「無理無理無理無理ってさんざん断ったんですけど、妥協して液晶テレビ運ばされてましたね、足引きずりながら」
よっぽど人いなかったんだろうな。
(了)