職場で使用するバインダーを立てる為、左右にあるのは金属製のブックエンド。
ブックエンドとブックエンドの間で書類を整理しているんだか散らかしているんだか分からない男、その作業があまりに長いので、居ないものとして扱う。
「痛い」
あ、ごめんごめん、ブックエンドかと思った。
「それは人間的に薄っぺらいとかそういうことですか」
自虐的だなー、面白いけど。
「確かに、小学生の時のあだ名はブックエンドでしたよ」
君が言うと何処まで本気か分からんな。
「同窓会に行くと皆から『エンド、エンド』って今でも言われますね」
その辺は少し苦しいかな。
「やっぱり、頭が絶壁だからブックエンドなんだ!」
そこまで言うてない。
(了)
ランゲルハンス島が南国にあるリゾートかと言えば、もちろんそうではなく、膵臓の中に散在する細胞を指す。
慢性膵炎とは、アルコヲルの大量摂取に起因する膵臓疾患という。
何か気に掛かる理由もないのだが、そう言えば最近周囲でそんな話もよく聞くかもという感想を持ってネット検索。
症状:
腹部の鈍痛、激痛、背部痛などが繰り返し起こる
ん?
冬に冷たい飲み物を飲んだ結果の下痢じゃないの?
背中が痛いのは姿勢が悪いとかそういうのじゃないの?
発症例:
大量飲酒を始めてから10年以上という、30から50歳代の男性に多い
えーと、そういうひとってたくさんいますよね?
対処療法:
禁酒
一発目がそれ? 節酒とかそういう曖昧なのは無しですか、そうですか。
自覚症状がないまま、長期間に渡り徐々に進行し、繰り返し炎症が起きると、膵臓は回復不能にさえなるという。
まずは腹痛からと、効きもしない漢方薬を服用するのだった。
(了)
20080226 宵
寄席から流れて新宿へ。
15年来の旧知と会う。
「聞いてくださいよ」
何だ、いきなり。先にドリンクの注文をさせてくれ。
「もう頼んでおきましたから。それよりも聞いてください。わたしの元同僚がAVに出てるんですよ」
AVって、音響機器の方?
「いや、女優の方です」
高額所得者だ。
「それが、意外と売れてないんですよ」
マニア路線とかそういうの?
「まあ、同性系ですね」
あー、そっちかー。一緒に仕事してる時からそんな感じだったの?
「いや、それが全然、ていうかむしろ男に対して欲望むき出しでしたよ」
本人的にはまっすぐだと。
「そうです。もうね、一緒にお昼ごはん食べてて、恥ずかしいんですよ。その辺の店員とかを指差して『あれだったら三回いける』とかそんなんばっかりなんですよ」
だいぶむき出してるねえ。
「しかも、しかもですよ、うちの会社の名前こそ出てないですけど、グラビアに出てる時の表記が、『渋谷駅ビル元百貨店婦人靴売り場のスタッフが脱ぐ!』ってばればれ何ですけど!」
問題あるねえ。
「で、文章に『憧れていた女の先輩だったのに、無理やり倉庫に連れ込まれ、唇を奪われました』ってあるんですよ!」
盛り上がって参りました。おねえさん、熱燗もう一本。
「その雑誌掲載の翌日にですね、上司からひとりひとり呼ばれて尋問ですよ。『これは事実なのかね』ってそんなわけねえだろ、はげじじい!」
死ねーっと咆哮が響き、叫びを聴き付けたスタッフが心配そうな面持ちでおそるおそる窺いに来るという一幕もありましたが、じゃあひとつ聴くがその元同僚の今の名前は何てぇいうんだいと聞き出して、今宵はお開きで御座います。
(了)
前回と同様、普通に職場へと通勤する類の人種とは程遠い、老若男女の「老」ばかりがやたらと目立つ会に向かう。
『中目黒落語会』、略して「中落」
<二ツ目> 春風亭 一之輔
一之輔の前座時代、ある噺家から「お前は虫けらだ」と評されたという。
具体的な名前は伏せておきますが、と続けた言葉が、
笑点大喜利において中央に座する若干黄色の高座着を羽織る師匠
という。
該当するのはただひとり、林家 木久扇(旧・木久蔵)。
「お前は蝉だ」
「セミって、あの夏にジーと鳴く?」
「ジーでもミンミンでもいいんだ。蝉は八年間土中で過ごす。長く暗い地中の暮らしから這い出て、大空に羽ばたくんだ」
「でも師匠、蝉は外で一週間しか生きられませんよ」
「心配するな、安静にすれば十日持つ」
って実話かネタか判断に困る。
春風亭 一之輔 ■ 代脈
代脈とは「代診」のこと。
先生の代診として商家へ赴く玄関番の小僧、若先生を名乗り娘を触診。
無知無教養の男が厳粛な場で巻き起こす騒動という落語の定番をなぞる様に事態は進行し、やがてサゲへ。
欲望に忠実、食い意地を張る、自由にも程がある発言に代表される絵に描いた様な小僧演技が素晴らしい。
今年で三十という年齢に見えない貫禄、早く真打に上がれ。
<真打> 六代目 春風亭 柳朝
柳朝、どう見ても前席の一之輔より若く見える。
全体の線が細い上に髪型が色気づいた高校生なのだが、六代目の名跡を継ぐ真打。
春風亭 柳朝 ■ 明烏(あけがらす)
「遊び」を知らない商家の若旦那、札付きの遊び人からの誘いで浅草寺裏の稲荷に参詣しようと、吉原に連れ出される。
俗事に疎い堅物が、未知の領域で素っ頓狂な発言、行動を繰り返すという落語の定番をなぞる様に事態は進み、サゲへと向かう。
江戸文化の伝統芸能を踏襲する立場か性格の為か、町人や花魁の仕草描写がやたらとディテール細かく演じている。
年配の演じる女形よりは、若造の方が「まだ見るに耐える」ということか。
春風亭 一之輔、再び
春風亭 一之輔 ■ 夢金
「百両欲しーいー」と夜毎寝言を繰り返す船頭、雪の夜に船宿を訪ねる侍とその妹を深川までへと舟を頼まれる。
実はな船頭と、件の侍、妹と称した女は騙して連れてきた商家の娘で、持っている百両という大金を奪おうと、船頭へ殺しを持ち掛ける。
当然断る船頭に殺すと脅され、止む無く承諾し割り前を聞くが、
「冗談じゃねえ! 何であっしが二両ですかい! 山分け、四分六ぐらいじゃねえと割に合いませんや!」
とさっきまで自分を殺そうとした侍に食って掛かる。
実は侍が泳げないと分かり、騙して中州に置き去り、娘を助けて礼金をがっつり頂いた瞬間、
「百両ー!」と目が覚める。
六代目 春風亭 柳朝、再び
七代目 立川 談志のエピソード。
新宿末廣亭での高座を控え、楽屋が騒然としている様子。
「いるの?」
「いるんだよ」
「誰が?」
「家元が」
「まじで?」
「ほんとだって」
「どれ?」
「あ、ほんとだ」
「やりにくいなー」
新宿に来たから、というただそれだけの理由ではばかりを借りて帰るという。
前座時代の談志、先代 柳朝にいじめられていたという過去を持つ為か、今でも「柳朝」の名には何かしら思うところがあるようだ。
春風亭 柳朝 ■ 荒茶の湯
豊臣家恩顧の荒大名七名が、徳川家重臣、本多 佐渡守 正信の招きにより茶会へと赴く。
が、武功で成り上がった荒大名の中で茶の心得があるのは、細川 忠興のみという。
私と同じように振舞え、と他六名に言い渡し、本多家へと向かう。
忠興を上座に据え、茶道に疎い他六名、真似するつもりがアドリブが利かない為に予期せぬ事態となってゆく。
次座の加藤 清正、愚直が災いし、次の席へと伝えきれぬまま伝言ゲームの様相を見せ始め、「御詰め」と呼ばれる末座の福島 正則においては、他の者と同様にしてはいかんと、型破りな行動により毎回オチに使われる。
清正と正則の間の他四名(加藤 嘉明、黒田 長政、池田 輝政、浅野 幸長)は、人数合わせに呼ばれた合コン参加者の様に目立たない。
確かに8人演技はさぞ辛かろう、と同情を禁じえない。
寄席も終わり、東横線、山手線で新宿へと移動します。
(了)
偶さか気まぐれに、中目黒から徒歩で帰ることがある。
本日は山手通り沿いを歩く。
ニ十分後に到着。
再三言うてることだが、電車を乗り換えるルートが明らかに遠回りなのだ。
帰宅後、しばらく断っていたはずの鍋の仕込みを始める。
■水菜 ・・・ 100g
■油揚げ ・・・ 1枚
■豆腐 ・・・ 半丁
■豚バラ肉 ・・・ 100g
厳格なレシピに従うと鯨なのだが、豚で代用した「はりはり鍋」
鍋ライフは顎のラインを失くすリスクを負うというのに、欲望のまま、〆の讃岐饂飩を鍋に放り込むのだった。
(了)
今週も先々週と同じひとんちに招かれ、酒食に耽る。
記憶に残るは、
「三十万円」、「蜜柑」、「女社長」
という曖昧なフレーズばかりで甚だ心許無い。
覚醒を促す為に撮影した画像を眺むるも、人物画像は一切無く、鍋と肴しか写されていない様子。
■蛸のエスカベッシュ(西)
■サーモンのマリネ(仏)
■豚バラ、豚ロース(日)
■鶏団子(日)
最後は雑炊にした気もするが、画像は無い。
「三十万円」、「蜜柑」、「女社長」の正体も分からないまま、家路を目指す。
新宿線、山手線、井の頭線で帰ります。
(了)
新宿区内の神社境内にある、神饌という聞き覚えのない料理を提供する老舗料亭が来月で閉店するという。
ていうか、物理的に取り壊すのだ。
木造建築に邪念が止まらない身としては放ってもおけまいと足を運ぶ。
赤城神社 鳥居
赤城の社も今宵限りか
一度たりとも湯を沸かしたことがないに違ぇねえ
階段の途中にあるおされ照明
畳敷き、欄間、おされ照明
真打を待つ高座
立川 談幸 (たてかわ だんこう) ■ そば清 (蛇含草 じゃがんそう)
蕎麦40枚を手繰る男、50枚喰えたら金三両と挑まれるが、自己ベストが40枚の為、躊躇する。ていうか、走って逃げる。
逃走先の信濃山中にて猟師を丸呑みした大蛇が消化を助ける薬草を舐めるのを目撃した男は、消化補助の薬草を摘み取り、江戸へと戻って50枚喰いをリベンジ。
50枚目の途中で限界を迎え、外の風に当たらせてくれ、と蕎麦屋を出て、薬草を口にする男。
「おい、兄さん、遅ぇじゃねえか。何やってるんでい。・・・お、蕎麦が着物を着てやがる」
談幸師匠、ここでサゲを解説。
男が消化補助と思い込んだ薬草、実は大蛇が人間を溶かす目的で舐めたという。
つまり、この薬草は人間を溶かすだけの効力しかない。
冬の怪談演出
立川 談幸 ■ 死神
金策もできずに妻より家を追い出される男、老人の姿をした死神と出会い、人の寿命を見分ける能力を授かる。
死神が枕元に立っていれば、「寿命が近く」、足元にいれば、呪文唱和で追い払えるという。
医師の看板を掲げてからは、偶さか「足元系死神」ばかりに遭遇し、商家の旦那連を助け、礼金で家計は潤う。
暮らし向きが良くなるに従って増長した男は妻子を棄てて、妾と共に湯水の様に浪費し、挙句妾にも見放される。
再度の金策に掛かるも、「枕元系死神」ばかりで一銭にもならないばかりか、死神医者扱いされ、世間からも見放され始める。
商家の大旦那からの治癒依頼を受け、一計を案じた男は、徹夜明けで弱っている死神が船を漕ぎ出した瞬間に、布団を180度転回し「枕元」を「足元」にチェンジするという荒技に出る。
が実は、追い払ったのは、恩人だったはずの死神だった。
何をするんだお前のせいで死神の役を追われた、と責められ洞穴へと連行される。
洞穴には無数の蝋燭が様々な長さで火を灯している。
死神よりルール違反を問われ、死ぬはずだった大旦那の替わりに寿命が尽きるという。
男、無理心中でうっかり死んだという若造の蝋燭に自らの命の灯火の移動に成功し、生き長らえる希望を持つ。
「わしは死神の役目を追われ、火伏せの神に任じられた。初めての客はお前だ」
と男の持つ蝋燭の火を吹き消す。
談幸師匠、他の噺家のサゲを語る。
三遊亭 圓生(六代目) ・・・ 長い蝋燭に火を移せなくて死亡。
立川 志の輔 ・・・ 火を移した蝋燭を持ち未だ陽の照る外に出て、「なんでぇ、外は明るいじゃあねえか。火は要らねえや」と自ら吹き消して死亡。
柳家 小三治(十代目) ・・・ 「えっくし」とうっかりくしゃみで吹き消してしまい、死亡。
別料金を支払った聴衆はこの後、料亭にて談幸師匠と食事会という。
何か複雑な気持ちで木造建築を後にする。
さようなら、よく燃えそうな木造建築
飯田橋まで歩き、総武線、山手線、井の頭線で帰ります。
(了)
静岡弁ってさ、「~ずら」とか言うの? といじり倒していたら、微かに首を振り、瞳を若干潤ませながらも静かに語り始める。
「昔、うちの地元で船が陸に上がったんですよ」
何かメルヘンな話をしようとしているな。
「いや、事実ですよ。僕がかなり小さい頃に物凄い台風があって、清水の港を出た船が柏原っていう海岸から、うちのばあちゃんちの近所まで打ち上げられたんですよ」
それは、どれくらいの距離なの?
「歩くと10分くらいですかね」
すげえな、それ。
「で、当時かなり話題になって、近所の人が写した『船が陸に上がる瞬間』の写真を、うちのばあちゃんががっつり焼き増しして、見物に来た人に売ってたみたいですよ」
ばあちゃん、商魂あるな。
「うちのばあちゃん、そういうキャラなんで、家族が大変苦労しました」
え? そういう話だっけ?
(了)
補記:
1979年10月19日、ゲラテック号(インドネシア船籍、6320トン)は、救援米を運搬する為、清水港から出航し台風20号に遭遇。
柏原海岸より打ち上げられた船体は直立状態だったという。
海岸より北方にある立圓寺(りゅうえんじ)には、ゲラテック号の赤い錨(いかり)が鎮座ましましていて、当時の様子を今に伝えている。
「牡丹燈籠」といえば、夏場に囁かれる怪談噺に相違ない。
高座に上がる噺家は季節を問わず、ストーリーテラーとなる。
今回は、柳家 喬太郎による「お札はがし」の一節。
ざっくりと解説すると、以下の通り。
<登場人物>
萩原 新三郎 ・・・ 上野在住の牢人(浪人)
飯島 露(Tsuyu) ・・・ 旗本の娘
米(Yone) ・・・ 露付きの女中
伴蔵(Tomozou) ・・・ 新三郎の隣人
峰(Mine) ・・・ 伴蔵の妻
相思相愛ながらも、家格の違いでロミジュリ状態の新三郎と露。
露の父により生木を裂くように仲を引き裂かれた露は、新三郎を想うあまりに焦がれ死にする。
女中、米は看病疲れからか、後を追うように亡くなる。
駒下駄を鳴らし、新三郎の住む家へ向かう二人の女。
露の死を信じていない新三郎は、やはり生きていたと喜び、露を家へと迎え入れる。
新三郎は叔父より、あれはこの世のものではないと忠告される。
叔父より寺に行けと命ぜられ、墓前にある牡丹燈籠の灯りに浮かぶ露と米の名を見た新三郎は、ふたりの死を確信し、寺の住職より札と観音像を受け取り、帰路に着く。
札と像はがっつり有効で、新三郎にさっぱり近付けなくなる露と米。
米は隣人の友蔵と峰を恐喝、買収し、新三郎宅の札を剥がさせ、像を奪わせる。
伴蔵が峰に女中の正体を明かす一節。
「何さ、お前さん、あんな女連れ込んじゃってさ。あんなのがいいのかい?」
「ちげえよ、馬鹿。あれは飯島様んところの女中なんでい」
「何さ、あんた、女中がいいのかい!?」
「何言ってやがる! ・・・あれは・・・実はな、これなんだよ(といわゆる「幽霊の手付き」をする)」
「ピグモンかい?」
「・・・おい、おめぇ、少し我慢したらどうでい。これ牡丹燈籠じゃあねぇかよぅ」
結果、新三郎は露に連れて逝かれ、本懐を遂げるわけだが、もう印象というか記憶に残るのは身長1メートルのウルトラ怪獣のことばっかりだ。
(了)
光陰矢の如し、と聴いて何を取り違えたか頬を赤らめて含み笑いが止まらない男、怒涛の五連休の遣い道が、心臓の精密検査という笑えないくらいに地味で深刻なばっかりにコメントは差し控えさせて頂かざるを得ない。
「今度新しく入った女の子、元ネズミーランドだったらしいですよ」
え? それは、オリエ○タルランド職員だったってこと?
「・・・さあ、そこまでは・・・」
煮え切らんなー。短期のバイトだったかもしれないじゃんか!
「何が気に入らないんですか、くそじじい」
ん? よく聞こえなかったんだけど。
「何でもないです。しかし何でまた、夢と魔法の国からうちに来たんですかね」
嘘に疲れたんじゃない?
「あー、感じ悪いですね。嫌な大人ですよ、それじゃ」
だってさ、この間の年越しイベント、ミッ○ーがジェットスキーから転落したって言うじゃない。現実を見ずして、何が大人かってんだ!
「やさぐれてますねー。もしかしたら『元ミッ○ーの中身のひと』だったかもしれませんね、時期も符合するし。たぶん、転落やらかして干されたんですよ、あははははは」
・・・いやなおとな・・・。
(了)
過去の画像データを整理していると、
チュニジア、モロッコ、エジプト、レバノン、トルコ
という地中海沿岸諸国の名が付いたフォルダを発見する。
日付を見ると、「1925年2月17日」とある。
83年と2日前に何があったのだろうか。
何の日だろうかと調べてみると、
「ハワード・カーターがエジプト、王家の谷でツタンカーメンの王墓を発見」した日という。
そんな名の知り合いはいないはずだと思いつつ、日付とフォルダ名が符合していると妙に得心して画像を開く。
画像が古いせいか、ひどく不鮮明なのは容赦願いたい。
各画像のキャプションは、古文書に記されたメモからの抜粋。
■ホムス(ひよこ豆のディップ)、ババガヌージ(茄子のディップ)、マズメ・サラタス(辛い細切り野菜のディップ)、サラダ・ドゥ・プループ(蛸のハリッサ和え)等
■鶏のレバー
■シシ・ケバブ、若鶏・仔羊のクスクス
他数点の画像は破損していたので、メモのみを転記しておく。
■ムサカ (茄子とひよこ豆のオーブン焼き)
■ピタ
■シガラ・ボレイェ (トルコ風春巻)
■ターメイヤ (空豆のコロッケ)
■ゲロアンヌ・グリ (モロッコ産ロゼワイン)
■メディア (アルジェリア産赤ワイン)
■トゥラサン・カッパドキア (トルコ産赤ワイン)
チョコレートのプレートに記された名前は見えないが、ハワードの誕生日だったろうか
80年以上も前の画像に適切なコメントは付けられないので、今宵はここまで。
何だか分からないけど、とにかくおめでとう、ハワード!
(了)
さほど食欲もなく、社食で何を食べようかと迷い、
たらこ茶漬け
を選ぶ。
付属する一品の小鉢は、がんもどき。
空いた席に座って、割り箸をめりりと割る。
ん?
ふたつ入っているがんもどきのひとつを箸で持ち上げる。
がんもどきに何か違和感がある、と同僚に訴える。
「え? 何それ? 歯型? まだ食べてもないのに?」
満月の一部が欠けたようなシルエットを残すがんもどき。
煮崩れただけだ、と自分に言い聞かせ、見なかったことにして口に放り込むのだった。
(了)
東京マラソンが開催されているとも知らずに、銀座まで来ている。
目的地と反対側の地下鉄出口から出てしまうと、ランナー走行中の為に道路を横断できないという不条理な展開を経つつも、無事に店へとたどり着く。
目当てのハンバーガー フォアグラ添えを頼む。
あ、あと、ビールも。
国産牛肉のパテとフォアグラは、玉葱、トマト、ズッキーニとココット鍋に
小ぶりなバンズ
油、酢、葉っぱ
フレンチフライには各種ソースが付く
手前から、
トマトケチャップ、フレンチマスタード、オニオンフライ、ジュ・ド・ブッフ(肉汁ソース)、じゃが芋のピュレ。
全景
角度を変えて
無理ぐりにはさんで食す
バーガー食後は満腹を通り越した状態になることもしばしば、というイメージを払拭する食材の適量さが素晴らしい。
も少し食べたいくらいの量だけが、ココット鍋に詰まっていると信じたい。
(了)
今週もひとんちに招かれ、酒食に耽る。
確か誰かの誕生日だった気もする。
自信は持てないことこの上ないが、とりあえずおめでとうと言っておく。
酒量は殊更に増え、記憶をたどる為に画像を並べてみる。
ホームパーティー的な品が並んでいる画像ばかりだ。
■クラッカー、チーズ、トマト
■ツナ、エッグサンド
■稲荷寿司
■白餡苺大福(仕込中)
■全景
■ピッツァ・マルゲリータ
■林檎のタルト
■白餡苺大福(完成)
イタリア産赤ワインでほろほろになったところで東横線に乗って帰ります。
(了)
どういう経緯でそうなったかは失念したが、何故か80年代エピソードが話題となり、
「おニャン子クラブの中で誰が好きだったか」
という80年代を知る世代にはもはや通過儀礼にも似た質問を受けしばし考える。
と、答えた後のコメントが、
「あー、あの場末感のある子ね」
「あー、あのスナックのママみたいな子ね」
さっぱり同意を得られず。
久し振りに画像を確認すると、上記コメントが素晴らしく的を得ている事に気付き、しばし硬直する。
だってさ、国生さゆりとか新田恵利なんて答えてもつまんないじゃん。
(了)
きょうはねんにいちどのウァレンティヌスさんのきねんびです。
ローマこうていからのはくがいのもとにじゅんきょうした、しきょうさまをたたえるひなのです。
まちをうろうろするつがいどもは、きょうのひのいみをわかっているのかなあ。
わかってなさそうなつがいどもをかえるにかえちゃいます。
けろけろけろたーん
まちがったしゅうかんをみにつけたつがいどもはかえるのまま、ちょこれーとにおしつぶされちゃいます。
ごめんね、つぶされたつがいども。
らいげつのきょう、もとにもどしてあげるからね。
(おわり)
立春も過ぎた所為か日が長くなったと錯覚して、目黒川沿いを歩く。
上目黒二丁目から一丁目へと渡り、青葉台を抜けて渋谷区を目指す。
バナーとしての牛だが実はカフェ
川面に映る空が未だ明るい
夕暮れ前に到着
あれ? 電車を乗り継いでの移動よりも早く帰宅したぞ。
・・・。
何の為に定期代を払っているのか分からなくなる。
(了)
<20080211 夕刻>
ひとんちに招かれ、酒食に耽る。
酒量が増える毎にひとの話を聴かないことこの上ないので、記憶をたどる為に画像を眺める。
タパス的な品が並んでいる画像ばかりだ。
これで、何か思い出せるだろうか。
■トマトのチョリソ乗せ
■ひよこ豆のサラダ
■生ハム
■ムール貝、バジルとオリーヴオイル
■鰯のオリーヴオイル焼き
■バゲット
■マッシュルームの肉詰め
気が付けば、酒瓶がその辺でごろごろしている様子。
思い出すという不毛な作業はとうに諦めている。
明日も早いんで、とタクシーを拾って帰ります。
(了)
追記:
たいへんおいしゅうございました。
また寄せてください。
<20080210 夕刻>
日中に食したアメリカ的な食材を払拭すべく、同じ新宿区内を移動。
あれから五時間が経過している。
外苑東通りから路地に入ると、旧日本家屋を改装したリストランテが見えてくる。
店内からは障子越しに石庭が見えるという、和と伊がミクスチャー。
まずはビール、とエビスをもらう。
■イイダコのトマトソース煮
よく煮込まれているばっかりに、足だらけで頭が見当たらない。
ビールが進む。
■Chianti Classico (Casttello Di Selvore)
イタリア産赤ワイン。
■Pizza Margherita
薄い生地にトマト、モッツァレラチーズ、ルッコラを乗せただけのシンプルなピッツァ。
辛味オリーヴオイルで頂く。
■Pizza Ortotana
トマト、モッツァレラチーズ、カラーピーマン、茄子、マッシュルームという具だくさん。
それそれの主張が適度でよい。
冷えてもいける。
■イタリア産赤ワイン (銘柄失念)
ライトなのを要求した気もしたが、名前を忘れる。
葡萄酒でぐだぐだになったところで次へと移動。
移動先は、80年代のミュージックシーンを内外問わず網羅したプロモーションビデオ(PV)を流すバー。
有頂天、YAPOOS、筋肉少女帯、佐野元春、岡村靖幸、吉川晃司、BOØWY、尾崎豊が恥じらいも無く流れ続ける。
ガスタンク、原爆オナニーズ、遠藤ミチロウなんて、PVの存在すら信じがたい。
店主か従業員か不明なスタッフは、メガネに掛かる長い髪をかき分けるスカートを履いた男という、ここが何処だか全く分からなくなるくらいのキャラ立ち。
夜が終わらなくて危険なので、タクシーで帰ります。
(續ク)
晴天、この日の南中、寒風吹き荒ぶ中、新宿区内にあるバーガーショップへと足を運ぶ。
大手百貨店の特設会場は、スイーツの香りで満ち満ちている様子。
目当ての店の真っ直ぐ三階まで続く長い階段を上がると、既に三組も並んでいる様子。
テラスが喫煙というので先に入れてもらおうとするが、外ですら満席という。
しばし待つと、揃いの制服を着たスタッフに席へと案内される。
アヴォカドバーガーとミラードラフトを。
「20分お時間頂きます」
パテとバンズを焼く工程の時間差が、ファストフードとの差別化と信じたい。
待つ間、ミラーもう一本に手を付ける。
へったくそな画像で恐縮至極
テトラバッグというか、バーガーを包む為の三角に穴空いた白い袋を手渡され、意外と大振りなメニューの品を包み入れる。
付け合せのポテトはかりっと揚げられており、シーズニングなパウダーで味付け済み。
ビールが進む。
レリッシュ(relish=野菜、フルーツを刻んだものの総称)、アヴォカドは良いとしても、フレッシュなはずのレタスが長い時間放置された感があり、三角コーナーかいな、と楽しめなかったこともあり、パテとバンズを含め及第点は付けられない。
口直しに、と夕刻に予定しているピッツェリアへと移動するのだった。
(續ク)
夜半から明け方にかけて太平洋側の広い範囲で降雪があるという。
雪降る直前ってえのは寒くっていけねえ。
降ってる時は意外と冷えないのだが。
積もるね、雪は
嗚呼、豪州に帰りてえなあ。
(了)
『カルティエ現代美術財団が認めた22歳 坂元友介アニメーション全集』
@下北沢トリウッド
①「息子の部屋」
サトシの部屋には古代インドな内装とトラップが。
レイ・ハリーハウゼンばりに動く、クリシュナ的なクリーチャーな父を襲う。
②「歯男 TOOTH MAN」
(キリンアートアワード2002奨励賞受賞作品)
木造アパートに暮らす歯男、暇なのかテレビのチャンネルをザッピング。
就寝時には歯茎にも似た寝床に潜り込む。
③「カレンダー」
「1」のロゴが入ったTシャツを着た男が、「2」に眉間を撃ち抜かれる。
「2」の男、自室に戻り、「1」から「28」までの男を殺害。
別室より「3」の男が部屋に入ってきて、「2」の額を打ち抜く。
④「在来線の座席の下に住む男 The Man who lives in the Train」
(デジスタアウォード2004ゴールデンミューズ受賞作品)
日に三度の給食付きとはいえ、密閉された空間と落ち着かない振動は逃避になりえるはずもなく、椅子の向こうに自分の姿を見てしまう。
⑤「焼き魚の唄」
(第5回ユーリー・ノルシュテイン大賞優秀賞受賞作品)
千葉県産の真鯵、スーパーで学生に買われ、「なかよくしましょう」なんて切々と説く。
オーブンに入れられ、最後に見た風景が炎のマアジ、「きれいな夕陽ですねー」と焼かれてゆく様は哀しくも切ない。
⑥「マーチングマーチ」
まだ昭和だった時代の『NHKみんなのうた』を見て、幼少期に植え付けられたトラウマにも似た暗黒面が全開。
⑦「父の話」
車両に轢かれた猫を自転車のカゴに入れて棄てにゆく父のブロンズ像が秀逸。
⑧「電信柱のお母さん」
(東京国際アニメフェア2006企業賞・東京ビッグサイト賞受賞作品)
リアルに電信柱の母、街の電力すらも自在に操り、気に入らない同級生は電撃で病院送りにすることも辞さない。
現実はDVな人間の母からの逃避に過ぎないが、少年は電信柱の母を忘れない。
⑨「蒲公英の姉」
(水戸短編映画祭準グランプリ受賞作品)
奇病か突然変異か、結核みたいな咳をする蒲公英の姿をした姉を持つ妹。
姉の世話を嫌がる妹は、姉の飲み水に塩を混ぜ、結果姉は瀕死に陥る。
妹の所業を庇い、恨むことなく接する姉に心開く妹。
絵画を通じて心を通わせる姉妹だったが、蜜月期は長く続かない。
姉は花弁が全て抜け落ち、白い綿毛姿になっている。
夢の中で姉は妹の下から人の姿で去ってゆくが、現実には窓を突き破り、綿毛を全て失くし絶命する姉の姿だった。
妹は夢で見た光景と同じ現実を、泣きながらキャンバスに描き始める。
⑩「とんかつさん ~朝~」
夢の中で微妙で中途半端な目に遭い、衣の欠片を枕元に散らかしながら目覚め、「夢か・・・」と呟く。
作中、製作者らしい男が唄う『とんかつのブルース』がおそろしくへったくそで微笑ましい。
(了)
たった二日間の休肝日を経て、近所の小料理店へと足を運ぶ。
バナナとヨーグルトだけの生活が続いたので、急に魚の造りなんて食すと、胃痙攣でも起こしかねないので、自重して湯がいた青っぽい菜とか、よく煮込んだ根菜を選ぶ。
熱燗で賀茂鶴を二合、菊水辛口を三合貰う。
飲めるという当たり前の行為に幸せを感じる。
久し振りに米も食いたい、と塩昆布の茶漬けで〆る。
食と酒がおっさんを通り越して、爺の境地だ。
若隠居に焦がれる身としては本望だ、と懐手を装い、歩いて帰ります。
(了)
腸が活動していないとの診断を受けてからというものは、朝夕がバナナとヨーグルト、昼は具どころか薬味さえも一切排除した蕎麦を手繰るという、動物園の猿が江戸っ子気取りみたいな、甚だつまらない食生活を余儀なくされている。
当日の深夜ていうか明け方、完全に熟睡していると、インターフォンが鳴り目が覚める。
にいさん、いやねえさんかも分からんけど、こないな気の触れた時間に何用かと。
おそるおそる玄関に向かうと、扉の向こうには人の気配、数秒後には自室前より立ち去るが足音が遠ざかる。
食と酒から切り離されて二日目、早くも幻聴が現れたかと、早めの社会復帰を切望するのだった。
(了)
朝目覚めると、昨晩の五合が効いたのか何か名のある病なのか、少しの頭痛と、数日間変わらない胸焼けが断続的に続く。
職場へ向かうもやはり具合が悪い。
これは宿酔いではないと判断し、業中耐え兼ねて、近隣の総合病院へと向かう。
昼時とはいえ、当直の内科医師は診断を継続しており、意外と早い時間に診察室へと招かれる。
「はい、どうしましたー」
土曜からなんですけど、あれであれであれなんですよ。
「あそう、じゃ脱いで。あ、全部は脱がなくていいから」
は、はあ。
「こ、これは!」
何ですか!
「あ、ベルトだった」
そういうコントは身内でやってもらえませんか。
「じゃあ写真撮ろうか」
え? ここでですか?
「いやいやいや、放射線科で。あ、服着てから移動してね」
あ、はい。
腹部を重点的に撮影され、仕上がった写真を受け取り、再び内科医師の元へ。
「はい、えー、あー、これね」
何ですか。
「この黒いのがガスですね。これは(笑)、うーん」
今笑いました? 笑いましたよね。
「いや、わたしちょっと風邪ひいてて、医者の不養生ってやつですかね。だから不意に咳き込むんですよ」
・・・もういいですよ。
「これね、腸の活動が停止してますね。胃がむかつくのは、腸内のガスが胃を圧迫してるからですね」
だから食が進まなくて、げっぷが出るですか。
「そう、腸が動いてないと、ガスは溜まる一方ですから」
なるほど。何が原因ですかね。
「風邪からくる症状なのか、他の病気の初期症状なのかは分かりませんね。あとストレスも在り得ますね」
煮え切らんなー。
はい、ガス人間の誕生です。
煙草に火を点けたら爆発しかねないので、うっかり喫煙もできません。
「ピロリちゃん」と呼ばれるよりはまだましかと、職場へ戻るのだった。
(了)
夕刻、黒猫に導かれた後妻を迎え、丁重にもてなす・・・かと言えばそうではなく、初日にして留守を任せ、未だ積雪が目立つ外へと繰り出すのだった。
晩酌を目指し、近所の小料理店へと足を運ぶ。
暖簾をくぐると、常連の画伯がひとりで飲っている様子。
「あら、おひさしぶりね」
あ、どうも、先生。いつもお元気で。
「元気じゃないわよー、この間もキムチ食べてたら、こうね、喉がぐーっとさー」
それ危険ですね。正月の餅レベルの危なさですよ。
「まあ大丈夫だったんだけどね。あなたはあれ、元気でやってるのかしら?」
いや、実は二日前から胃があれっていうか、胸焼けっていうか、むかつきっていうか。飯がさっぱり喰えんのですよ。
「それ」
え? それ? どれ?
「あたしもそれだった」
いや、先生、さっきキムチって。
「ピロリ菌よ」
ピロリ? 音的にはかわいいですね。
「胸がむかむかするんでしょ? ゲップが止まらないでしょ? 喉がぐーっとなるでしょ?」
最後のは先生のキムチ症状ですけど、他は当たってますね。何で!
「だってあたし、医者の娘だもん」
あー、そうでしたっけ。
「あなた、女の・¥」:;p@「¥^-0!”#$%&’()したんでしょ?」
先生! ここ飲食店なんで、そういう発言はちょっと。
「あなた、気を付けなさいよー。女は怖いわよー」
よく分かりました。
枯山水な身に覚えはさっぱりありませんが、何かしらの病を背負っていると判断して自愛することに致しましょう。
(了)
追記:
<当日の夕餉>
■熱燗五合 ・・・ 胃腸があれでビールが飲めないから。菊水辛口。
■魴鮄(ホウボウ)の造り ・・・ 降雪の時期が旬という。正に今。ぽん酢で頂く。
■子持ちヤリイカ焼き ・・・ 足から頭にゆくに従って子ががっつりと。
■おでん(大根、豆腐、ちくわぶ) ・・・ 煮崩れるくらいが胃腸に良い。
・・・自愛しとらんがな。
寒いな。
外が白い。
雪だ。
王族の象にも雪は積もる
本日は後妻を迎える日。
がしかし、待てど暮らせど、黒猫に付き添われてくるはずの後妻は来ない。
待つだけというのもあれなんで、雪の積もるバルコニーに出てみる。
降雪も甚だしく、当然のように寒い。
8時間くらいかけてスノーマンをつくってみる。
スノ~マ~ン~
少し怖いな。
ほっとくと何かが宿りそうなので、速やかに破壊し、外と同じ気温の室内に戻るのだった。
(了)
追記:
後妻は20時41分に、黒猫に付き添われて自宅を訪れた様子。
何だそりゃ、別料金払ろうてんのに。
4GBという容量の後妻は明日の夕刻に出迎えることとして、涙を枕に寝るとしよう。
本日の予定が失意の中に脆くも消え失せ、不意に招かれて西麻布へ。
対馬の海底から引き揚げたという天然石で食材を焼いてくれるという。
卓上に並ぶは、醤油、ぽん酢、塩、レモン、柚子胡椒等と自由な味付け。
席に着くと、石が放つ遠赤外線で日焼けするんじゃないかと思うくらいに、肌を焦がすような熱量を浴びまくる。
ねえさん、とりあえず、生ビール。
■地鶏5種(腿、笹身、砂肝、セセリ、つくね)
「朝絞め地鶏」という大胆な表現に戦々恐々としつつも箸が進む。
竹筒からこそいだつくねが石で焼かれてゆく。
■魚介2種(子持ちししゃも、帆立)
網焼きとは違い、身を置き去りすることなく丸ごと持ってくの可。
■銀シャリ
熊本産の「七城米」を、竹炭を入れて一晩寝かせた水だけを用い、南部鉄の釜で炊くという。
これは、と箸が止まる。
白米だけでもりもりと喰える。
■鴨ロース
石で焼かれて脂流れゆく身に葱を振って山葵醤油で頂く。
■厚切りベーコン
つまみぐい的に素で食うも、表面をかりっとするまで焼くもよし。
■和牛ロース
黒毛和牛というが、もうカラダが受け付けなくなっている。
そろそろキャパ超えかと水を飲み始める。
■森のキノコ(椎茸、エリンギ、えのき、舞茸)
既に満腹を通り越しているので、時間の経過とともにコメントが難しくなる。
あー、はいはい、キノコねキノコ、キノコとおりまーす。
渋谷まで歩けるだろうかとも考えるが、道中通過する青山霊園の暗闇っぷりに恐れをなし、右手を挙げてタクシーを拾うのだった。
(了)
寒風吹きすさぶ中、コートの襟を立てながら駒沢通りを歩いている。
もう2月か。
「って僕の話聴いてます?」
ん、何だっけ。
「やばいですよ、それ。うちの母親と一緒じゃないですか。年取ると同時にいろんなことができなくなってくるんですよ。もうマルチタスクじゃないんですよ」
あ、ごめん。携帯いじってたら話が途中から聴こえなくなった。ってこれか、これがあれか。
「そうです、そうやって一般的な単語すら出なくなるんですよ。老化は確実に進んでますよ」
時は残酷だねえ。老いて益々盛んなんてえのとは縁遠いねえ。
「おっさん通り越して爺じゃないですか、しっかりしてくださいよ」
どうすりゃいいのかねえ、げほごほげほ、んんっ。
「そういう咳は二十代の頃はしてなかったはずですよ」
あ、そうかも二年前からかも。これは何? 煙草のせい?
「違います、喉にある呼吸と食道を分ける弁が劣化してるんですよ」
弁が。
「そうですよ、あれ? 僕、今、何の話してましたっけ?」
なるほど、よく分かった。もうマルチタスクじゃないんだな。アプリケーションを同時に起ち上げるとフリーズするんだな(涙)。弁だよ、弁。
「便? ああ、思い出しました、弁でしたね。とにかくいろんな器官が日々壊れてゆくわけですよ」
休日ともなれば神社や寺院を巡り、BGMは始終落語という今となってはリアルな話だねえ。
(了)