夜間に閑静な住宅地を歩くてぇと、「じー」なんてぇ音を耳にしますな。
電気系に詳しい方に尋ねてみますってぇと、あれは電柱に付いている水銀灯の安定器、もしくは変圧器から発せられる音らしいですねぇ。
素通りするんであれば全く気にならないんですがねぇ、自宅にいて、尚且つすぐ外にある電柱からそんな音がするてぇと、若干神経障りますな。
抑揚無く一定した音ってぇいいますか、音波が脳を刺激しますとねぇ、さすがのあたしでも穏やかじゃあいられません。
・・・何か頭痛っぽい感じがして参りましたねぇ。
嘔吐の予感も辞さないですな。
畜生め! 何とかしろってんだよ、東○電力!
蝉とかそういう「じー」じゃねぇぞ!
あと五分以上こういう状況が続くんなら、外へ出て行かざるを得ないってんだ!
(了)
よく寝てないのを自慢げに話す方がいますな。
「いや、俺さ、もう、52時間くらい寝てなくてさ、もう危ないね、だいぶまずいね、ぶっちゃけやばいね、もう寝るね、すぐ寝るよ、いま寝るよ、ここで寝るよ、そしたら起きないよ、何やっても起きないよ、面倒くせぇぞー」
って厭なテンションで絡んできますねぇ。
そんなのは路上てぇいいますか、車道にでも放っときゃいいんですがねぇ、それが自分のことになると、車に轢かれるのは嫌なんですが、何だか全てがどうでもよくなりますねぇ。
しかも、当然寝ますな。
軽く錯乱しているのか埼京線を撮影
「種別は?」
男ですな。
肉が焼ける煙で白い視界の向こうに外環が見えますな
埼玉西武ライオンズ vs 東京ヤクルト・スワローズ(二軍戦)
「おとうさん、ぼくらもむこうでやきにくたべたいよ」
「牛は危ないから駄目だって言ってるだろ!」
埼玉県より東京都へ移動しまして、連続飲酒は続きますな。
(了)
浮かない表情を貼り付けたまま、腕時計と壁時計と卓上時計を交互に見ながら溜め息を吐く同僚、満を持して立ち上がる。
「行きたくないなー」
部長の送別会でしたっけ?
「そう第一弾」
それ、よくない習慣ですねー。当然次もあるんでしょうね。
「そう、二弾目が厄介」
やっかい?
「二弾目の連絡メールに『部長を慕う有志を募って開きましょう』ってあるんだ」
それ、断ると微妙な溝構築っすねー。恐喝にも近いですね。
「んー、むしろ踏み絵かな」
気分は隠れ切支丹。
(了)
反省点といえば、言わなくていいことをあえて言うということは、やはりあえて言わなくていいということ。
堂々巡りの無間地獄無限ループに陥る覚悟でぐるぐるぐるぐるするのも辞さない覚悟で。
「道ゆくみなさーん、今から一曲唄いますのでー、聴いてってくださーい」
気がふれる前に帰ります。
(了)
着席すると、Coperto(コペルト=チャージ)としてバゲットとプレッツェルが出てくる。
Birra(ビール)を飲みながら、もそもそと喰う。
■Polpo Affogato ポルポ・アッフォガート (蛸とフレッシュトマトの軽い煮込み)
直訳すると、「溺れ蛸」。
アンチョビ、ガーリック、イタリアンパセリのオリーヴオイルソースの中に真蛸が溺れてる。
Bottiglia Vino Bianco (ボッティグリア白)のボトルを頂く。
■Pizza Puparuolo ピッツァ・プパルオーロ (モッツァレッラ、ゴルゴンゾーラ、パプリカ、ソーセージ)
量も多く完食できず、上に載るパプリカだけをやっつけて終了。
水を頼むとボトルごと出てくるが、硬水ではごくごくと飲めない。
苦しいくらいの満腹感のまま、次の店に移動します。
(了)
「もてる」なんてぇ言葉がありますな。
「あなた、おもてになってらっしゃる」、「もててもてて困る」なんてぇ言い方をしますねぇ。
昔っから、「いちみえ、におとこ、さんかね、しげい、ごせい、ろくおぼこ、しちぜりふ、やぢから、きゅうきも、とひょうばん」なんてぇ言われておりまして、このうちひとつでもその身に付いてるなんてぇと、ご婦人からおもてになるってぇはなしですな。
「いちみえ」ってぇと、「一見え」ですな。
形が良い、見てくれが良い、着ている服が良いってぇと、これは無条件に好印象ってぇはなしでねぇ、何を今更ってぇ感じですな。
「におとこ」、これは「二男」、男前、男振りが良いってぇと、これも今更何をってぇ感じでねぇ。
「さんきん」、えー、「三金」ですな。
だんだんどうでもよくなってきましたねぇ。
いらいらしますな。
「しげい」ってぇと、「四芸」ですな。
何かに秀でてると身を助けるってぇわけでねぇ、これが「ゲイ」なるってぇと、もうフルスイングで空振り感満載なんですな。
「ごせい」なんてぇのは、「五精」ですな。
よく精を出すなんてぇ言いまして、何かに対して一生懸命に取り組むってぇ姿勢が肝要だってぇはなしなんですが、だんだん耳が痛くなって参りましたねぇ。
「ろくおぼこ」ってぇのは、「六おぼこ」なんて漢字もありませんな。
元来ならご婦人に用いるんでしょうがねぇ、純朴、ピュア、世間ずれしてないなんてぇ表現もありますが、童貞くせぇってぇはなしには違いござんせん。
「しちぜりふ」、これは「七台詞」ですな。
江戸っ子風に、「ひちぜりふ」なんてぇ言いますってぇと、粋なんだか言えてないんだか分かりませんな。
喋りが巧いってぇと、もてるどころか世渡り上手になりますねぇ。
そりゃあ、芸人なんてぇのはもう、しゃくれててももてるわけですな。
「やぢから」ってぇのは、「八力」ですな。
格闘技好きのご婦人ってぇ方にそうそうお目に掛かかることはござんせんがねぇ、リアルにDV受けてる方なんてぇのはたぶん見ないでしょうな。
「きゅうきも」なんてぇのは、「九肝」ですな。
肝が据わってるなんてぇと、これは頼りになりますねぇ。
ただのレバー好きってぇと、だいぶ頼りないですな。
最後、「とひょうばん」は、「十評判」ですな。
評判が良いってぇと、隣の教室からも女子が見に来ますねぇ。
キモいってぇ評判でも人は見に来たりもしますな。
とまあ、無いものなんてぇのをあげつらってみたところで、そこにはなーんにも無かったりなんてぇことに気付いたりしますな。
それでもあたしゃ、「三金」ぐらいは頂きたいですねぇ。
(了)
「で、鳩がですね」
うわ、びっくりした。まだ鳩の話してやがる。
「鳩がですよ」
分かったってば。何だよ。
「乗ってるんですよ」
何にだ。
「エレベータに」
それ、閉じ込められてんじゃんか。
「でも、誰かが押さないと扉は開かないでしょ。入ったら気付くはずだし」
んー、そりゃそうだな。くちばしで押したんじゃない?
「無理ですよ。しかもですよ、ふつうに外にいるみたいに歩いてたらしいんですよ」
ふーん、ってこの話は何が面白いの?
「実際、エレベータに乗ろうとして鳩がそこにいたら、かなり驚きますよ。同僚のひとりはその日を境に来なくなりましたからね」
それは関係無い。
(了)
職場のある七階から六本木方面を眺めていると、外でぶら下がっている窓拭き職人と目が合う。
自分には絶対向いていない職種として物珍しくもしげしげと見ていると、実は窓拭き職人ではなく、ハンマーを用いて当建造物を覆っている赤い煉瓦の強度を確認している様子。
とはいえ、その行為自体が放って置けばなんでもないはずの煉瓦を剥がし、地表をそぞろ歩く通行人らに煉瓦の破片を降らしそうで、見ていると不安になり、数羽の鳩に突付かれて中止になればいいと念じてみる。
傍らで紙パックの牛乳を音を立てながら飲んでいる同僚、方向違いの念が通じたのか鳩について語りだす。
「前の職場が倉庫だったんですよ」
天井高いね。
「そう、夏場暑かったんで、天井近くにある排煙用って煙を逃がす為の窓を開けっぱなしにしてたらですね、鳩ががっつり入り込んでて」
追い出すのたいへーん。
「大変ですよ。ひとりは素手で捕まえようとしてあっさり失敗してましたし、ひとりは箒で追うんですけど、全然窓の外へ逃げてくれないんですよ」
素手、いけそうで意外と難しいよねぇ。
「で、その時やってたのは、軍手をこう丸めてですね、投げるんですよ」
ぶつけるの?
「いえ、窓の外へ放るんです。そうすると、やつら、釣られて外へ飛び去るんです」
習性かー。
誰の知恵なのかは分からんが、鳩の生態を熟知した効率的な方法だ。
鳩が家に入り込んでお困りの方、是非!
(了)
五月のシフト表を作成するにあたり、そう言えば東北に暮らす知人が結婚式に呼んでくれていたな、と日取りを確認する為に電話してみる。
「あい」
ひさしぶりー。
「おー、めずらしいねぇ」
そうそう、お前さー、もう四月だってぇのに招待状寄越さないからさ、日取りを訊こうと思ってさ。
「あー、あれ」
そう、あれ。
「あれ、なし」
な?
「あの件、なくなったからさ、もういいよ」
な?
「まあそれはそれでさ、また改めて遊びに来てよ、じゃ」
ツーツーツーツー
そもそも式自体が延期になった、何でまた、いろいろあるんだよなんてと聴いて、何やら不穏な空気は感じていたのだが、今の今までまさか破談になってるとは思うに至らなかった。
全てを済ませた後の成田離婚よりはましなのだろうか。
(了)
きのう、せたがやくにあるれんたるなおみせで、まつおすずきせんせいをみつけました。
やたらとかおいろがしろく、きゅうしゅうのひとなのになあとおもいました。
ぼうしにひげづらでした。
ひげはしろかったです。
おそらくしらふだとおもうのですが、たいそうちどりあしなようすで、みていてたいへんふあんになりました。
おさけじゃない、なにかかな?
すこしきになったので、あにめのこーなーまでおいつめて、ふでぺんをわたすとてちょうにさいんをしてくれました。
ふでぺんをみて、にがわらいをしていたのがいんしょうてきです。
あくしゅをかわし、さわやかにわかれました。
むかいのほんやさんでたちよみをしていると、ふたたびまつおせんせいがやってきました。
あ、まだこいついやがるのかときまずそうに、それでもやはりふらふらとあるいています。
さようなら、まつおせんせい。
わかれたおくさんのことや、かいねこのはなしをしなくてよかったとおもいました。
(おわり)
前回訪問時には、閉門十七時に間に合わず鉄柵に阻まれたが、この日十六時過ぎという微妙な時刻に訪れ、敷地内を徘徊する。
吉田松陰先生留魂の地
明治十五年創建という社殿(昭和二年造営)
松下村塾レプリカ
レプリカとはいえ、八十数名もの勤皇烈士を輩出したとは到底信じ難いくらいにミニマムで、手狭も手狭。
著名な門人、久坂玄瑞、高杉晋作、吉田稔麿、入江九一、伊藤博文、山県有朋、前原一誠、品川弥二郎、山田顕義、野村靖、飯田俊徳、渡辺蒿蔵(天野清三郎)、松浦松洞、増野徳民、有吉熊次郎、木戸孝允(桂小五郎)らを詰め込むとしたら折り畳むしかない。
世田谷線、田園都市線、井の頭線と乗り換えて帰ります。
(了)
SPACE LABO YELLOW
Real Grooves vol.26 5 Year Anniversary Party
Djs:
Kevin Yost(i records/Wanesboro, USA)
Nivek Tsoy(Dessous, Tsoy,Yoke/Uzbekistan)
WOMB
SESSION FRANK MAUREL BIRTHDAY BASH!
GUEST DJ : FRANK MAUREL (PORTUGUESE MAFIA / LAJJA REC)
もうすぐ閉店するという前者と自宅から徒歩二分の後者、どちらにゆくかと訊かれ、「ポルトガル!」と回答するも、来るはずの連れは急遽不参加となり、企画そのものがやむなく中止に。
代替案として、知人が参加するイベントがあるという三軒茶屋へ向かう。
微妙な空模様の中、無事にたどり着き、数年振りの知人と合流し、27時過ぎまで飲んだくれる。
・・・めぬい、言えてないくらい眠い。
青山通り、旧山手通りを走って帰ります。
(了)
!!!CAUTION!!!
<以下の内容はフィクションであり、実在の人名・団体とは一切関係ありません>
不意に袂のふくらみに気付き確かめてみると、うっかり実印が入っているくらいの意外性を小粋な謎解きに転じるくらいの気概も無く、雨と風と傘が吹き荒れる赤坂、19時半。
誰が父親の遺産を継ぐかという親族会議、八人席の四隅に座るのは以下の四人。
長男、次男、三男、妾の子。
残り四名の登場人物を待っている。
順当に相続が叶うなら、当主たる長男の手に渡るはずが、行方の知れない遺言状には長男以外の血縁者が記載されている可能性も否定できず、どうせ自分じゃないと自暴自棄気味に事態を掻き回すだけ掻き回すだけという次男、年老いてから出来た子として孫のように可愛がられた優位な位置付け、転じて殺されやすい三男を含め、元芸者である妾の子ですら相続権を持つという設定。
互いに隣り合わないのは、全員敵だから。
口を開けば罵詈雑言が容赦無く飛び交う為、四人は黙したままグラスを口に運んでいる。
遅れて登場する四人は以下の通り。
家政婦、後妻、弁護士、次男の嫁。
家政婦は先代の持つ秘密を幾つか「見て」おり、後妻は明らかに遺産目当てに妻の座に納まった風貌で、弁護士は何通かヴァージョン違いがあるという遺言状作成に立ち会っており、終了10分前にいきなり登場する次男の嫁は夫すら差し置いて重大な秘密を明かすという設定。
この火サス以下である設定の登場人物、家政婦以外は全員死にキャラだな。
(了)
<泣きどころ>
「母さんがどんな苦労したか、あんたら本家の人間は知らないんだ!」
「黙ってろ、妾の子!」
「お前らなんかに何が分かる!」
「出て行け、妾の子!」
「父さんさえ、父さんさえ、生きていたら・・・」
日常的に眼鏡を装着している同僚、今日に限って裸眼の様子。
何故と問うことにする。
「何ですか?」
網棚に忘れてきたんでしょ。さっき電話してた相手は遺失物係だ。
「そうなんですよ、前の日飲み過ぎてて少し眠いなぁって上に置いたらそのまま、なわけないないじゃないですか」
風が強かったからねぇ。
「そうなんですよ、電車降りたら急にごーって気付いたらびゅーってああーっ僕のメガネ~、て違いますよ」
実は額に掛けている。
「そうなんですよ、メガネメガネって波平ですか」
いや、そこはやっさんであって欲しい。波平は「かあさん、わしのメガネ知らんか?」だから。
「すいませんねぇ、自分若造で。ジェネレーションギャップですか、カルチャーショックですか」
何か不愉快だな。じゃなくて、何故メガネじゃないのさ。
「あ、それですか、今日午後から健康診断なんですよ」
ほう。で?
「分かりませんか? グラム単位での減量ですよ」
するってぇと、何かい?
その黒々とした髪も剃るんだろうな、爪も歯も全抜きなんだろうな、おい。
そんぐれぇの覚悟がねぇなら、体重なんて気にすんな!
(了)
遅い昼食を頂こうと、社食へと向かう。
目当ての特製味噌つけめんは既に売り切れており、手描きイラストのぶっさいくな白衣を着たシェフが憎々しもふてぶてしい表情で謝罪している様子。
仕方ねぇカレー南蛮うどんでも頼もうなんて、麺の受け渡し場へ向かうも「うどん終了」なんて趣旨の札が忌々しげに立てられている。
じゃあいったいなんにしたらここはまるくおさまるんですかとふつふつと沸きいずる念ばかりが先行してしまい、麺の場に並んでしまった手前、止む無くカレー南蛮そばを頼む。
「はい、ご注文どうぞー」
カレー南蛮そばをください。
「はい、カレー南蛮そば~一丁~」
と、厨房の男、前の客がオーダーした半ライスを取りに行く。
ひたすら麺を茹でる別の男が顔だけをこちらに向ける。
「ご注文をどうぞ」
あ、さっき言いました。
半ライスを持った男が戻って来て、新しい客を迎える表情で言う。
「はい、ご注文どうぞー」
・・・カレー南蛮。
「うどんですか、そばですか」
・・・そば。
「はい、どうぞー」
ていうか聴けよ、とは言ってないがな。
勝手にリセットするな、と言いたい。
忙しいのなら事情も分かるが、前のひとりが半ライスひとっつ頼んだだけで、カレー南蛮そばがゼロカウントかい。
「はい、カレー南蛮そばね」
何でしょうね、この黒いカタマリは。
南蛮? 南蛮が黒いのか。
隙を見て、別に盛られた葱の皿を数点くすね、テーブルへ持ち去るのが精一杯の抵抗としたい。
(了)
婚約破毀の慰謝料請求なんてぇはなしをよく、ではござんせん、稀に聴きますな。
そもそも、婚約の定義ってぇのはなんなんでしょうかねぇ。
餅は餅屋ってぇ言いますから、その手の法に明るい、せんせぇなんてぇ人に尋ねてみるってぇと、
「婚約とは、法的な婚姻契約の予約」
ってぇことらしいですな。
婚約ってぇのが有効に成立するってぇと、当事者は将来的に婚姻を結ぶ、いわゆる結婚の為に果たす義務を負うってぇ運びとなりますねぇ。
だ、か、ら、理由無く破毀なんてぇのは、あっさりと訴訟沙汰になってぇしまいますな。
とはいえ、婚約破毀の正当事由ってぇのもあるってんですから、天は見放しゃしませんねぇ。
■不貞行為、例えば他に相方がいる
これは分かりやすいですねぇ。
今なら携帯に残るメールなんてぇ証拠物件で押さえられるってぇことですな。
もっとも、そんな下手打つまでもなく、メールは送信後に即削除しとけってぇはなしですねぇ。
■高給と偽る
馬鹿ですねぇ。
すぐばれる嘘八百でいうと、かなりの高位ランキングですな。
実際には無いわけですからねぇ。
■性的に無能
これが理由になるのは分かってましたがねぇ、こうストレートにこられると、あたしゃどうも。
■過去の生活、重要事項についての虚偽、隠蔽
余計なお世話だってぇ気もしますが、サザエさんちじゃないんですからねぇ、男女には男女の数だけ秘密があるってぇのよ。
■何かと不誠実な為、将来の展望が暗い
これは曖昧ですな。
こんな理由で一方的に破毀されるなんてぇ、親類一同に申し訳が立ちませんねぇ。
■不治の病を患う
するてぇと、『私の頭の中の消しゴム』なんてぇのも充分理由になるんですねぇ。(泣)
病の数だけ悲しいドラマがありますな。
■生活に支障をきたすくらいに経済状態が悪化、例えばギャンブルで
付き合ってる時点で気付けってぇはなしですな。
別で暮らしてての交際のみで、同棲という過程を端折ると、意外と気が付かないってぇことですかねぇ。
■当事者同士が納得ずくで合意
それはいいじゃん。
当事者でさえなければ、対岸の火事的に笑えるてぇ無責任な一席で御座いました。
(了)
何かに乗っかる、便乗するてぇひとがいますな。
決して先達にも開拓者にもならない、永遠の追随者ってぇことですかな。
もっとも、それが楽な立ち位置ではあるんですがねぇ。
長屋の隣室に暮らす牢人清十郎より、向島へ鯊釣りに行くから大根でも煮て待っておけなんてぇ言われた八五郎、言葉そのままに手前の鍋で大根をぐつぐつぐつぐつと煮続けるも清十郎は待てど暮らせど帰って来ないまま、何でぇつまらねぇと手酌で酒呑むってぇと不貞寝してしまいますがねぇ、夜中にふと目を覚ますってぇと、清十郎の部屋から若い女子の声がするんで、壁に火箸で穴を開けて覗いてみるってぇと、清十郎が別嬪と仲睦まじく乳繰り合っている様に見えますな。
「キーッ! 何でぇ、あの牢人野郎、釣りに行ったかと思えば、あんな若い女をこんな夜中に連れ込んで、いちゃいちゃいちゃいちゃと!」
夜が明けて八五郎、清十郎に詰め寄りますな。
「先生! あの女なんなんですかっ! あっしはねぇ、大根煮ながら待ってたんですよ! 先生がハゼ釣ってくるって言うから! なのにあんな夜更けに、女といちゃいちゃいちゃいちゃい・・・」
「すまぬ、八五郎。実はハゼは釣れなんだ。代わりに頭骨を釣ってしまい、寺へ持ち寄って供養したところ、件の礼と言うて、頭の持ち主が訪ねて来たのだ」
「いちゃいちゃいちゃいちゃ、えっ? するってぇと何ですかい? あれはゆうれ、幽霊!」
「左様、あれは・・・」
「先生、竿さおさおささお貸して、竿貸して!」
「えー? ていうか、話聴けよ」
「いいから、竿貸して。すぐ返す今返す後で返すたぶん返すきっと返す!」
八五郎、半ば奪うようにして、竿を携えて向島までやって参りますってぇと、辺りは釣り人であふれておりますな。
「おぅ! 骨は釣れてるかぁ、骨は!?」
この時既に八五郎の脳内では「骨」=「美人の嫁」ってぇ公式が出来上がっておりますんで、フルテンションの妄想で「骨」を探しますってぇと、釣り人及び魚方面に多大な迷惑を掛けますな。
「あたしゃ~年増が~好きなのよ~、とくらあ、あ、わー!」
と水に落ちて、『野晒し』の一席で御座いました。
(了)
ある意味、えーと、何だっけ? あ、そう、あれあれ、ケン、けんぼー! 健忘症な日でした。
例えば、ひとの結婚式の日取りを忘れてるくらいに!
イエーイ! 幸せに! 幸あれ! 行ってないけど!
(了)
渋谷ってぇ地名の由来てぇのは、諸説あるなんてぇはなしになってますが、渋谷家の祖ってぇ謂われております、河崎基家の子、重家が渋谷姓を賜り、これが渋谷の地名の起こりとされております。
重家の嫡子に金王丸ってぇのがおりましてねぇ、源義朝、頼朝に仕えており、寵されていたと伝え聞きますな。
爺趣味、最骨頂の御近所神社巡りの一節で御座います。
寛治六年(1092)創建という金王八幡宮
明和六年(1769)、享和元年(1801)建立の二説があるという門
境内の何処かに、頼朝が金王丸を偲んで植えたとされる金王櫻があるってぇ聞きますが、既に桜の季節じゃござんせん。
慶長十七年(1612)造営という社殿
徳川三代将軍ってぇと家光公ですがねぇ、将軍職に就いたってぇと、守り役である青山忠俊が家光公の乳母、春日局と共に造営を始めたってぇはなしですな。
「俺の俺の俺の話を聴けぇぇー」
「二分だけでもいいぃぃー」
タイガー&ドラゴン、虎は虎に見えるんですがねぇ、龍がバクみたいですな。
夢喰らいってぇいいますからねぇ、想像上の生き物ってぇ意味では何ら代わりはござんせんねぇ。
六本木通りより明治通りを渡って青山通りに入り、道玄坂を越えて旧山手通りから家に帰りますな。
(了)
仲入りが開けるってぇと、桟敷は混んで参りますな。
伸ばしてた足も畳んで、斜めになった畳に身体を預けるってぇと、居住まいを正しますねぇ。
落語 ■ 柳家 さん福 「だくだく」
ここに来まして、やっと落語らしい落語が聴けますな。
言うても当演目は古典ではなく、「大理石の時計」、「ラジオ」なんてぇ家電が登場するわけですねぇ。
漫才 ■ 昭和 のいる・こいる
どちらがのいるかこいるか分かりませんが、立ち位置正面左側の男の主体性の無さが改めて浮き彫りにされますな。
「そうそうそうそうね、うんうんうん、違う違うね、やっぱりねそうね、ねぇ言ったでしょう」
ってどっちやねんて客席全員が思ってますねぇ。
落語 ■ 柳家 権太楼 「代書」
当演目では、履歴書の意味も知らん、いたーい四十男が発する素っ頓狂な言葉ひとつひとつに、代書書きが苦悩するという内容。
権太楼師匠が東京出身であることは百も承知なんですがねぇ、上方における河内弁のきったない言葉が良く似合い、始めて拝聴させて頂いた時の浪速の商人役に違和感ゼロだったのを思い出しましたな。
落語 ■ 林家 たい平 「七段目」
前座仕事のひとつに「前の噺家が座っていた座布団を裏返す」ってぇのがありますが、何故かこの時、全身ピンクの林家 ペーが前座仕事を行い、挙句ほんとの前座にやり方を正されてましたがねぇ。
たい平師匠が言うには、
「ペー師匠から相談があると言われまして、師匠は最近落語に興味を持ったらしく、『弟子にしてくれ』って言うんですよ。で、この後、四ッ谷に連れてかれてですね、夜中の一時くらいからようやく相談に乗るんですがね」
当演目はってぇと、芝居好きが興じた若旦那、勘当寸前に自宅で謹慎するんですがねぇ、とても止められるわけも無く、店の小僧定吉と『忠臣蔵 七段目』を演じ、抜いてはいけない真剣を抜き放ち、斬られまいと逃げる定吉は階段から階下へと落ちるってぇ運びで。
「定吉! 大丈夫か、てっぺんから落ちたのかい?」
「いえ、七段目からでございます」
太神楽曲芸 ■ 翁家 和楽 社中
三人で行う、短剣九本投げは見ていて何だか分からねぇですな。
たぶんものすごいことをやっている、ってぇのはよく伝わるんですがねぇ。
日々血の滲む様な努力をしているかと思うと、あたしゃ人知れず涙ぐんじゃいますなぁ。
夜主任 ■ 柳家 花緑 (かろく) 「唖の釣り」
花緑師匠が座布団より顔を上げ、話し出したのをきっかけに、最前列に座していたひとりの老人がおもむろに立ち上がるってぇと、花緑師匠より、
「あ、おじいちゃん、どうかされましたか、大丈夫ですか?」
なんてぇ言葉すらもスルーして、まっすぐと出口へ向かいますな。
その間、花緑師匠、完全に素の様子で、その老人を振り向かせようとさかんに話し掛けるんですがねぇ、老人、何も耳に入ってない様子で木戸より出てゆきますねぇ。
花緑師匠、苦笑のまま、
「そうきましたかー。いやー、わたし九歳の頃から落語やってて、十代には高座に上がってましたがねぇ、こんなショックなことは初めてですよ。これは・・・トラウマになりますねぇ」
と茶をすすりますな。
当演目はってぇと、上野寛永寺にある殺生禁断の池で鯉釣りをする与太郎と七兵衛が、寺侍からの追捕から逃れる為、
「患った父と母が死ぬ前にどうしても鯉を食べたいと言ってたんで、殺生禁断と知りつつ釣りました」
という泣き落としで、鯉を持ち帰るってぇ内容ですねぇ。
与太郎は何とか難を逃れるも、七兵衛は寺侍の持つ六尺棒で殴られ過ぎて言葉を失ってしまい、聾唖者と思われ、やはり罪を許されて鯉を頂く運びになりますってぇと、
「ありがとうございます」なんてぇ返事をうっかりしてしまうんですな。
追い出しとなり、般若湯でも飲ろうなんてぇ運びで丸の内線に乗って移動しますな。
(了)
寄席でよく言われる足元が悪いってぇと、雨で道がぬかるんだ状態を指すってぇもんですがねぇ、今の世じゃあせいぜいアスファルトに水溜りってぇのが関の山ってなもんですねぇ。
かつては下足番なんてぇ小男が、客の下駄だの草鞋だの蛇の目だの番傘だのを預かって引換の札なんてぇのを渡して、桟敷にあないしたってぇもんですがねぇ、今じゃあ、能面みてぇなツラした典型的な文系女子が愛想も何もねぇ、何怒ってんの? 機嫌悪いの? 俺何かした? 的なリアクションしか取りようもないってぇくらいの扱いなんですねぇ。
木戸銭なんてぇのを払い込んで、中へと入りますな。
本日は、四月上席千秋楽。
毎度の噺にしばらくお付き合い願うわけですな。
落語 ■ 柳家 わさび 「狸賽」
二ツ目昇進にて「生ねん」改め「わさび」という。
前座から二ツ目に上がるってぇと、羽織が着られるようになりますな。
初めての羽織ってぇのは、いいもんですな、着た事もねぇですがねぇ。
落語 ■ 川柳 川柳 (かわやなぎ せんりゅう) 「ガーコン」
春風亭 一朝の代演という。
戦勝時の軍歌は陽気ってぇいいますな。
軍が負けてるってぇと、軍歌も自然とマイナーコードになりますねぇ。
川柳師匠の「口JAZZ(くちジャズ)」は素晴らしいですな。
テンション上がっちゃって、ほとんど立ち上がってましたがねぇ。
紙切り ■ 林家 正楽 (しょうらく)
客からのリクエストの中に、「バースデイケーキ」ってぇのがありまして、全身メッシュという裏原ドラゴン級センスの中学生女子が非常に楽しげでしたな。
正楽師匠、バースデイケーキなんてぇお題に困ったようで、しばらく手が止まってましたねぇ。
落語 ■ 三遊亭 白鳥 「マキシム・ド・呑兵衛」
出囃子が『白鳥の湖』でしたな。
秩父で流行らない居酒屋を営む老夫婦が、孫娘の誘いで銀座のフレンチへ招かれ、サービス業としての今後の展開を見せるという内容。
「秩父」ってぇ土地を限定して大変へんぴとされておりましたが、これ少し問題ありますな。
落語 ■ 林家 彦いち
元格闘家だけに、入場時のフットワークが軽やかですな。
羽織にはアディ○ス三本線、裏地には林家の定紋が入ってますねぇ。
空港にて「機長が来てない為にフライトできない」という異常事態をマクラに、
本編は「人身事故で停止した(らしい)京浜東北線にてキレる若者」という、ドキュメンタリー。
座布団から数間も転がってゆく噺家を始めて見ましたな。
俗曲 ■ 柳家 小菊
まああれですな、小菊ねえさんに関しましては、毎度の事ながらあたしゃ正座の上に背筋が伸びますな。
音源は毎日拝聴させてもろてますが、言うてもライヴは二度目ですがねぇ。
落語 ■ 三遊亭 歌之介 「爆笑龍馬伝」
鹿児島出身らしい、くっどい顔してますな。
薩摩弁ってぇいうんですかねぇ、江戸の噺家とは印象が違いますねぇ。
本編であるはずの「坂本龍馬」はさっぱり進まず、噺は脱線したまま時間となりますな。
落語 ■ 三遊亭 円丈
円丈師匠、派手で高価そうなデザイン入った羽織で現れ、まるで大家で持て余す徘徊老人みたいですな。
ガマの油売り口上が時々詰まり気味になるのが残念でしたねぇ。
ここで仲入りでございます。
(續く)
内科外来での診察を経て、先日より処方された薬を服用している。
あかん、眠いー、だるいー。
取説を読む。
■PL顆粒
効能:鎮痛、解熱、鼻詰り・鼻水抑制
「眠気を催すことがあります。また、薬の作用が強く出ることがありますので、飲酒は控えてください」
あー、なるほど、眠いのはこれか。
それと、飲酒あかんのか。
そらそやな。
■ブルフェン錠
効能:鎮痛、炎症抑制、解熱
「発疹・かゆみ等の過敏症状、体のだるさ・むくみや、気になる症状が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい」
気だるさと足のむくみはこれか。
服用中止で医師に相談やてー?
■セルベックスカプセル
効能:胃の粘膜を保護
「発疹・かゆみ等の過敏症状が現れた時は服用を中止し、医師か薬剤師に相談して下さい」
「保護」と「反故」って同音やけど、意味が真逆やね。
反故されてんのと違うか。
■クラリス錠
効能:細菌による感染症を治療する抗生物質
「下痢、吐き気、食欲がない、味覚異常等が現れることがあります」
んー、実はどれもあるなー。
味覚異常は自分では気付かんな、しかし。
これでは何の為に服用してんのか分からなくなる。
(了)
何となく気管が痛み微熱も続くので診てもらった病院帰りというのに、電車を乗り継いで新宿三丁目まで来てしまっている。
ワインダイニングという。
カウンター上には、ハモンセラーノがまるまる置かれている様子。
生ビールから始め、銘柄は失念したが、ボルドーの赤いのを頼んだりする。
■オリーヴ2種、豚肉のリエット
突き出しの2点。
リエットとは、煮た肉をほぐして保存用に固めたもの。
バゲットに乗せたりすると、たいへんワインと合うのだが、ここでは出てこない。
■炙り鰆のカルパッチョ
身厚な切り身とルッコラが重なり合う。
ドレッシングがよい感じ。
■焼きたて丸ごとそら豆
種子島産という。
莢は熱くないが、空豆自体が劇的に熱い。
■おぼろ豆腐
豆乳ににがりを入れて作り立てを運んで来るのだが、にがり成分が強過ぎて、文字通りに苦い。
器も温かく、すりおろした生姜で頂く。
■黒トリュフとベーコンのファルシ
意外と冷製。
緑色の粒が何だったか失念。
ファルシとは、詰め物の意。
■飯蛸のゴルゴンゾーラ煮
バゲットで頂く。
も少し蛸が欲しいところだ。
もう一本、赤いのを飲んだが、やはり銘柄は失念。
四時間弱も長居したんで、山手線で帰ります。
(了)
つらい食生活という話題でもなかったが、男、小学生時代の給食様式を語る。
「とにかくパン食だったね」
ごはんは?
「基本的に無い」
えー? 交互じゃないんですか?
「イベントっていうか、行事がある時に赤飯が出るくらい」
白いのも無し?
「無いよ」
先代が何かやらかしたんですかね?
「そういう疑問すら持たなかった」
ある意味、情報が完全に遮断されてますからね、あの頃は。ひとつの閉ざされた世界だし。
「そう、宗教みたいな感じ。ロールパンとコッペパンの毎日だった」
何だろう、実験校だったんですかね。
「分からん。とにかく、パンをね、こう少しずつちぎってはスープみたいなのに付けて食べてた、陰気な感じで」
そこだけは、なんとなく、お洒落。
(了)
港区元赤坂てぇいいますと、迎賓館なんてぇ大層な建造物がありましてな、現在は工事中でして、無粋な外観を晒してますがねぇ、付近一帯は桜の名所ってぇことで、多くのひとびとが訪れますな。
場所取りてぇことで、十一時なんてぇ早い時間に向かいましてねぇ、寝袋なんてぇのを持参するってぇと、桜の下で寝転んでみますな。
横になり青い空を眺めてますと、微風がそよそよと枝を花弁を揺らしますねぇ。
木洩れ日
走れ! 松本! (誰?)
そんな枝っぷり
ここで告白しときますってぇと、三日後に故郷へ帰るという二十代後半のはげ散らかした若い衆より求婚されましてねぇ、地元じゃぁ名士かも分かりませんが、その扱いてぇ言いますか、求婚される順序ってぇのが、「鳩」の次ってぇのが気になりますな。
鳩に手痛く振られたってぇ理由で男へ走るってぇのも、春ならではの風物詩ってぇ言うんですかねぇ。
(了)
善福寺池ってぇと、西荻窪の駅からずいぶんと歩きますがねぇ、古の昔より武蔵野台地からの湧水として知られてますな。
東京がまだ江戸と呼ばれてたてぇ頃は、近郷近在の農村にとって大変貴重な水源だったってぇはなしを聞きますねぇ。
善福寺ってぇ寺院がかつて池の畔にあったんですがねぇ、ずいぶんと前に廃寺となってしまいましてねぇ、ここから注意してご拝聴頂きたいですがねぇ、近所にやはり「善福寺」ってぇ名の寺が今でもあるにはあるんですがねぇ、元は「福寿庵」ってぇ名で呼ばれてましてな、後んなってから土地の名を頂いて改名したってぇいう経緯でしてねぇ、当池の名称ルーツではないてぇ、複雑な関係ですな。
場所取りの為に池のほとりで陣を構えますな
12時、15時、18時と集合時間を追う毎にひとは増えてゆきますねぇ
向かいの陣では芸妓さんなんてぇ呼んで、三味線で粋曲なんてぇ弾かせてらっしゃいますな。
齢の層が高目ってぇことで、三味の音色に誘われるってぇと、足を止める人々もちらほらといましてねぇ、桜の木の下でちんとんしゃんなんてぇ、粋ですねぇ。
「枠」じゃぁござんせんよ、「粋」でげしょ。
結果24時まで
明日も別件で花見があるってぇことで、重い腰なんてぇのを持ち上げるてぇと、ふらーりふらりと引き上げましょか。
(了)
『ルノワール+ルノワール展』帰りという父と会う。
はー、画家の父と? 映画監督の息子が? へー、ふたりの巨匠が? 二代競演?
てぇしたもんですねぇ、で、何処で? 渋谷? 道玄坂? あー、はいはい、Bunkamura?
すぐそこじゃぁねぇですかい、歩いて? はー、それはそれは、とおよそ親子らしくない会話が続き、品が幾つか運ばれてきますな。
■子持ち槍烏賊(ヤリイカ)焼き
秋から晩秋にかけて出回るといいましてねぇ、スルメイカを「夏烏賊」ってぇ名で呼ぶのに対し、本種は「冬烏賊」ってぇ通り名がありますな。
子ががっつり詰まってましてねぇ、食感がよいですな。
■真子鰈(マコガレイ)の造り
関東では「霜月鰈」なんてぇ呼ばれてましてねぇ、十一月頃に東北で獲れたものを極上品とするってぇと、冬場を旬としてますな。
これは、えんがわ付きですな。
地元、越中じゃぁ、ウソ、クチボソ、タバコアサバなんてぇ通り名が幾つかありましてねぇ、よく知りもしませんが、ウソってぇのは「草鞋(わらじ)」のことで、クチボソってぇのは文字通り「口細」、タバコアサバってぇのは、「煙草の香」に似ているということらしいですがねぇ、何だか蛇足でしたかねぇ。
ちなみにアサバってぇのは、鰈の異称ってぇはなしですな。
■栃尾の油揚げ
既に亡き市町村となっている、新潟県栃尾市(現・長岡市)産の油揚げ。
地元らしく呼ぶってぇと、「あぶらげ」になりますな。
■白魚(シロウオ)の筏焼き
シラウオってぇ魚もいますな。
前者が骸の状態で市場に出回るのに対しましてな、こちらは春が旬のハゼ科の種でして、踊り食いなんてぇのを試せる食材でしてねぇ、なかなかあり付けたりはしませんがねぇ。
今回は筏状に焼いて頂いたってぇ計らいでねぇ、意外と歯ごたえがありますな。
燗した白鳥を八合ほどやっつけて、次の店へと移動しますな。
(了)
前日の痛飲が祟り、数時間の記憶が無いことに気付く。
かつて韓国料理店で韓国焼酎を韓国式に飲んでて植え込みで寝てしまった以来の喪失具合だ。
が、意外と飲んだ酒類は記憶しているので、備忘録として列記する。
■ネダバーグ・カベルネ・ソーヴィニヨン
アフリカ産の赤。
やたら「美味しい」と連呼していたが、二本目は在庫に無く賞味は一本きり。
店側にボトルのラベルを要求すると、高級店ではボトルから丁寧にラベルを剥がした上でクリアケースに入れてくれるらしいが、当店従業員からは輸入元が貼った日本語表記のシールのみを手渡される。
ようやってくれてはるとは思うが、ダイニングバーの限界を知る。
■ネダバーグ・シャルドネ
アフリカ産の白。
たった2本飲んだだけで、「アフリカ産は間違いない」との結論に。
しかし、これも二本目は無く、一本きり。
■ヴィダ・オーガニカ・カベルネ・ソーヴィニヨン
アルゼンティン産の赤。
どうしてもアフリカと比べてしまう。
次点を与えてはみるが、やはりアフリカが恋しい。
■ガンディア・マルケス・デ・トゥーリア
スペイン産の赤。
何でヨーロッパ? はあ?
扱いの軽さに耐えられないといった感。
もののあはれ。
■イル・ヴィグナーレ・ソアーヴェ・クラッシコ
イタリア産の白。
もはやアフリカなくしてワインは語れない勢いになっている。
味なんて知らん。
しかしよう飲んだな。
まあ泥酔してたってわけでもないし、歩いて帰ったし。
失って困る記憶なんて無いと知る。
(了)
苺狩りてぇ言いますと、野に群れる野性のそれを囲んで追い込み、逃げ惑うそれを猟銃で仕留めるのかと思えばそうではなく、わりとメルヘンな感じで口の周りを血だらけ・・・いやいやいや真っ赤に染めながら、「持ち帰り禁止」の札なんてぇのを蹴倒しながらも現地で喰らい尽くすってのが王道ってなもんですな。
まあもっとも、苺自体は持って帰れないってぇ決め事なんで致し方無いってぇもんでしてねぇ。
苺狩りで行った山梨の土産なんてぇのをもらうってぇと、
「これ、おみやげ」
ありがとう。あ、これは、敷居高ぇー。
「何で?」
もらっといてあれだけど、俺さ、これ腐らせたことある。
「えー? ひどくない?」
そう言われても何も言い返せないんですけどね。えーと、今月十日までって書いてある。
「8個入りだから一日ひとつでいけるんじゃん!」
よう喰えんわ。
「何?」
あ、いえ、あの、頑張ります。
「がんばる?」
いえ、おいしくいただきます。
土産の信玄餅を押し頂くってぇと、見せられた苺狩りについての冊子には、苺の品種が幾つか載ってますな。
どの名前を眺めても、AV女優の名前にしか見えないのは、性別:男だからですかねぇ。
以下の銘柄を想像力たくましくして、読み替えて頂きてぇもんですな。
あかねっ娘(ももいちご)
●出身:愛知県
●特徴:甘く桃の香り(酸味少ない)
愛ベリー
●出身:千葉県
●特徴:女王(酸味少ない)
あかしゃのみつこ
●出身:福岡県
●特徴:愛ベリーに替る高級さ(酸味少ない)
紅ほっぺ
●出身:静岡県
●特徴:程よい酸味・香り
アスカルビー
●出身:奈良県
●特徴:大柄でジューシー(酸味あり)
かなみひめ <新人>
●出身:愛知県
●特徴:韓国で人気がある(酸味少ない)
章姫
●出身:静岡県
●特徴:甘さたっぷり(酸味少ない)
サンエンジェル
●出身:イスラエル
●特徴:食感最高
イスラエルの方の特徴が「食感最高」ってところにぐっときますな。
それでもあたしゃねぇ、日本人がいいですねぇ。
(了)
風が強かったですな。
かぶりものをお召しの方には、大変つらい日だったと思いますねぇ。
目の前をいろんなものが転がってゆきますなぁ。
突風がびゅうと吹くと、すごい速さで黒いものが横切って、あ、黒猫かなと目で追うってぇと、頭部を両手で押さえた年配の方が大変な形相で、黒いカタマリを追い駆けてゆきますな。
必死ですなぁ、おとうさんもねぇ、幾らつぎ込んだ結果があれなんでしょうねぇ。
出勤前にああなるってぇと、職場における上司としての沽券に関わりますからねぇ。
まあ、部下にもばっればれで、かぶりものさんとか妖怪みたいな名前を頂戴するってぇと、陰で呼ばれてるんでしょうけど。
落語に『嘘つき二代』ってぇ演目がありまして、前半は『弥次郎』が北海道での出来事を一ミリの真実を交えずに語り、後半はその息子が『南極探検』での冒険譚を騙りってぇ内容ですな。
折角なんでこんな日に夜桜でも眺めながら、嘘つき噺なんてぇのを聴いてみるってぇ算段で歩きますな。
東雲(しののめ)
一斤染(いっこんぞめ)
桜鼠(さくらねず)
浅蘇芳(あかさすおう)
画像下の色名は出鱈目なんで、ゆめゆめ信じませぬよう、ひとつ宜しくお願い致します。
(了)