自宅でのBBQも会を重ねる毎に手際と道具は良くなってゆくのだが、未だ酒量が計れずに、今回は買い過ぎの様子。
さほど画像も無いんで、品の羅列で茶を濁すとしよう。
<ヤキモノ>
■鶏
■和牛
■チョリソー
■秋刀魚
■焼きそば
■じゃが芋
■南瓜
■玉葱
■ピーマン
<ナマモノ>
■シーザーサラダ
■ピレネー
■黄桃
<ノミモノ>
■ビール
■日本酒
■芋焼酎
■ワイン(赤・白)
■モッツァレラチーズバーガー
■フォアグラのリエット
夕刻、遠雷が見えたので室内へ撤収。
雨は降り出し、それぞれ解散となる。
(了)
追記:
当日参加された方、各地方産の食材を持ち寄って頂きまして、大変美味しゅう御座いました。
今シーズン、もう一回くらいできるかもしれません。
宜しくお願い致します。
えー、再び谷中・全生庵で御座います。
『第八回 特撰落語会 ~全生庵で聴く 林家正雀夏の怪談』
雲行きが怪しいってぇのに和装全開での参加なんてんで、空気読めないどころか天候すらもままならんもんで、後で激しい雷雨となるんですな。
三遊亭圓朝翁碑
全生庵本殿
畳敷き直座りの会場
開口一番■春風亭 一左 「金明竹」
一左(いっさ)兄さん、一朝師匠の四番弟子ってぇ云いますな。
「名前だけは、階級でいうと大佐なんですけどねぇ」
二ツ目■林家 彦丸 「粗忽の釘」
長屋から別の町への宿替えの為、箪笥を背負って歩き出したものの、さっぱりたどり着けず、漸く荷を運び入れた新居にて箒を掛ける瓦釘を壁に打ち抜いてしまい、向かいの長屋に謝罪に向かうってぇ粗忽さ全開のまま、隣家へ釘の先を見にゆくってぇと、阿弥陀像の喉を貫通しておりましてねぇ、自分の父親すらもかつての長屋に置き去りにしたと思い出し、そのそそっかしさを隣の住人より指摘されるんですな。
「酒を飲んだら我を忘れる」
真打■林家 正雀 「真景塁ヶ淵~深見新五郎」
当演目、通しで云いますってぇと、三席目にあたるそうですな。
地で語り、サゲ前は三味線が入り芝居調と相成ります。
ここでお中入りで御座いますな。
高座脇には和蝋燭
真打■林家 正雀 「累草紙~親不知(おやしらず)の場」
崖っぷちにて抜き身の刀を掴み、仮初の祝言を挙げた男に命乞いをする盲芸者の指がばらばらっと離れゆく様が痛々しく、物悲しくも身体ごと崖下の海へと落ちてゆくんですな。
意外と呆気なく終わり、「え? 終わり?」なんてんで、少しざわついた感がありましてねぇ、もう少し語りを聴きたかったなんてぇ思いましたな。
対談■林家 正雀、インタビュアー
正雀師匠、故・八代目正蔵(彦六)師匠のエピソードを語りましてねぇ、晩年の正蔵師匠と仲違いなさった数人の師匠連(五代目古今亭 今輔師匠、六代目三遊亭 圓生師匠)の声色がとても似てらっしゃって、あたしは大変愉しめるんですがねぇ、何も知らない方にとっては、知らない国の歴史を延々と聴かされているような微妙な時間だったんでしょうかねぇ。
踊り■林家 正雀 「奴さん」、「姐さん」
「じゃあ少し踊りましょうか」なんてんで、長澤あや姐さんの三味線が鳴りましてねぇ、正蔵師匠の声色で「はぁー、ごにゃごにゃ」なんてぇ合いの手を取る正雀師匠でしたな。
盥を引っ繰り返した如き雨中、車夫を呼んで根津に参ります。
(了)
足立区民、浦安にあるアミューズメントな施設の年パスを所持するという。
年パスて。
「年間パスポートですよ」
それ持ってる人と初めて喋った。
「最初、友達だけが持ってて、それに付き合って通ってたら、これは自分も持ってた方が得かなーと思って」
どれぐらいのペースで通ってるの?
「週イチですね、月イチで通えば元は取れますけれど」
通うねぇ。年パスはお幾ら万円かしら。
「四万と少しです、シー限定ですけど」
ランドにはゆけないんだ。
「そうです」
どうしてシーだけの年パスにしたの?
「お酒が飲めるから」
今日もこれから向かうという。
単に酒飲みに通ってる節もあるが、夢と魔法の国で毎週飲んだくれるのも悪くないとも思う。
(了)
すっかりテレビを観ない生活が続き、朝うっかりと傘を持たずに出掛けてしまい、出先で帰りには100%(ひゃくぱー)降られるなんて脅かされたので、脅す人から傘をもらい受けて往来を歩いていると、町名も変わるほど離れた寄り道をしてるのに、室内で用を済ましている合間合間に降ったらしく奇跡的に雨には当たらず、開かずじまいの傘を手にして歩くのが大嫌いなのにも関わらずそのまま帰宅し、気まぐれに洗濯を始めようと窓を開けた刹那、降り出すという、何か悪い行いをしたわけでもないのに、緩やかにする事成す事が上手くいかないのは、宇宙意志なんだろうと、全てを諦めるしかないのだった。
(了)
渋谷から銀座線に乗り、赤坂見附で降りる、十八時。
早い時間にゆかないと混むと聞いて、開店と同時に入る。
籐椅子に座り、とりあえずと生ビールを頼む。
本日は中国郷土酒菜館と銘打つ専門店へ。
北京五輪がいつ始まっていつ終わったのかも知らぬまま、「北京 Beijing」という響きだけで空腹感を思い出すことを忘れない。
同時に出される突き出し角型小皿に盛られて三点。
画像が無くて恐縮だが、左から鶏肉と蓮根と茄子の炒め、湯葉と搾菜と香菜の和え物、煎り豆。
■百家風鴨舌の炒め
ヴィジュアルは蟹の鋏の付け根に肉が付いた風に見えてややグロテスクなものの、からりと揚げられており、中はじゅうしぃで、最終的には長く伸びた二本の軟骨へゆき当たる。
口内に香り醤油が程よく漂い、酒が進む進む。
■烏魯木斉(ウルムチ)の羊串焼き
羊臭でいっぱいの四本串を塩、豆板醤、クミンシードをまぶして食す。
モンゴルな一品。
続けて、黄酒(紹興酒)の三種利き酒。
「一般的な紹興酒」と称して、普段我々がその辺の中華料理店で飲むとされる「その辺の紹興酒」を右端に置き、違いを比べろという。
■黄中皇(ファンジョンファン)十年
■孔巳乙(コンイージー)十二年
■東湖圣塔(トンフー)十年(この一杯だけ銘柄の記憶が曖昧)
風味、香りが違う気もするが、酒量が増えると利き酒もへったくれも無いが。
■川百鳴(季節野菜入りひな鶏の広東風薬膳スープ)
小顔菜な女子なら頭が入りそうな壺状の土鍋を三分の二程満たす薬膳スープ、鶏肉(腿、レバー、等)、筍、椎茸、冬瓜が白、当帰を含む種々の漢方で蒸し煮にされている。
壺を上から覗き込むと、濃ゆい白濁色から漂う漢方と生姜の香り。
丸く鶏卵風味の物体の正体が分からず、スタッフに尋ねると、
「言い方があれですけど、(声をひそめて)・・・睾丸です」
との回答。
「次の日、たいへんですよー」
と続け、小生には無駄に滋養あふるる一品。
金石交(ジンシジャオ)十年を陶器のボトルで頂いて飲み干す。
最後に八宝茶が出され、〆となる。
クコの実、陳皮、オリーヴ果肉、菊花が浮かび、そこには砂糖が沈む。
腸詰、田鰻、田鶏、酔蟹なんて他にも食べたいの品が多数あったのだが、少人数ではこれが限界と、次の店に移動します。
(了)
毘沙門天の向かい、料亭が立ち並ぶ石畳の路地ィ入るってぇと、火ィつけたらよく燃えそうな木造家屋がありましてねぇ、縄暖簾をくぐるってぇと、風鈴だけがBGMの非日常的空間があるんですな。
昭和12年創業
仄暗い店内の切り株な椅子に座るってぇと、頭の高さに菰樽が鎮座ましまし、囲炉裏の傍らには調度品のように佇むってぇ作務衣姿の店主が「燗にしますか?」なんてぇ、選択肢の無さを提示してくれてましてねぇ、幾ら涼しくなったとはいえ、初っ端から燗はあれでしょうと、冷やを頼みますな。
般若湯はってぇと、白鷹の上撰のみってんで、燗か冷やしか選べないんですな。
座ると黙って出てくるなんてぇ一汁四菜+αは以下の通りなんですな。
■枝豆 ・・・ 小さな笊に剥かれた豆が盛られる。
■玉子焼き ・・・ 甘さ控えめ。
■胡瓜の酢の物 ・・・ ポジション的には箸休め。
■磯海苔 ・・・ 歯ごたえに海月(くらげ)が入るという。
■豆腐と青菜の味噌汁 ・・・ 「もう帰れ」ってわけではない。
■乾燥納豆 ・・・ この塩加減だけで酒が飲める。
価格表示の無い品書きから頼んだ品は以下の通りなんですな。
■豆腐(冷奴) ・・・ 温奴もあるという。
■くさや ・・・ 風鈴が鳴り、風が通るとくさやも匂う。
どれも小鉢に小粋に盛られてましてねぇ、目でも愉しませるってぇ意図なんでしょうな。
四菜の但し書きが欲しい限りでしたねぇ。
つい漏れた笑い声がうっかりと響き、店主にたしなめられつつも白鷹を冷や、ぬる燗、熱燗で六合頂くってぇと、次の茶屋へと動きますな。
(了)
あいにくの雨の中、地下鉄を乗り継いで麻布十番へ。
三日間続いたこの祭、本日が最終日という。
喰い倒れよとばかりに国際バザール会場を徘徊。
■ガーナ
クローブ、シナモンのスパイスを用いたガーナ風炊き込みごはん、ジョロフライスから時計回りに、牛肉炒め、チキン腿肉のトマト煮込み。
ライス自体にさほど味は無く、牛と鶏と共に喰うべき。
■アルゼンチン
チョリパンとは、チョリソーをフランスパンで挟んだサンドイッチ的なファストフード。
中身のみを頂く。
炭火から立ち昇る白煙がやがて消防車を呼びそうな勢いで狼煙となる。
■スペイン
フィデワ fideua とはカタルーニャ語でパスタという。
つまり、パスタのパエリア。
並ぶのが面倒で食してませんが。
■中華人民共和国
画像は無いが、北京ダックと小龍包を。
安価なわりに、ダック皮はぱりっとしている。
さあ、これだけ喰うてもなお、串揚げ専門店に向かうのだ。
(了)
えー、気が付くってぇと、気候に限って云うともうすっかり秋なんてんで、蝉のやつらもすっかりなりを潜めちまいやしてねぇ、涼しいことこの上ないんですな。
朝方なんてぇ、肌寒いってんで、毛布なんてぇのに包まるんじゃァ飽き足らず、掛け布団も引っ張り出すってぇと、その重みが心持ちいいってんで、ぐだぐだしとりますな。
京から送られたおぼろ豆腐にばらばらっと刻み茗荷、刻み葱なんて放り込みやしてねぇ、ぽん酢でなんてぇ邪道なやつを掛け回すってぇと、少しササなんてぇ欲しくなり、ついぞ飲ってしましましてねぇ、ごろりと横になり手枕で雨音なんてぇ聞きますな。
外でも歩くかと蛇の目なんてぇ差しましてねぇ、そっくり返った安ィ下駄なんて突っ掛けますってぇと、霧雨が着流しに染み入って、これは少し重ぇんじゃァねぇかと悪口は尽きませんな。
で、向かった先が純豆腐(スンドゥブ)チゲ専門店ってんですからねぇ、結局何でもいいんでしょうな。
好い心持ちのまま、金王さんへ詣って帰りやしょうかねぇ。
(了)
イスラエル・ゴラン高原に醸造所があるという。
■Yarden Galilee Mount Hermon 2006 ヤルデン・マウント・ヘルモン(赤)2006
・・・まあ、こんなもんかと、意外と飲めるな、後半は甘くなってきたってんでボトルを飲み干す。
アルゼンチンもあるな、お、メンドーサって、ホセじゃん、ヴェネズエラの大将!ってんでヒゲのソムリエよりむしり取るようにボトルを奪う。
■Pascual Toso Malbec Reserve 2005 パスカル・トソ(赤)2005
!
さすが、メンドーサ、何と豊かな味わい、なんて感動していたら、三杯目以降がさっぱり進まなく、メルシャンみてぇな味に変わってゆく。
ただの飲んだくれで、量を頂くと共に舌が駄目になってるのかもしれないが、ゴランとメンドーサだったら、後者に賞杯を授けよう。
(了)
目覚めるとソファーの上。
背中の左側がひどく痛む。
ネガティヴな想像しか浮かばないので、忘れようと懸命に励む。
朝、薩摩芋の味噌汁を飲んでも痛い。
昼、ビーフカレーを食べても痛い。
夕、豆腐と干し納豆を抓まんでも痛ぇ。
どうにもならんので外出。
一軒目、烏賊の塩辛、秋刀魚刺し、明太子を食べながら冷やを煽ってると幾らか和らいできたようだ。
ていうか、忘れた。
二軒目、植民地テイスト全開なラベルのラムを飲んでると、忘れられるようだ。
ていうか、忘れた。
三軒目、釜玉饂飩~♪(鼻唄)。
もう大丈夫、と帰宅して安らかに気絶。
(了)
渋谷駅東横線改札前、たいへんな人だかりとロープを張った警察官が数人。
すわ事件かと思いきや、発射時刻を伝える電光掲示板の上に小動物が這い回っている様子。
携帯電話に搭載されているカメラで写真を撮る連中が改札を塞いでいる為、ぐったりする渋滞が続く。
うきーっとなるのを抑え、穏やかな手付きで奴らを押し退け、時にはソフトな体当たりを駆使して改札を抜ける。
日本て平和なんだなと思う。
(了)
追記:
その後、猿は原宿方面に逃走したという。
なるほど、食糧には事欠かんな。
出向先にて、上長より「お話があります」と喫茶室に連れてゆかれる。
なななななんでしょうか、うちには八十になる老いたははははは母親と、十をかしらに四人のここここここ子どもがおりまして、あたしがいないと釜の蓋があかあか開かないことになっておりまして、後生ですからごごごご後生ですから、ご慈悲にお情けにすがすがすがりたく存じ・・・。
「いや、そういう話じゃないです」
実は今期(九月三十日まで)で中目黒を撤退という。
「半年前から決まってたんですけどね、私の方から伝えるのはどうかと思いまして黙ってましたが、事務所からは何も聞いてないですか?」
ふるふるふると首を横に振るしかない。
「まあそういうことなんで、いずれ正式に通達があると思いますが」
寝耳に水なんですが。
「よく拭いといてください、放っとくとあれですから」
よく分からない慰められ方をされ、解散。
中目黒から撤退は仕方ないとしても、次の出向先が遠方でないことを祈りたい。
(了)
(自分的に)楽日で御座います。
『上野鈴本演芸場 當ル八月中席
第十九回 納涼名人会~鈴本夏まつり~
夜の部 吉例夏夜噺 さん喬・権太楼 特選集』
開口一番■柳家 喬之助 「初天神」
蜜を舐めきった団子だけの串を壺に父親がちゃぽんと付けて終了。
太神楽曲芸■鏡味 仙三郎社中
弟子が回す傘上の鉄輪は先端に入らず、仙三郎師匠、土瓶を当たり棒より落下させるんですな。
客は其の親心から楽屋における師匠からの小言を心配するんですねぇ。
落語■柳亭 市馬 「普段の袴」
市馬師匠、指を引っ掛けてくるっと回す羽織紐の解き方が粋ですな。
上野広小路、御成街道沿いにある骨董屋を羽織袴姿の侍が訪れますってぇと、墓参の帰りに供とはぐれたなんてぇ申しまして店先に腰掛けてましてねぇ、床の間にある鶴の絵を文晁(ぶんちょう)であろうと褒めつつ、煙管で一服するってぇと、火玉は袴の上へ落ちるんですな。
「お武家様、お袴が焦げております」
「これはいささか、普段の袴だ。気にせんでもよい」
これを粋と見た八五郎、長屋の大家に袴を借りるってぇと、印半纏に袴なんてぇ不審にも程があるってぇくらいの格好にて件の骨董屋へ向かい、侍気取りで煙管を持つってぇと、煙草入れを開けても葉も無いってんで、袖にあった布屑を吸い吸い、どうにか火玉を袴に落としたいんですがねぇ、勢い余って頭上に飛ぶんですな。
「こ、これはいささか、普段の・・・頭だ」
漫才■ロケット団(倉本 剛・三浦 昌朗)
山形弁での曲解は素晴らしいですな。
落語■柳亭 左龍 「お菊の皿」
「何で十八枚も数えやがるッてんだ」
「明日休むんだよ」
落語■春風亭 一朝 「宗論」
「あたしンところは代々隠れ切り支丹です」
奇術■ダーク宏和
ちょいとはばかりに。
廊下まで「お岩」なんてぇ聞こえましたがねぇ、内容は分かりませんな。
落語■柳家 喬太郎 「(演目不明)」
客の反応を窺い窺う喬太郎師匠、「作戦変更だ」と半ばキレ気味に羽織を投げ捨てましてねぇ、予定してたってぇ「粗忽長屋」を止めるってぇと、
「昨日も来てた客は同じで悪いけど、自分らの責任だからな。・・・言い過ぎました、すみません」
なんてぇと、座布団ごと後ろに転がるんですな。
落語大学に入学した男が先輩を訪ね、学園内を案内されるんですがねぇ、基本的な落語の演目、噺家の名前を知らないとさっぱり分からないってぇ、素人置き去りの綱渡り芸で、あたしにはたいへん面白いんですがねぇ、諸刃の剣なんでしょうかねぇ。
お仲入りで御座います。
漫才■昭和のいる・こいる
「お前向こう(客席)行けよ」
「嫌だよ、金払わなきゃならねぇじゃねぇか」
夏夜噺①■柳家 権太楼 「疝気の虫」
悋気は女の慎むところ、疝気は男の苦しむところなんてぇ申しまして、ここで云いますってぇところの疝気なんてぇのは、殿方における下の病全般を指すんですな。
天井から降りてきたってぇ虫を火箸でつまんでみるってぇと、これが「苦しいんですけど!」と涙ながらに医師に訴えるんですな。
火箸を持つ医師は拷問にて疝気の虫から特性を聞き出すってぇと、急患の治療に好物の蕎麦と天敵の唐辛子水を用い、旦那の中の疝気の虫を女房の中へ誘い込みましてねぇ、疝気の虫が「別荘」と呼ぶ避難所、女房には無い器官へ逃げ込もうと下へ下へと向かうんですがねぇ、ついぞたどり着かないんですな。
紙切り■林家 正楽
定番通りに「相合傘」から始まり、「東京タワー」、「大文字焼き」、「夕涼み」なんてぇ切り抜きましてねぇ、これで終わりかと思いきや、最後に「秋刀魚」で〆るんですな。
「秋刀魚」は寄席らしく、「目黒の秋刀魚」における野駆け中に秋刀魚を召し上がる大名でしたな。
夏夜噺②■柳家さん喬 「柳田格之進」
娘みつからの薦めで碁会所に向かった格之進、萬屋 源兵衛と出会うってぇと時期を待たず、互いに生涯の碁敵と認め、萬屋の離れで一番二番と囲むついでに相伴に預かるってぇ運びになりますな。
十五夜の月見の折、萬屋にて五十両が紛失するってぇと、もしやの可能性と源兵衛への忠義から、番頭・徳兵衛は格之進を訪ね、奉行所への届けを示唆しますってぇと、格之進は用立てすると答えますな。
「盗っておらんものは必ず後で出てくる。それが出てきた時、そなたはどうする」
「こんな首ですがねぇ、柳田様に呉れてやりやしょう。ひとつじゃ寂しいでしょうから、主、源兵衛の首と一緒に」
みつは自ら吉原に沈むってぇと、拵えられた五十両は徳兵衛の手に渡り、格之進は退転しまして、時節が流れますってぇと、歳暮れの煤払いの際、額の裏より五十両は発見されましてねぇ、方々探した挙句、格之進と対面を果たし、徳兵衛は委細を告げますな。
「・・・約束通り、首を洗って待っていろ」
萬屋にて互いを庇い合う、源兵衛・徳兵衛の主従を斬れず格之進、碁盤を一刀両断にして全てを許すってぇと、身請けしたものの吉原の暮らしで放心となった娘みつと徳兵衛を娶わせ、生まれた嫡男に柳田の家督を継がせるってぇはなしなんですな。
この噺の不条理な部分ってぇのは、娘みつだけがフィジカルにもメンタルにもダメージを負ってるってぇのに、他三名(格之進、源兵衛、徳兵衛)がへらへらほんと日々を過ごしてるってぇところなんですな。
そうは申しましても泣き所はってぇと、つまらぬ忠義より格之進に五十両を求める徳兵衛の行為を一喝する源兵衛が泣き崩れるくだりと、徳兵衛を庇う為に白紙の文を急ぎ届けさせようとする源兵衛でしょうかねぇ。
肉を焼かない焼肉店に向かおうってんで、リトルコリアに向かいましょうかねぇ。
(了)
二日目、皇居の目前、最高裁判所隣、三宅坂におわしますってぇ国立劇場での独演会で御座います。
左は東京FM(たぶん)
『志の輔らくご ひとり大劇場』
大劇場、回り舞台
志の輔一席目■生まれ変わり
生まれ変わりチャートに三つのチェックしか入れられないんですがねぇ、担当者が冷やし中華目当てに席を外したってんで訂正かなわず、
「じっとしている仕事」、「酒が好き」、「おしゃべり」、
これらが適用されるってぇと、
「1954年2月15日、富山県新湊市生まれ、本名、竹内 照雄(たけうち てるお)、芸名、立川 志の輔」
となって生まれ変わるんですな。
志の輔二席目■三方一両損
膳部を囲みつつ、奉行、大岡越前守忠相(ただすけ)を前にするてぇと、
「多か(大岡)喰わねぇ」
「たった一膳(越前)」
とサゲるはずが、奉行より「何が面白いのだ」と返されるんですな。
緞帳が下りてお仲入りで御座います
志の輔三席目■中村仲蔵
四代目市川 団十郎より名題に引き立てられる前の仲蔵エピソードに挿話される「鎌髭」。
粗く筋を述べるってぇと、鍛冶屋四郎兵衛、実は源氏方、三保 谷四郎(みほのやしろう)が六十六部(廻国修行者)快哲(かいてつ)、実は平 将門が遺児、景清の首を狩ろうってんで、髭剃りと称して鎌を首に当てるんですがねぇ、景清は不死身ってんでさっぱり切れないんですな。
で、「何で切れねぇ」ってぇ谷四郎役である仲蔵の顔が客に受けてるってぇはなしでしたな。
「仮名手本忠臣蔵 五段目」、家老の倅というポジションでありながら、舞台上での形で不遇だったという斧 定九郎を期せずしてスターダムにしてしまったってぇ、栄屋仲蔵の尽力と、パトロンでもある成田屋団十郎の賭けにも似た想いが、この実録談を彩るんですな。
七十分もある芝居噺を歌舞伎専用の大劇場なんてぇ箱で、花道に灯りを点し、鳴り物入りで演るってぇスタンスに、吐く気焔を感じましたな。
三宅坂を後にして、麹町辺りで四川料理なんてぇ突付きましょうかねぇ。
(了)
お暑ぃ日が続きますな。
細けぇこたァ申しません、本日より連日噺家の話しか致しませんので、ご容赦願っておくので御座います。
まずは初日で御座います。
『上野鈴本演芸場 當ル八月中席
第十九回 納涼名人会~鈴本夏まつり~
昼の部 爆笑暑中見舞い 三遊亭 圓歌 連日熱演仕り候』
開口一番■三遊亭 歌五 「子褒め」
「若いってぇ、幾つに見えるってんだ」
「どう見てもただ」
マジック■花島 世津子
「え? ダイヤの12? ってことは(自分の顔を間から覗かせて)クィーン」
落語■三遊亭 多歌介 「浪曲社長」
圓歌師匠原作でしょうかねぇ、浪曲師、廣澤 虎造の声色でしたな。
漫才■ホームラン(糸繰りニューマリオネット 伊原 寛・千寿子:代演)
立ち位置右側の方が三波 伸介師匠の元付き人ってんで、当時ビートたけし師匠の付き人のそのまんま東こと東国原 英夫知事と同期だったってぇはなしなんですな。
落語■三遊亭 若圓歌 「(漫談)」
高校野球歴代優勝校、日本ダービー歴代優勝馬、歴代横綱、歴代行司を第一回、初代からつらつらと並べるってぇ芸風でしてねぇ、両手を斜め前に広げるってぇと、教祖的な手振りで家内安全を謳うんですな。
落語■柳家はん治 「ぼやき居酒屋」
「昔の唄はよかったねぇ。それに比べて何だ、最近の唄は。・・・ミニモニ。ジャンケンぴょんて・・・。じーぶーんーのーちーかーらーでーゆくのだぴょーん」
はん治師匠、それ最近の唄じゃァねぇでげす。
三味線漫談■三遊亭 小円歌
「猫じゃ猫じゃ」から始まるってぇと、古今亭 志ん生師匠の出囃子だった「一丁入り」、林家 三平師匠の「祭囃子」、師匠圓歌の「三下がり」と続きましてねぇ、一度生音で聴きたかったってぇ念願の「両国風景」を演ってくれましたな。
落語■橘家 文左衛門 「寄合酒」
乾物屋の災厄を並べますってぇと、「干鱈」、「数の子」、「鰹節」、「味噌」となりましてねぇ、魚屋は「鯛」をやられ、サゲは文左衛門師匠らしく「犬」を喰うってんですな。
太神楽曲芸■翁家 和楽社中
ちょいとはばかりに。
落語■三遊亭 歌之介 「爆笑龍馬伝」
歌之介師匠、未だ滋賀が生んだ最短任期総理、宇野せんせぇのエピソードを今に伝えますな。
お仲入りで御座います。
漫才■あした ひろし・順子
師匠ら、「マツケンサンバ」で踊りながらの登場で御座います。
前回と全く同じ内容で愉しませて頂きました。
落語■鈴々舎 馬風 「(漫談)」
先代林家 三平師匠との思い出漫談でしたな。
落語■古今亭 志ん輔 「相撲風景」
多くは説明しやせんがねぇ、サゲは「生一本、雁の露」なんてぇ、下根多な上にスカト○寸前なんですな。
ものまね■江戸家 小猫
以下は師匠の演目。
鶏・・・手足の振りでニワトリの気持ちを高めてゆくんですな。
鶯・・・台湾では「ニーホェチェ」なんてぇ啼きますがねぇ、現地語では「早く帰れ、この野郎」ぐれぇの悪口(あっこう)なんですな。
オオルリ・・・「ふーん」ってぇ感想ですな。
ライオン・・・「なるほど」ってぇ感じですな。
蚯蚓(みみず)・・・「チ」とか啼くらしいんですな。
フクロテナガザル・・・「ホ」がたくさんで雰囲気出てるんですな。
恐竜・・・答えが無いってぇのが、小ずるいってんですかねぇ。
トリ■三遊亭 圓歌 「中沢家の人々」
陛下を始めとした宮中の方々で演じる落語、いわゆる御前高座を初めて行ったってぇのが、圓歌師匠。
後に三遊亭 圓生師匠、人間国宝・柳家 小さん師匠も続いたってんですがねぇ、全員の感想が、
「二度と演りたくねぇ」ってぇのがたいへん素直でよろしいと思いますな。
追い出しが鳴るってぇと、外へ出ましてィ、遅い昼餉に向かうんですな。
鰻割烹なんてぇ店で冷やを四合ばかり。
腹ごなしに不忍池を巡るってぇと、辨天堂へたどり着きましてねぇ、次の茶屋に向かいましょうかねぇ。
(了)
日中、冷てェ蕎麦でも手繰ろうってんで暖簾をくぐるってぇと、よく日に焼けた娘っ子が出迎えてぇくれるんですな。
「イラシャイマセェ」
日本蕎麦と銘打つからにはも少し何とかしァがれッ、なんてぇ野暮天では御座ンせんが、築地に鮨喰ィ行ったら板前がターバン巻いた印度人だったぐらいの違和感がありますな。
「冷や」なんてぇ微妙な表現が通じるわけも無いってんで、生麦酒を頼みましてねぇ、柚子切り蕎麦を一枚手繰るんですな。
ねえさん、あと、蕎麦味噌ひっとつ頼まァ。
「トソバミ?」
いやいやねえさん、間の蕎麦しか合ってねぇし。これよ、これ。
「カシ。コマリマシター」
いや、そこで切ると意味が違ってくるってんだィ。
グーローバーリーゼーショーン。
(了)
あついいちにちでした。
ひるにとしょかんにゆきました。
しぶやくとめぐろくをはしごします。
あせがたきのようにながれます。
ひげものびほうだいなうえに、たおるをくびにまいているので、
これでてぃーしゃつのそでのらいんでくっきりとひやけすると、
まるでにくたいろうどうしゃです。
よるはおいしいものでもたべようかなと、
ゆでたんでゆうめいなみせにゆきました。
・・・。
ぼんやすみのため、じゅうななにちまでおやすみみたいです。
はたらけよ。
それでも、べつのみせでおいしいまっしゅぽてと、
おいしいいいだこのかるいにこみと、
おいしいふぇっとちーにをいただきました。
そして、かえりにどすぐろいいろのちょうづめをおみやげにもらいました。
だれかのひふのいろににているなとおもい、
れいぞうこにとじこめるのでした。
(おわり)
夜、恵比寿へと向かう。
紀州備長炭、フランス産三ツ星塩、スパルター豚使用と謳う炭焼専門店へ。
まずは生と注文。
従業員の切羽詰った感満載な動きが気になる。
■つくね
塩が売りのはずが、問答無用でたれが掛かっている様子。
軟骨か何かの食感は良いとしても、何か釈然としない感じ。
■ゆずささみ
表面に柚子胡椒が塗られている。
なるほど、表記通りだ。
■黒豚ロース
スパルター豚が黒いのかは不明だが、これは塩で焼かれた様子。
スパルターのメニューはいずこなりや。
実はスパルター豚は品種ではなく、水活性化装置スパルターLの生み出す水で飼育されたという意味合いでしかないという。
ふーん。
黒糖焼酎「昇龍」をロックで頂く。
従業員、隣席のリーマンの食す煮込みの鉢を下げようか残すか迷いつつも手を出し、「それはまだ」とたしなめられて一度去り、再度カウンターに現れて下げようと手を伸ばし、「あそうか」と、もう既に空になった器を残し、ひとり合点して去ってゆく。
そして、この動作を何度も繰り返す。
当初は面白がって見ていたが、時間の経過と共に大人な姿勢ではいられなくなり、穏やかな気持ちではいられない。
厨房を覗くと、その従業員とよく似た顔の夫婦が客の注文に応じている様子。
親子かー。
じゃあ、仕方ねぇ、なんて。
河岸を替えようと、中目黒へ向かいます。
(了)
久方振りにクライミングジムへと向かう。
本年度初の壁登り。
右足小指を負傷していて、クライミングシューズを脱ぎ履きする度に激痛が走る。
故に早々にリタイア。
続きまして、淫蕩な飲んだくれツアーへ。
一軒目、餃子専門店。
焼と水な餃子らを幾つかの小品と共に生ビールで流し込む。
二軒目、本年度初のビリヤード。
エイトボールと共にドス・エキス。
三軒目、本年度初のダーツ。
ヒドゥン・クリケットと共にジャック・ダニエル。
四軒目、台湾料理店。
腸詰、皮蚕豆腐、隠元肉絲、牛アキレス腱炒め、湯麺、塩五目炒麺と共に紹興酒。
江戸川橋から新宿御苑経由で歌舞伎町なんて、親不孝なルートでの会合。
クライミングに行ったはずが四軒梯子泥酔という不思議展開に。
まあ、たまの休みですからねぇ。
(了)
前日の奥多摩、数人の犠牲者が出たんですがねぇ、自分だけは無事に帰還するってぇと、其の脚で谷中へ直行しますな。
『圓朝まつり 2008』で御座います。
会の趣旨を説明しますってぇと、江戸落語中興の祖なんてぇ謂われております三遊亭 圓朝師匠の命日が八月十一日にあるってんで、墓所である全生庵での圓朝忌なんてぇ法要に由来しますな。
奉納落語なんてぇ称しまして代表の噺家がひとり前に出るってぇと、列席する皆様に背を向け、本堂におわします御本尊と圓朝師匠に対して一席演るわけですな。
谷中 全生庵
16:30 本堂前 黒門亭落語クイズ王チャンピオン大会
遠く境内に、散髪し立ての柳家 小ゑん師匠が見えますな。
境内を徘徊しますってぇと、柳家 喬太郎師匠がぼんやりと佇んでましてねぇ、頭に手拭いを載せるってぇと、「もう帰りたい」なんてぇ顔を全面にさらけ出してるんですな。
本堂への石段を上がり、境内を見下ろします
16:50 本堂前 ゴミ隊パフォーマンス③ 玄人のど自慢~ご存じ「加賀の女(ひと)」
演歌界の大御所、北島 三郎先生の持ち歌、『加賀の女』に乗せて、芸人らが「か・な・ざ・わ・の~」という箇所でのみ踊り狂うんですな。
いちばん手前に、本会実行委員長である春風亭 正朝師匠が見えますな。
同時刻 本堂前 グランドフィナーレ 高座舞
揃いの浴衣の紋様が「たぬき」ってんで、愛らしいんですな。
17:15 本堂前 打ち出し(終了)
マイクを握り挨拶をする春風亭 正朝師匠の左隣にカメラを首から提げた柳家 小袁治師匠が見えますな。
会の終了後、小袁治師匠に「撮影係ですか?」なんてぇ尋ねたら、「いえ、広報担当です」なんてぇ返されましてねぇ、あたしの云い様が悪かったんですかねぇ。
参加者をナンパする芸人らを横目で眺め、河岸を替えるってんで台東区を離れますな。
(了)
嘴の太い黒く邪悪な奴らがぎゃあぎゃあと啼き出す頃合いに目を覚まし、持参品の最終点検を。
若干の余裕を持って自宅を後にする。
前日より予約していたレンタカー営業所へ向かうも、そこは更地。
かつて「わ」ナンバーのカーどもを囲っていたはずの駐車場はそこに無い。
・・・もうくじけそうです。
番号案内を呼び出し営業所の番号を尋ね、連絡してみると「二年前に移転」との回答。
現在の所在地は、「C.C.Lemonホールの地下にある」という。
何が?
「ええ、ですから、元渋谷公会堂ですね」
・・・ネーミングライツ(施設命名権)行使の良くない結果に違いない。
無事にあれしたトヨタ・カローラフィールダーに乗り、まずは自宅へと引き返し、クーラーボックス、ポリタンク、ディレクターズチェアー、シュラフ、マット、等の大物を積み込み、知人宅へと急ぐ。
現時点で集合時間十五分前という、計画性の無さがあっさりと露見しつつもおよそ七名と合流し、三十分遅れで出発。
奥多摩に到着。
で、幾つかのキャンプ地にて拒絶され、三軒目に受け入れられる。
轟々と多摩川
吊橋と多摩川
岩と多摩川
設営に憔悴しきった我々は昼に素麺と蕎麦と定め、つるつるつるつると細く長い縁起物を手繰る。
何もしない時間が過ぎてゆく。
西瓜と多摩川
少し翳ってきた多摩川
薪は燃えやすく強火だが、あっさりと燃え尽きる
夜はBBQ。
前日より仕込まれた豚や鶏、イースト菌で膨らんだパン生地、買い出した肉野菜を鉄板と網にて原始的に焼き、見たこともない大陸産の酒で流し込む。
聞けば、愛宕山山頂より花火が打ち上がるという。
期せずして、『第31回奥多摩納涼花火大会』開催の日。
付近にある奥氷川神社より祭囃子が微かに聞こえ、祭テイストも加速度的に加味される。
「玉やだと又 またぬかすわと 鍵や云ひ」
玉屋、実は1843(天保十四)年に火の不始末にて処払いを命じられ、一代限りで断絶したという
気が付くと、ディレクターズチェア上で真っ白に燃え尽きている様子。
腕時計すら腕に無く、時刻も分からない。
夜半は寒かろうと一枚重ね着て、寝袋に潜り込むのだった。
(了)
明日から奥多摩にゆくので、旅の準備を始める。
・・・。
さっぱりはかどらず、逃避から酒を飲み始める。
・・・。
意外と大物の準備が必要で、滝のような汗を流しながら運ぶ(予定)。
・・・。
もう、いいや、充分だよ、頑張ったよ、皆許してくれるよ、大人だもん。
ほんのひとさじの甘えと淡い恋心だけで生きています、三十四歳。
(了)
駅前にある高層建築、吹き抜けの広場より階下へと向かい奥へ進むってぇと、会場には通りを歩く誰よりも高年齢層の歴々で溢れております。
『第九十一回 中目黒寄席』で御座います。
開場待ちでぼんやり並んでますってぇと、本日の開口一番を予定しております、こみち姉さんが和装ではない洋装で前を通りますな。
身の丈五尺も満たなさそうな小柄な方でしてねぇ、黒いワンピース姿で御座いました。
中目黒落語会、通称「中落」
二ツ目■柳亭こみち 「浮かれの屑より」
「実はうちの師匠(燕路)がまだ到着しておりません。来ない間はつなぎとして高座で踊らせて頂きます」
実家より勘当された若旦那、奉公先を屑屋と定め屑選りを始めるんですがねぇ、紙屑の中に手紙や習い事の教本なんてぇあるんってんでさっぱり仕事になりませんな。
挙句、謡の真似事ってんで奇声を発して、主人に後ろから突っ込まれますな。
「気が違ってんじゃねぇぞ」
「紙を選り違えました」
七代目 柳亭 燕路
燕路師匠、何事も無かったかのように高座に上がりますな。
真打■柳亭 燕路 「火炎太鼓」
一両小判なんてぇ高額紙幣が束になってるのを初めて目にした道具屋主人のリアクションが嬉しい悲鳴として残響致します。
「半鐘は駄目だよ、おじゃんになる」
仲入り
二ツ目■柳亭こみち 「お菊の皿」
番町のトップアイドルと化した菊のふてぶてしさと設定の軽妙が、表看板を怪談とする行為さえ笑いに昇華するんですな。
「十八枚って何なんだ!」
「明日、休むんだよ」
燕路師匠は無事に間に合ったんですがねぇ、女流噺家の高座では恒例ってんで踊り「奴さん」をぐらぐらする高座で舞いますな。
姉さん、中に着たあれが見えてますってのよ。
真打■柳亭 燕路 「癇癪」
明治期の噺ってんで、車で自宅に乗り付ける描写から始まるんですな。
常に小言を発する旦那のふくれっ面、下唇を突き出したそのてかりが気になりましたな。
「わしは何に対して怒ったらいいんだ!」
遅い開始なんですがねぇ、串物をってんで般若湯と洒落込むんですな。
(了)
先の宿替えから数えるってぇともう二年にもなりますな。
かかずり合いの因業な家主(いえぬし)より更新なんてぇ親不孝な報せが届きましてねぇ、新たに宿替えするなんてぇ別天地の当ても無いってんで、仰せのままに致しますな。
隠居するにはまだまだ年月を要するンですがねぇ、時節柄、湯帷子(ゆかたびら)に夏帯なんてぇ締め、懐手してみるってぇと、日々の暮らしなんてぇ厄介な現実感は失われ、逃避的に背中は丸くなるんですな。
扇子と名入りの手拭いなんてぇのを袂に押し込んで、鼻緒に軽く爪先引っ掛けて桐下駄を履くってぇと、世間はまた違う色に見えてきますな。
此の地に二度目の夏が訪れるので御座います。
(了)
先度、仲買いの弥市の取り次ぎました道具七品、あれは祐乗(ゆうじょ)、光乗(こうじょ)、宗乗(そうじょ)三作の三所物(みところもん)、横谷宗珉小柄付きの脇差、中身は備前長船則光。
柄前は鉄刀木(たがやさん)やと仰せでござりましたが、ありゃ埋れ木やそうでござりますので、木ィが違うておりまっさかい、念の為ちゃっとお断り申し上げておきます。
並びに黄檗山金明竹寸胴切(おうばくざんきんめいちくずんどぎり)の花活、のうこうの茶碗、古池や蛙とびこむ水の音と申します風羅坊芭蕉正筆の掛け物、沢庵禅師の一行物に隠元、木庵、即非、隠木即貼りまぜの小屏風。
あの屏風はわてぇの旦那の檀那寺が兵庫におまして、兵庫の和尚のえらい好みまする屏風やによって、表具ィやって兵庫の坊主の屏風に致しましたと、かようにちゃっとお取り次ぎを願いたいので。
ほな、わて急きますよってに、さいならー。
(了)
最寄り駅の付近にある焼肉専門店脇の路地には常時数体の奴らがいる。
人馴れていうか、人に依存している彼らは油断と怠惰が生んだ想像の産物だ。
「あ、いつもごはんくれるひとだ」
「ちがった」
自由だ。
(了)
オードブル的な品が口に合えば合うほど、理性は働かなくなるがまま適度に小腹を満たしてしまい、メインにたどり着ついた頃にはどちらがメインなのか分からなくなることもしばしば。
海老のリエットと
豚のリエットを
バケットに乗せて
リエットとは、肉や魚介をバターや脂肪(ラード)と共に煮溶かしぺ一スト状にして器に詰めた冷製料理を指す。
このフレンチなる品を完食した後、餃子240個と対峙することになるのだが、それはまた別の話。
(了)
先週は北千住に浮気したんで、本妻の新宿三丁目に帰ってみる。
もっとも、色気づいた話ではなくただの喰い倒れなんで、他意は御座んせン。
既に一軒目で生ビールは済ませているんで、銘柄は失念したフランス産赤ワインを。
アテは以下の通り。
■突き出しハモンセラーノ、オリーヴ、ドライ無花果(いちじく)
■殻付きエスカルゴの香草バター焼きブルギニョン風
「これ国産?」
まさか、輸入でしょ。
「庭にいるよ、こういうの」
食べたらあかんて。
「こんなにおいしいのに」
殻の柄が明らかに違うと思う。
「生はいけるかな?」
物騒なこと言わないでください。
■じゃが芋とニョッキ
火傷しろって命令されてるみたいに熱い。
冷めるとチーズが固まるのは分かってるので、さくさくと食す。
スパムとニョッキの食感対比が嬉しい。
■魚介のアクアパッツァ
蛤、ホウボウ、えのき茸、トマト、玉葱が白ワイン、ブイヨンで煮込まれている。
意外と薄味で量的にはごっついのに箸休め的存在。
あっついプチパンと共に食す。
はいはいはい次に行きますよー、こちらですよーと引率の先生みたいな後ろ歩きで移動します。
(了)