晴天で御座ンす。
まだ一月、まだ正月きぶんってんで、初詣巡業は続くンでさァ。
山手通りを北へ、青梅通りを東に折れまして、旧名で云うところの柏木を目指しますな。
今で云う北新宿の辺りでしょうかねぇ。
中本一稲荷神社@中野区中央一丁目
通称で「高稲荷」なんてぇ呼ばれてますな。
「中野本町通り一丁目」ってんで、「中本一」とつづめてるなんてぇ云いますな。
実際の住所は「中央一丁目」で御座ンすが。
少ゥし新宿寄りに向かいます。
成子天神社@西新宿八丁目
成子坂の由来で御座ンすな。
そう云やァ、フォークダンスDE成子坂なんてぇ芸人がいましたな。
何をなすってるンでしょうかねぇ。
・・・調べてみると、一九九九年に解散してましたィ。
本殿
ご案内の通り、天神様ってんで、祭神はってぇと菅原道真公で御座ンす。
さァ、巡業も済ましたところで、百人町に移りまして、ハングルだらけの店で辛ェ鶏鍋( )でも突ッ付きながらキチゲェ水でも飲ったり取ったりしやしょうかねぇ。
(了)
海鮮チヂミ
目黒区と品川区に所用があり、もののついでと港区にある銭湯へゆく。
入口に風情あり
番台には番頭と小番頭(たぶん嫁)がいる。
紙幣で湯銭を払うと、番頭が釣り銭を手渡してくれる。
「お客さん、今日ね、男湯が露天風呂。運がいいですねぇ」
露天がありますか。
「昨日は女湯。入替制でねぇ」
そうなんですか。
「うちは二年連続で東京で第二位なの。この間も取材が来てねぇ」
へぇー。
「でもね、うちのオーナー、これが超感じ悪いの。あいつなぁ、どうにかならんかなぁ、ねぇ?」
・・・。
客の前で番台から経営者の陰口を云う人を初めて見た。
(了)
夜に訪れると、まあまあお一人様あたり樋口一葉先生ひとりからですかねぇ、という自宅近隣の中国家庭料理店、昼は野口英世先生ふたり弱くらい連れてゆけばがっつりといただけたはずと信じて入店。
◆冷菜三種(春菊、干し豆腐、じゃが芋)
◆マコモと桜海老の炒めもの
◆鶏肉の豆鼓蒸し
◆ふんわりかに玉ごはん
※諸事情により画像はありません
もちろん美味しくいただいたのだが、以前ほどの感動衝撃がなくて、シェフ替わった? なんて訳知り顔で、店を後にするのだった。
あ、カプチーノください。
(了)
昼時、外へ出ようと室内から通路へと出る。
同じ館内とはいえ、室温と比べると幾分か温度差がある。
階段より階下を目指す。
先を歩く知人の表情は曇っている。
「何か・・・匂いませんか」
・・・そう言えば、何だろ。
「小学校の頃、通学路がこんな匂いでした」
んー、何か水っぽいよね。川沿い? 川沿い小学校? 小学校川沿い?
「黙って。今、思い出そうとしてますから」
何をだ。当時の思い出か。
「あ!」
そうかー、そりゃァつらかったろうなー。
「まだ何も言ってませんよ」
何を思い出した?
「金魚ですよ、金魚の死骸臭。あー、すっきりしたぁ!」
・・・すっきりしないよ。
(了)
質の良くねェお店(たな)の旦那と、了見の腐れた小番頭に唆されて騙されて、早駕籠に乗り損ねっちゃっちゃァ番台に臥せるしかねェってんだ。
・・・いやァ、嘘でさァ。
旦那ァ、いつもお世話ンなってまさァね。
(了)
着信音が鳴る。
コール三回目くらいで出る。
「こんばんはー」
はい、どーも。
「帆立の貝柱」
かいばしら?
「貝柱、食べ過ぎちゃって動けない」
えーと、キロ単位ってことかな。
「そんなに食べてない!」
あ、思い出した。そういう時はさ、牛乳飲むといいらしいよ。
「もう飲めない、ていうか入らない」
しかも特濃4.5ね、3.2ぐらいだと効かないから。
「嘘だ!」
嘘じゃないって、試してみてって。
「おなかんなか、くらむちゃうだーになっちゃう!」
新メニューじゃん、それ。
(了)
夕刻の所用を前にして港区周辺を徘徊する。
首都高で云うと、高樹町が近い。
曹洞宗大本山永平寺別院 長谷寺(麻布観音)@西麻布二丁目
鐘楼と本堂
鐘楼と僧堂
長谷寺の塔頭(たっちゅう=子院)と思しき、隣接する寺院へ。
慈眼院@西麻布二丁目
曹洞宗大安寺@西麻布二丁目
つつつーっと移動。
浄土宗梅窓院@南青山二丁目
寺務所向かいの休憩所
青山通りから長者丸通りへ。
船光稲荷神社@南青山三丁目
丁目が変わるほど移動。
大松稲荷神社@南青山五丁目
さて、時間だ。
西新宿で飲んだくれようっと。
(了)
きょうはおおがたたいしゅうよくじょうにむかいます。
「あきはばら」からちゃーたーしたばすにのり、じぶんのいしとはかんけいなくはこばれてゆきます。
ぜんじつのつういんがたたり、いどうちゅうはすべてすいみんにあてることにします。
ここからはかるいなんきんじょうたいです。
わたされたゆかたにきかえてにゅうじょうです。
ゆかたのがらは「はなかわどすけろく」にしました。
おびは「9だいめ・いちかわだんじゅうろう」ばりにあかにします。
「きわめつけばんずいちょうべえ」
もちろんじょうえんはしていません、ただのかざりですから。
「おわけぇの、おまちなせぇ~」ってだれもしりませんね。
あしゆ
「どくたーふぃっしゅ」がはだをきれいにしてくれるといいますが、よくかんがえたらあいつらのえさをみをけずってあたえているのにかねをとられるなんてふじょうりだ、とばかりにふんぜんとかかりいんにつめよりますが、さすがにしゅらばにこなれているのか、どこふくかぜでした。
5じになりました。
のんだくれすたーとです。
ていうか、うたげがはじまるまえからすでにのんだくれています。
はだけるゆかた、とびかうおび、あびきょうかん、じごくえずそのものです。
ほどよくのんだくれててっしゅうです。
ばすは「しながわ」まではこんでくれるといいます。
のんだくれはまだまだつづくのです。
(おわり)
「かたばみ」もんにもみえますがたぶんちがいます 「けつ?」
昔に読んだ民話に『茗荷宿』なんてぇ噺がありまして、宿屋の亭主が大金を持った客に茗荷をどっさり喰わせて、客の金子をせしめようと企むンですがねぇ、次の日にゃァ亭主が客の宿賃を取り損ねるなんてぇサゲが着くンですな。
茗荷を食うってぇと、物忘れが酷くなるなんてぇ云いますが、あたしゃァ茗荷いらずってんで、恍惚の境地を満喫なんですな。
笑いごっちゃァ御座ンせんが、知人が飲んだくれた挙句に鞄ごと失念したなんてぇエピソードを聞きまして、他人事たァ思えないながらにも、自分に限ってあり得ねぇなんてぇ高ァくくってるあたしも居まして、矢張り何処か他人事なんでしょうな。
・・・えー、あー、うー、えーと、あ、丁度時間となりましてお後と交代で御座ィます。
(了)
京にゆきますってぇと、立ち寄るお茶屋さんがありまして、花見小路をからころからころと進んだその奥、一見小料理屋さんみてぇな暖簾が掛けられておりまして、これが山口瞳先生の直筆だそうで、その横でややもするってぇと場違ェな感じで、大英帝国旗がはためくンじゃァ御座ンせんがねぇ、その紋様の看板を掲げまして、ひっそりと佇む如き構えの店があるンですな。
花街なんてぇ場所柄とその侘び寂びな佇まいッから、一見さんにゃァちょいと入り辛ェ店構えなんですが、入ってみるってぇとそりゃァ杞憂なんてんで、中は落ち着いたもんでげす。
・・・なんてぇ知った風な口を利いておりますが、ほんと云やァこの店の銘が入った御酒を飲んだくれてるだけの妄想ってんで、あいすみません。
えー、丁度時間となりまして、お後と交代で御座ィます。
(了)
「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘の偶然の出会いのように美しい」
ロートレアモン伯爵
文献によっちゃァ、
「ミシンと洋傘の手術台の上での不意の出会いのように美しい」
なんてぇ訳にもなりますが、こっちゃァ語呂が良くねェですな。
まァ、特に意味はありませんが、ひとつよろしゅうと願っておきます。
(了)
たいせんかくとうげーむ、りゃくして「かくげー」をかいました。
ぐったりしたてんしょんには、「こまんどわざ」をればーにゅうりょくしてえる「かたるしす」がいちばんだとかんがえたのです。
・・・それがまちがいであることにきづくのには、そうじかんはかかりませんでした。
ちへどをはきそうなくらいにしれつなぶかつどうです。
すいみんじかんもけずられてゆきます。
いのちをすりへらしているこういにきづいてはいるのですが、やまりません。
このこんとろーらーじゃだめだ。
「かくげー」せんようのこんとろーらーをもとめてたびだつじゅんびをはじめます。
が、せいもこんもつきはてているので、めのまえがくらくなり、まえのめりにたおれます。
ただしいことやしんじられることがなんだかわからなくなりました。
かるいきんにくつうのりゆうはだれにもいえません。
(おわり)
どうにも食欲がわかず、一日一食というダイエット地獄にも似た限界ラヴァーズな生活は続くはずも無く、行った先のクリニックでは「ウィルス性のあれだね」なんて曖昧な診断をされ、何かを食べなければ服薬すらままならないと、大手ファストフードの新製品を無理ぐりに胃に収めて軽く悶絶し、頓服ていうか投薬ていうか、白い顆粒と白い錠剤をイオンサプライなあいつで流し込み、暫く気絶した後に紋付羽織を着た師匠方のエイゾウだけが、時間の経過を示していることに気付きつつも、軽く十三時間ほど寝たッきりになったり少し起きたりした、そんなアンニュイな日曜の午後。
(了)
だれにとめられることもなく、はつもうでじゅんぎょうはつづきます。
どうかんがえても、「はつ」ではないのに、ただの「もうで」なのに、1がつにかこつけてまいります。
かみめぐろ ひかわじんじゃ@おおはし2ちょうめ
いしだんがたいへんきついです。
かいだんのなかばで、はあはあはあはあいっていたら、じょしふたりぐみにふしんがられました。
みためはちゅうねんだけど、からだはろうじんだぞ。
いたわれってんだ!
どーん
ながーいいしだんをのおそろしさをみをもっておしえてやります。
こんのうはちまんぐう@しぶや3ちょうめ
このじんじゃには「ねこ」がたくさんいます。
まるまるとしたやつらばかりです。
いいぱとろんがいるのでしょうよ。
いいなあ。
ほどよいところでてっしゅうです。
ゆるゆるとかえることにします。
(おわり)
あっさりとしたそばでもたべよう
何故か屋外で飲んだくれている。
今、1月なんですけど。
天然で冷えたビールのアテにサテをいただく。
【サテ Sate】
小さく切った羊や鶏肉を、ケチャップマニスや食塩、コリアンダーなどの香辛料で作ったタレに漬け込んで、串を刺して炭火で焼いたもの
サテ焼き場
この後、四尺二間の小料理店で鮪の燻製をかじり、元演歌歌手のママが居るスナックを経て、ひとりが警察に連行され、最終的には韓国料理店でチャプチェを口の端からぶら下げながら爆睡することになるのだが、それはまた別の話。
(了)
改装なんてぇ云いますと、食処にとっちゃァ長期休業ってんで、馴染みのお歴々にゃァ、少ゥし酷だったりするンで御座ィますが、先年の夏より建て直しの為に店を閉めておりまして、お蔭様を持って工期満了なんてんで、先年の冬に新造な店開きに漕ぎ付けましたな。
長ェ間のご不便を、そしてご迷惑をってんで、大将、女将をはじめ、小番頭から下足番まで張り切って商売に励んでおります、なんてぇ構えでさァ。
新大橋通りを住吉方面に進みまして、清澄通りを渡りました、角から二軒目に目指す処があるんですがねぇ、丁度お時間となりまして、お後と交代で御座ィます。
(了)
にこみ
「お座敷遊びがあってね」
はあ。
「部屋の真ん中に屏風を立ててね、奥と手前でそれぞれがそれぞれの格好をするの」
何の話ですか。
「まあ聞いてよ。で、それぞれってのは、『虎』、『老婆』、『侍』の三すくみなわけ」
えーと、じゃんけんですかね?
「そうそう。想像はつくでしょ?」
虎は老婆に勝つけど、武将に負けるみたいな?
「そう、この侍が加藤清正だから、母親、つまり老婆に負けるの」
なるほど。で、それは手で表現できるんですか?
「できるわけないじゃなーい」
じゃあどうするんですか?
「他はつまんないからどうでもいいけど、『虎』は四つん這いよ」
あー、お座敷っぽいっすね。
芸妓衆のそれは絵になるが、旦那衆のそれは遺憾ですな。
(了)
えー、お寒ぅ御座ンす。
都内じゃァ初雪が観測されたなんてぇ聞きますがねぇ、二十三区じゃァ見られませんで。
何ぞてぇと皆様、寒い寒いと仰いますが、あたしゃァ暑がりなんてんで、冬に厚着をしてしまうと汗だくになりまして、脱水症状の果てに冷えた汗がカラダを冷すなんてぇ悪循環であっさり体調を崩すわけでして、気管支も弱ェもんですから、空調も遮断しまして、オイルヒーター的な暖の取り方しか受け付けねぇンですなァ。
まァ何ですな、難儀なカラダで御座ィまして、無期限休止なんてぇ何とかという歌い手の方が患ってるという病に近ェってんで、にわか知識で曖昧な症状に怯えるまいんちでさァね。
暑くも寒くもねぇ春がとんと待ち遠しいですなァ。
春なんてぇと云いますってぇと・・・、えー、楽屋で前座が何か云っております。
お後と交代致しまして、中座させていただきます。
あいすみません。
(了)
「2どめのはつもうで」というむじゅんしたきかくです。
しゅしは「のうさつかい」、つまり、きょねんもとめたおふだやおまもりをそのおみやさんやおてらさんにおさめにゆくのです。
まずは「いいだばし」にむかいます。
えきからすでにじょしどもがぎょうさんならんでいます。
とうきょうだいじんぐう@ふじみ2ちょうめ
ここは「えんむすび」でゆうめいとききます。
えんむすび? 「かねかし」ですかね。
ようじはありませんので、せせらわらいとともにつうかします。
つくどじんじゃ@くだんきた1ちょうめ
ここでは「かちまもり」というおまもりをおさめます。
なにかにかったきはしませんが、まけたきもしないのでよしとしましょう。
じつはこのやしろ、たいらのまさかどこうをまつっており、もんは「くようもん」です。
でんしゃをいくつかのりついで、つぎなるもくてきちをめざします。
めぐろふどう(てんだいしゅう たいえいざん りゅうせんじ)@しもめぐろ3ちょうめ
あ、うっかりきょねんもとめた「がんさんだいし」のおふだをわすれました。
ここはいえからそうとおくないので、あらためておさめにくることにします。
「がんさんだいし」とは、「あっき」をはらうおもいがつよすぎるあまりに、みずからがあっきとなり、あっきをおいはらったという、「でびるまん」なおぼうさんです。
そのいきざまがかっこいいのであつめているのです。
ことしは「みがわり」のきふだをかいもとめました。
はだみはなさずもっていると、なにかのときにみがわりになってくれるというこんせぷととききます。
もんぜんにある「やつめや」にはいりまして、ひやざけできもやきとしらやきをいただき、あつらえたうなじゅうをかっこんで、2どめのはつもうではまくをひくのでした。
(おわり)
なにかのけはいでおきました。
おきてがみがあります。
「いずにゆきます、さがさないでください」
これはおだやかじゃありませんよ、とあとをおうことにします。
8じにしゅっぱつしました。
きをうしなっているまに、ひるどきです。
ここは「いとう」です。
まずははらごしらえと、さかなのみせにはいります。
なまがき、かまゆでしらす、じものきんめだい、まいわし、せぐろいわし、しめさば、じあじ、じものほんかわはぎきものせ、いせえびをやっつけます。
のんきにすしをつまんでいるばあいではありませんでした。
このへんであのめいしょといえば、「じょうがさき」です。
じゃっく・ばうあーみたいなうごきでいどうします。
きりたったぜっぺきです
ここからだいぶすると、かくじつにゆけます
・・・もしかすると、まにあわなかったかもしれません。
しかしあきらめませんよ、ここだけが「いず」ではないのですから。
つぎなるもくてきちにむかいます。
ひろいしきちです。
こうえんのようです。
ここでは、おさないこどもたちがきょうせいてきにはたらかされています。
おとなは、はいじんのようにうろうろしているだけのそんざいです。
のすたるじっくでおだやかなふんいきですが、しょうねんしょうじょたちにとってはここはじごくです。
そてつ?
ふりかえってもそてつです、かこまれました
けいばつのひとつとして、しょうねんたちがみっぺいされたようきのなかにとじこめられています
つぎのこうほちにむかいます。
「あかざわおんせん」によってみました。
ひとはすこしのみずでたびたてるのです。
ろてんぶろからさがみわんほうめんをさがしましたが、みつかりません。
このままではこちらがもたない、ときちがいみずをいっぽんあけます。
なかなかよいこころもちです。
なにはなくともおなかになにかいれようと、たいりょうきのあるみせにはいります。
きんめだいのつくり、やりいかのつくり、きんめだいのにつけ、きんめだいのにつけをいただいて、あつかんをぐいぐいとあおります。
・・・もう、なにもかもどうでもよくなってきました。
あとはかえるだけかな。
ゆめうつつ、すてきなどらいびんぐできろにつきました。
れいのおきてがみはもうどこにもありませんでした。
(おわり)
この日、昼に起きたらやたら晴れてて、洗濯機ぐるぐるぐるぐるぐるぐる廻してる間に気絶して、中華鍋をぐらんぐらん振るってみたりして、日暮れ前にチャリでGoで、アカシックレコード巡って、破風造りの暖簾をくぐって、湯銭を番台に投げ付けて、洗って沈んで擦って剥がして泡って滑って跨いで踏んで覗いて逃げて追われて出て着替えて、食材を求めてマイカートをがらがらがらがらがら転がして、これから鍋を始めるよ男女でわいわいだよ的な若造らのカート下段にママレモンとシリカゲルをこっそりとふんだんに入れて、お稲荷さん詣でて戻って焼いて均して、どうぶつに会って魚釣ってフルーツもいで換金して、23時にしてぐらぐらぐーと気絶するのだった。
(了)
池尻稲荷神社@池尻二丁目
家族経営の店でのランチが多忙を極めた時、遠慮会釈の無い間柄だけに、周囲が引くくらい熾烈なバトルが厨房ホール間で繰り広げられるのだ。
ここのランチが好きだから、みんな仲良くしてくださいっ!
もしくは、手前ェら奥に引っ込んでやれッてんだッ!!
(了)
何処かで聞いた小噺をひとつ。
「えーと、北京ダックをひとつ」
あ、ペキンダクね、ないあるよ。
「ないあるて、どっち?」
無いよ。
「えー? じゃあ、ふかひれ」
あー、フカヒレ、ないあるよ。
「北京ダックもふかひれも無いの?」
お客さん、済まないね、鴨無く鱶も無く。
(了)
女子高を舞台に顧問である喪男な教師が「帰宅部」なる部のJKらに振り回されまいと努めてるようで実は振り回されてる感は否めないという漫画を読んでいる。
学校名が「ファム・プーリ」とあるが、これはフランス語で「腐れ女子」。
部員のひとりが拵える手作り弁当がことごとく霊障ってんですから、もう収拾はつきませんな。
・・・えー、着地点の無さ強化月間で御座ィまして、今宵はこの辺で失礼致します。
(了)
今日くれぇは揚げ物だろうと、白地に黒く染め抜いたひらがなだらけの暖簾をくぐり、壁を背にして木製の椅子に座る。
先客はカウンターに一名のみ。
卓上のメニューを眺めると、決して安くない。
それでも今欲しいすぐ欲しい揚げ物を選ぶ。
串かつをもらおうか。
待っている間に三組の客が続く。
揚がった串かつは一度、隣席の老夫婦の元へ運ばれた後、間違いと気付いた女性従業員の手によってあるべき席に運ばれる。
もちろん、穏やかな心で静かに受け入れる。
円筒状に揚げられた串かつには串は刺さっておらず、縦に庖丁が入れてあり、箸で持ち上げると、ヒレ肉と長葱の断面図が現れる。
美しいですなァ。
卓上にある幾多の調味料を用いるのももどかしく、見えない串をつかむような心持ちで完食を果たす。
くりすぴぃ&じゅうしぃ
勘定を済ませた頃には空席が埋まりつつあり、後続の客と入れ替わりで暖簾を手で撥ね上げ出る。
客は常連らしく暖簾をくぐると同時に「串かつー」と厨房に頼んでいる様子。
続けて、「おめでとうございます、あけましてね」って、全部逆じゃん。
(了)
噺家として最も円熟した時期に惜しくも他界した十代目金原亭馬生、師の噺の中には「死」をイメージさせる言葉が繰り返されることに気付く。
滑稽噺でありながらも、時間軸に沿わないところで数名が亡くなっていたというエピソードが後日談として語られるのだ。
とはいえ、それは客の笑い声と変わり、陰湿さは微塵も無い。
が、他の演者は誰ひとりとして殺さない。
未熟な船頭がうっかり落とした船客の死骸は大川から上がり、寂れた旅籠の梯子段を踏み外した旅客は滑落死し、騙された狐のリベンジは股裂きだと脅される初午男は心から怯え、花魁に恋焦がれる若い衆を諭し、「まだ死なないでね、ああいうのは何かというとすぐ死ぬんだから」と搗米屋の女房は決め付けるのだ。
馬生ワールドでは、人命は安い。
何故と問えば、知りたくもない場所に着地するしかないとも思うので止しておく。
酒仙と呼ばれる程に左党だった馬生師、食道癌を患い五十五歳の若さで亡くなった。
期せずして、明日で生誕八十二年を迎える。
(了)
「も、餅が、も餅が、ももも餅がぁ・・・」
騒がしい人だな。
「の、喉に、ののの喉に、喉にぃ・・・」
静かにしてください。
「・・・」
そうそう、そのままにしててくださいよ。
助ける側のうっかりで助からない場合もあると思う。
(了)
初詣はってぇと、杉並大宮八幡宮に参りました。
杉並大宮八幡宮@杉並区大宮二丁目
八幡様なんてぇいいますと、てぇげぇ源氏の方が絡んでますな。
聞き及んでみますってぇと、天喜年間、奥州に乱が起きまして、勅命を受けました鎮守府将軍、源頼義公が此の地に差し掛かかりますと、見上げた空には白ィ雲が八条に棚引きまして、此れを源氏の御旗と見立て、八幡大神様御守護としまして、京は石清水八幡宮より御分霊をいただき建立と相成りました。
当社、「東京のへそ」なんてぇ呼ばれておりまして、神様として胎内回帰する聖域なんでげすな。
なんてぇ理由で、安産・子育て祈願の参拝者でいっぱいでしたな。
あたしには礼して拍手打つくれぇしか用は無ェですが。
梯子参りで御座ィます。
西高井戸松庵稲荷神社@杉並区松庵三丁目
当社、鳥居の傍にお狐様の木乃伊(みいら)が祀られてる小祠があるなんてぇ聞きますな。
掲げられた一文を要約しますと、かつて当社の西に圓光寺なんてぇお寺が御座ィまして、境内にある築山で狐が親子で棲んでましたが、やがて廃寺となりまして、明治の中頃に築山を取り崩され、 親子狐は棲まう場失いまして、よほど別れが辛かったのか、終の棲家と定めていたのか、前足を咥えたまま冷たい姿で拝殿床下で見つかりまして、此の狐を祀ったそうですな。
この木乃伊について土地のお年寄りに伺いますと、
「昔はねぇ毛がいーっぱいあったのにねぇ、今はだいぶ抜けちゃってねぇ」
と仰います。
・・・何やら湿っぽいはなしになりましたが、本年もひとつご贔屓にと願っておきます。
(了)
(出囃子)
えー、お運び様で有難う御座ィます。
先年中は大変お世話ンなりました。
本年もご贔屓にと願っておきます。
お蔭様を持ちまして、三度目の年男で御座ィます。
寅はってぇと元来、「螾」と書きまして、「いん」と読み、春が訪れて草木が生ずる状態を表しているなんてぇ云いますな。
花を咲かせる春なんてぇ逃しっぱなしで、もう生きながらにして枯山水でさァね。
神社仏閣巡りに加えて、寄席に芝居に湯屋通い、と爺趣味は加速度的になってゆきます。
湯屋なんてぇ申しましても、高級特殊浴場じゃァ御座ンせんよ、一般大衆浴場でげす。
いわゆる銭湯ですな。
まァ爺でも花も咲かせる先達も居らっさるてんで、暗鬱としないなんてぇ零にしねぇだけの消極的な方向でゆきてぇと願っておきます。(礼)
(追い出し)