此の季節の到来を待ち侘びていた。
好みの具材だけで満たされた鍋を囲むのだ、ひとりで。
思いのままに箸で突くのだ、ひとりで。
<食材(ひとり食べきり分)>
◇スジャータめいらく無調整豆乳豆腐もできる有機豆乳 ・・・ 450ml
◇白菜 ・・・ 1/8個
◇天草ポークばら肉(しゃぶしゃぶ用) ・・・ 100g
◇味の素コンソメ ・・・ 1個
◇鷹の爪 ・・・ 適量
◇にんにく ・・・ 適量
<作り方>
1.ざくざく
白菜をざく切る。
(鍋は兎角食べ過ぎる憂いもあるが、白菜の喰い過ぎで死んだ奴ァいないので欲望のままに)
2.とろとろ
鍋に豆乳を投入し、とろとろと弱火で。
(強火でほったらかしにしておくと吹き零れてしまい材料が半減するので注意)
3.ゆばゆば
「無調整」を使用しないと湯葉が作れないので、そこはひとつ厳守で。
・・・あれ、おかしいな、湯葉ができない、無調整なのに・・・。
時間を要したが、湯葉を生醤油でいただき次の工程へ。
次からはスジャータは使わないと心に誓う。
4.ぐつぐつ
ほどよく温まった豆乳にコンソメを投入し、水分が足りないようであれば水を追加。
白菜を投入し、強火でバーニング。
鷹の爪、にんにくも続けて投入。
5.しゃぶしゃぶ
白菜が煮えたところでばら肉を投入してしゃぶしゃぶと食す。
つけだれは、具入り辣油。
豆乳白色と赤唐辛子色の決して混ざらない融合である。
6.ごちそうさま
〆の饂飩を食べ終えたところで、まだスープと具材の残る鐵鍋を卓袱台を裏っ返すように引っ繰り返して出掛ける準備を。
7.いってきます
こんなところにペルー料理店があるな、と中へ入りメニューも見ないままスタッフにオーダー。
ぶつ切りにした蛸と殻を剥いたムール貝に、微塵切った玉葱と半切りプチトマト、ブラックオリーヴを、レモンをがっつり絞って混ぜ合わせ、コリアンダーや唐辛子を加え、オリーヴオイル、塩を振っただけのセビーチェをくれ、あとクスケーニャでもアレキペーニャでもいいから店に置いてあるビールあるだけ持って来い!
"Salud!" (乾杯!)
(了)
父親より電話口で諭されるほどに胃腸の調子が優れないというのに、ジャンクフードを目指して地下鉄に乗る。
当店、新しい店舗という認識だが、当店以前にはどういう類の店が営業していたのか記憶にはない。
品名が大書きされた木板が並べられ目立つ店頭である。
がしかし、価格らしき数値の表示がどの板にも見つけられない。
まァ立ち喰いだし、と暖簾をくぐり入店。
入って左にある券売機の前に立ち、しばし呆然とする。
当店最低価格に僅か20円を上乗せるだけで、一人前の蕎麦に小振りな掻き揚げ丼が付いてくるという。
そんな脂ギッシュな組み合わせ、胃腸が弱っているのに。
・・・少しの空腹感だけを理由にがっつりな食券を購入。
受渡口にて若造店員に食券を渡す。
温かい蕎麦で。
振り返って、カウンターというか壁に沿って取り付けられた板っ切れの奥に陣取る。
立ち喰いとはいえ、実はパイプ椅子が八つばかり設置されており、幾つかの選ばれし人々が先着順にて腰掛けられるという環境である。
刻み葱が入れ放題と事前に伺っていたのだが、卓上にはそれらしき器が認められない。
程なくして壁に「ネギ入れ放題」という旨の貼り紙を見つけたが、その上には更に別の告知文が寄せられている。
「急激な物価高騰につきネギ入れ放題は当面の間廃止致します」
卓上の薬味は全て使い切るという殲滅派としては、返す返すも残念である。
「お待たせ致しましたー」との発声に振り返ると、盆の上には小さい器ながらも丼から揚げ物をはみ出させてやんちゃアピールに余念がない掻き揚げ丼、隣には其の孫を連れ歩く祖父の如き、白髪葱だけが散らされた蕎麦がそこに。
麺もつゆも立ち喰いにしては及第点である。
が、この揚げ孫だきゃァ余計だったと後悔もひとしお。
具が詰め込まれた大きさもさることながら、味も悪かァないが揚げ置きにて劣化してる感は否めない。
揚げ孫を一度祖父側に疎開させ、地階に潜む飯を喰ろうてから再び丼に戻すという手続きを踏まざるを得ないのだ。
その間、掻き揚げはずんすんとしなしなってゆく。
これはこれで悪かァないが、何処か不健康な家族関係である。
次は別なるタネものを単品で頼みたい。
(了)
炭火と油脂でもうもうと煙る炭火焼専門店に来ている。
働く若造どもは元気だけのみオンリーそれだけが取り得という御尊面(ごそんづら)の様子。
まずはと日本人ではない従業員に生ビールを頼む。
運ばれてきたグラスに口を付けると、・・・びーる以外の酒の味がする気がする。
疲労で味覚が壊れているか、若造店員の食器洗浄が甘いかどちらかだろう。
まァそこは軽くスルーしといて、メニューを右端から順に朗読する。
かわ
・・・ 数年前まで焼き方担当だったという兄ィはもういない。
「あのひとのかわがうまい」とはカニバリズムな発言である。
きも(レバー)
・・・ 血も滴る軟らか仕上げ。如何せん、具材が小さい。
こころ(はつ)
・・・ 同上。
ねっく
・・・ 食した記憶がない。忘れられたかもだ。
つくね
・・・ 団子状でタレ。普通である。黄身は付かない。
ミニトマト
・・・ 丁寧に焼かれた感が微笑ましい。
ししとう
・・・ 小振りなのを四つ、塩で。
味付うずら玉子
・・・ 本日いちばんカラダが欲していた味である。更にタレも掛かる。
しいたけ
・・・ 半分にぶった切られた傘と石突を落とした柄が交互に刺さる。
ゴーヤ
・・・ 輪切り一つと半月一つが刺さる。塩加減が程好い。
〆は鶏スープで仕上げた茶漬けとする。
ふるえる、じゃなくてふえるわかめちゃんの塩気ばかりが目立って、鶏味がさほどしないのは残念。
梯子したい気持ちを首根っこ押さえ付けつつも、何故か新宿方面を目指して歩いている。
道中の誘惑の多い事、危険が危なくって険しい限りだ。
それでもと血が滲むほどに唇を噛み締めながら、目を瞑り何もかもを振り切って副都心線に乗って帰るのだ。(涙)
(了)
渋谷区、坂の中程にある麺専門店に来ている。
臺灣系と分類してしまうには少々乱暴が過ぎるのだが、豚ラアドが滲みた焦がし葱が浮いているというそれだけで愛を込めてカテゴライヅしたい。
自分よりも先に入っているはずの隣席に座る知らない男のオヲダアした雲呑麺よりも早く登場するもやし麺をカウンタア越しに厨房より手渡しにて受け取る。
油分過剰にてうっかりと手を滑らしそうな器ごと熱い。
もやしと幾つかの根菜は、器表面全体を完全に覆っており、炒められて艶やかに輝いている。
鶏ガラ豚骨がぐっつぐつに煮込まれた果ての醤油風味の透明スウプには固茹でられた黄色中太麺が沈んでおり、そのもっちもちな歯応えを残している。
具材の全てを食した後、蓮華と割り箸にて掃討戦を遂行していると誇り高き敗残兵とも呼べる、ラアドを含ませ乾煎りした焦がし葱が其処此処に漂着しつつある寂寞とした風景が印象的である。
厨房に向け完食の意を伝えて席を立つ。
表で柔軟体操をしているレヂ係の老婆に代金としての硬貨を掌を包み込ませるように手渡し、咥え黒文字のまま坂を上って帰るのだ。
(了)
本日ァ浅草橋での落語会でござんす。
『第54回 鳥越落語会』@浅草橋・浅草橋区民館4階ホール
春風亭昇吉◆筍
「I.W.ハーパーのソーダ割り、旨過ぎる!」
「飲み過ぎてしまうので、法律で禁止して欲しいです」
「この噺、喜多八師匠から教わりました」
「『鼻捻じ』って噺に似てますよね」
「(桂)小南治さんが演るンですけど、小南系の噺なんでしょうかね」
「どういう噺かと云いますと、隣の家の枝が塀を越えて入ってきたので、学者先生が邪魔だって云って切っちゃうンですね」
「隣家の人が悔しいからてんで、どうにかしてやろうと考え、どんちゃんどんちゃんと宴会を催すんです」
「で、何を盛り上がってるんだろうと、塀越しに突き出した学者先生の鼻ッ先を捻じっちゃうのがサゲなんですね」
「・・・法的に云いますと、主幹は向こうにありますから、塀を越えてきた枝は切っちゃ駄目です」
「駄目なんですが、向こうに切らせることはできます」
「当然、鼻は捻じっちゃァいけませんね」
「筍はOKです、根が地を這うので」
「法律も解説できるなんて凄いですねー」
春風亭昇吉◆(演目不明)
「東京特許許可局」
「隣の客はよく柿喰う客だ」
「此の竹垣に竹立て掛けたのは竹立て掛けたかったから竹立て掛けた」
「赤パジャマ青パジャマ 黄パジャマ」
「生麦生米生卵」
「坊主が屏風に上手に坊主の絵を描いた」
隣家に住む男の死因はてぇと、早口言葉が災いしまして舌ァ噛んで死んでしまったという悲しいサゲで御座ィます。
柳家喜多八◆仏の遊び (本田久作:作)
「アイダブルハーパーですって。前座のくせにねぇ」
「あたしらが前座の頃は歩いて行った北千住で一杯60円の酎ハイでしたよ」
「二杯までしか売ってくれねぇの、それ以上飲ると危ないから」
「だから酒が飲めねぇ奴を連れてって、頭数揃えて飲んでましたね」
「本田久作さんから高い値で売り付けられた根多を演ります」
<本編>
生臭坊主に連れられて阿弥陀如来が吉原へ女郎買いにゆきますが、阿弥陀の芸達者がゆえのもてっぷりに悋気した坊主は怒って先に帰ります。
「あいつァまだまだ修行が足らんなァ」
柳家喜多八◆おすわどん
「お中入り~」の声が流れますが、喜多八師匠、それを制して云います。
「昇吉が二席演ったんで、もう一席演ります」
<本編>
家主の愛妾「すわ」を追い詰めて患わせた亡き先妻の亡霊と思しき声の主を見極めようと、真夜中の路上に抜き身を持って身構える店子の牢人、郡山剛蔵、実は声の正体が蕎麦屋の売り声と知り愕然とします。
「ででで、ですから、お蕎麦饂飩です」
「何、おそばうどん? それで、おすわどん・・・か。とはいえ、身共も頼まれたからには証拠の品がいるのだ」
「品でございますか」
「其方の首を貰い受ける。出せ、手打ちにしてくれる」
「じょ、冗談云っちゃァいけやせん。・・・み、身代りにうちの倅を差し出します」
「何、倅とな」
「こ、これにございます」
「これは何じゃ」
「蕎麦粉にございます。蕎麦屋の子で蕎麦粉」
「こんなもん、何とする!」
「お手打ちになさいませ」
そして、お仲入りで御座ィます。
春風亭昇吉◆八九升(はっくしょう)
まずは聾(つんぼ)小咄から「親子の聾」。
「倅や、今向こうを通ったのは横丁の源兵衛さんじゃァねぇかィ」
「何云ってんだぃ、お父つぁん、耳も悪けりゃァ目も悪いのかぃ。あれは横丁の源兵衛さんだよ」
「おぉ、そうかい、儂ゃァまた横丁の源兵衛さんかと思うた」
続きまして、「川越しの聾」。
「おーい、川向こうの人ーっ、少々お尋ねしまーす!」
「弱ったなァ、何か聞きてぇみてぇだけど、何にも聞こえやしないよ」
「あたしゃァ、そちらに渡りたいんですがねーっ、どれ位の深さですかねーっ!」
「あたしは耳が聞こえないンですよー」
と、手を耳の位置まで持ってゆきまして、胸の前で両手を交差させまして×の字を拵(こしら)えます。
「ああ、そんなに深いンじゃァ渡れねぇや」
本題へ。
耳の遠い隠居より不条理な小言を貰った女中は番頭に泣き付きますが、答えて番頭、
「顔で笑って口では『つんぼ爺』とか『くたばり損ない』とか云ってりゃァいいんだ」
と諭します。
女中の詫び言として隠居の元を訪れる番頭、有言実行とばかりに笑顔で罵詈雑言を浴びせにゆきます。
隠居は番頭の表情だけを汲み取ってる為、持ち上げられたような心持ちとなりまして、調子付いて耳も聞こえないくせに番頭に質問を浴びせます。
「この火鉢は何処で買い求めたんだぃ」
と聞かれた番頭、横にしました帖面を隠居の前に差し出します。
「成る程、横丁でか。それで、木は何でできるんだ」
と聞かれた番頭、頭に手を遣って引き千切った髪の毛を隠居の前の火鉢にばら撒いて燃やします。
「うわっ、そんなもん燃やしたら臭いじゃァないか。ああ、そうかぃ、毛を焼くから欅(けやき)だな。ところで、今日の米は何処のなんだぃ」
と聞かれた番頭、蓑を被りまして、白扇子での舞を披露します。
「蓑で舞いを舞う、ほほう、美濃米かぃ。ところで、最近の美濃米は一両でどのくらい買えるんだぃ」
と聞かれた番頭、紙縒りを拵えまして隠居の鼻の穴へと突っ込みます。
「は、は、はっくしょぃ(八九升)!」
太田その(柳家そのじ)◆寄席囃子(下座)
後で知ることになるンですが、此のお方、あたしとタメでござんす。
◇元禄花見踊り
「六代目の円楽師匠は先代より名跡と出囃子を襲名しました」
「これは志村けんさんのバカ殿登場シーンでもあります」
◇佐渡おけさ
「今は笑点のレギュラーは外れてますけど、こん平師匠は新潟県はちゃーざー村出身ということで、佐渡おけさです」
◇おはら節
「鹿児島出身の噺家さんの出囃子です」
◇茶摘み
「静岡出身の噺家さんが出囃子で使ってます」
◇ロトのテーマ(序曲)
「ゲーム『ドラゴンクエスト』のテーマです」
「ゲームおたくの噺家さんが出囃子を決める時にテープを持ってきたんですが、それがオーケストラでして、それを聞いて三味線の譜にするのは大変でした」
「何とか弾けるようになったんですが、聞くとこれがドラゴンクエストに全然聞こえないんですね」
「たくさん練習して私が弾けるようになった時には、この噺家さん辞めてしまいました」
◇やぎさんゆうびん(山羊さん郵便)
「これ、かわいくて好きなんですけどね」
「洋楽の音はとっても苦手なんですけど、何とか弾けるようになりました」
「でも、これを弾けるようになった頃には、この噺家さんも辞めていまして、私が寄席で弾くことはありませんでした」
◇ちゃっきり節
「先ほど『茶摘み』が出たので、演ります」
◇さのさ
「ここで色っぽい曲を」
◇さのさ(京都ヴァージョン)
「京の舞妓はんです」
◇さのさ(仙台ヴァージョン)
「奥州へ飛びます」
柳家喜多八◆棒鱈
「おそのさんの次に上がる時は高座返し(座布団を裏返す前座仕事)は要らないンですけどねぇ」
「昇吉が嫉妬して裏返しやがるンです」
「最近じゃァ色物さんなんて呼ばないンでしょうかねぇ」
※色物 ・・・ 寄席における噺家以外の芸人を指し、赤字で書かれる為にそう呼ばれる。
「(五街道)雲助も前に上がってくれる下座さんを口説いてましたね」
「『面白いこと云わなくていいから、ただ前に上がって弾いてくれるだけでいいから』って云うンですけどね」
「『あたしは日蔭の女ですから』って、色っぽいンだか、辛気臭いンだかよく分からない答えでしたが」
<本編>
「旦那様(だぁさま)、何処ぞで浮気なさってるンでございましょ?」
「何ば云うちょっとか」
「お隠しになさっても駄目でございますわ、土蔵相模でございましょう」
「ああ、そげんとこは、大井、大森、蒲田、川崎らと参った」
「お相方さんは何方でらっしゃいますの」
「む、海老名屋の香葉子ちゅうたかいの。顔ではにこにこ笑いよるが、裏では何をしてるか分からんもんじゃいのう」
「まァ旦那様、ひとつお声が聴きとうございますわ」
「左様か、『百舌の嘴(もずのくつばす)』を聞かしたる」
「何ですの、百舌の・・・? おそのさん、知ってる?」
此の後、薩摩隼人風な田舎侍の謡いは「十二ヶ月(じゅうにかげち)」、「琉球(りきゅう)」と続きまして、隣座敷の町人が乱入しまして乱闘寸前となります。
追い出しとなりまして、雨のそぼ降る外へと吐き出されます。
侍の唄に出てきました琉球、彼の地より遠方に見えるなんてぇ臺灣(たいわん)を目指しまして、雷門へと向けて歩き出しましたところで、丁度お時間となりましてお後と交代で御座ィます。
(了)
そもそもの発端は秋葉原で販売されていた夏季限定の新商品の存在だった。
事情通が語る新商品の醸すその洒落っ気具合と主な使用法を拝聴している。
「今や業界では勢力は三分されてます」
その三大勢力は、縞、白、苺という。
あえて詳細を語る気はさらさらないが、ここでなるほどと膝を打ってもよいものかとも考えるのだ。
(了)
実家に居る妹が農家の次男坊に嫁いでゆくという兄ィと西新宿で飲んでいる。
卓上にグラスを置く度、室内に音がやたらと響き渡り、既に繊細な行動が不能となっている様子である。
「明後日さ、会うわけよ」
誰? 妹の彼氏と? 年下だっけか、27くらいの。
「そう、俺のヒロコを持ってく糞野郎と」
何なの? どういうこと? 祝えないの? 妹萌えなの?
「違ぇよ、そんなんじゃなくてさー、妹のーカレシがね、もう、DBなのよ」
何て? DV?
「DEBUなんだよ!」
ははァ、なるほどね。まァ農家だし、美味しい米喰ってるだろうしさ、多少はねぇ。
「多少じゃねぇんだよ! もう3桁超えてんだぜ! 俺の2倍もあるんだ!」
120キロ超え? そりゃァ目立つねぇ。体質かな。
「知らねぇよ、あんな生き物見たことねぇよ!」
何それ、お前の義弟だよ。
「俺の周りにはああいうキャラはひとりもいないんだよ!」
キャラかぶんなくていじゃん。
「キャラかぶりとかそんなんじゃねぇし」
じゃァ何? 怖いの?
「怖ぇよ! あんなのと殴り合いしたら、普通に死ねるから」
普通に殴り合う理由はないなァ。
「普通に勝てねぇし、俺。絶対に腕っ節で負ける自信あるし」
要らん自信だな、それは。
「無理なんだってば」
えーと、つまりあれだ、妹の未来の旦那が太ってるから気に入らないの?
「そうだよ、俺のヒロコには、こう、すっとした奴をあてがいたいじゃん」
もう遅いよ、まとまった話なんだし。素直に祝ってやれないもんかねぇ。
「でも、うちの母ちゃんが言ってた、『前に付き合ってた四十五歳のおっさんよりはまし』って」
・・・。
お、おめでとう、ヒロコ!
つ、ついでに兄にも幸あれ!
(了)
強い勢いの雨が降ったり止んだりしている。
こういう日には外出しないのが、賢い大人の休日の過ごし方に相違ない。
・・・山手線に乗っている。
思っているほど賢くないのかもしれない。
新宿区にある韓国料理店に到着。
見れば屋外にまで行列が続いている様子。
とはいえ、先には二組が待つだけなので後ろに着いてみる。
やがて案内の従業員が「お二階へどうぞ」と店内ではなく、雨がそぼ降る野外を指差す。
外階段を傘を差しつつ移動する。
まずはと"생맥주"(センメクチュ)を。
突き出し6種(手前より時計回りにカクテキ、マカロニサラダ、煮玉子、白菜キムチ、もやしナムル、ブロッコリー白和え)
"김치 치즈 찌짐" (キムチチーズチヂミ)
"호박 오징어 볶음" (パンプキンとイカのポックム)
上記二品のどれもがうっかりとチーズ入りである。
続けて"참이슬"(チャミスル)を。
「2時間制」を理由として、18時に店を追い出され、雨の中の路地を移動。
狭い裏路地を歩いていると、日本語ではない言語が聞こえてくる。
「"오백 오백" (オベク、オベク)」
という"아줌마"(アジュンマ)の誘いに乗り、地階にある"노래방"(ノレバン)へ。
何がオベク(五百)かと云うと、室料が一時間で500円という。
ここでは、"녹차 하이" (緑茶ハイ)を。
アジュンマの運んで来たそれを口にした最初は「甘っ」と感じたが、実は焼酎量がかなり多めで、アルコヲル分の濃さゆえの甘さだったと知る。
四時間も日本語が通じない店の中で過ごして撤収。
早い時刻の山手線で帰ります。
(了)
(0925工期満了)
19時より103人と銀座六丁目で飲んでいる。
3時間飲み放題という。
Hors-d'ocuvre
海の幸のマリネミラノ風
Salad
地中海パルメジャーノレジャーノチーズのサラダ
Soup
野菜たっぷりのミネストローネ
Main
ミラノ風牡蠣のペスカトーレソース
Pasta
シーフードペペロンチーネ風パスタ
Dessert
季節のデザート(ババロア~ストロベリーソース)
Special
アンティパストの盛り合わせ
ほとんどの品目に「風」の文字が見える。
かぜかぜって、いやむしろふうふうって、何だか具合が悪いみたいだ。
そして、5987という数字の差額が気になってしまい、気付けば22時。
日比谷線に乗りまして、小人の居るわけではないが小人という名のスナックへと移動します。
(了)
目覚めた時から物凄い疲労感である。
疲労が心身に心地好いのは、前日の就寝前までだろうと思う。
徒労感は精神衛生上よろしくないが、程好い疲れは睡眠導入剤となる。
午前中の時点で、20時前に気絶しそうな予感がする。
予想通り同時刻前、人からの着信にも気付かない勢いにて気を失っている。
しばしの休息。
「夜は寝る」
とは、都内某区における24時間営業の大型雑貨量販店建設に反対する住民の声である。
夜は寝るのだ。
(了)
寝乱れた浴衣姿のまま、畳敷き和室の蒲団上で目覚めた午前6時。
窓より射し込む旭にしては薄暗く、日の出はとうに過ぎているはずだと外を眺むる。
・・・雨である。
午前中の予定として鬼怒川の穏やかな流れに身を任せるはずが、激濁流を髣髴させるほどの豪雨となっており、大自然に身を委ねるにはいささかの不安材料である。
企画立案者に棄権を提案すると、当日キャンセルはビタいち返金されない旨の返答に改めて参加を決意する。
金額の高ではなく手続き上の問題とし、憤りを伴う煩わしさも手伝い、反発する意を込めての参戦である。
闘って死のう、そしてそのまま太平洋まで流されよう。
最後の晩餐の残りを細々と喰い繋ぎながら、着々と準備を進めてゆく。
死に装束は、"Helly Hansen"社製マリンウェアとなるのだ。
06:10 禊(沐浴)
08:05 チェックアウト
車両に乗って移動。
現地にてフル着替え。
移動先の鬼怒川上流からは、揃いのサンダル、黒いウェットスーツ、白いヘルメット姿に派手なカラーリングのパドルを持たされたまま、旅館街を歩かされるという恥辱の行軍である。
08:45 ラフティング
木造船でのライン下り乗船者らは揃いの透明ビニール製レインウェアを羽織らせられ、その船頭らはやはり揃いで緑色のアウトドア用レインウェアを纏っている。
絵面的には罪人らを導く地獄の渡し守のようだ。
次第に雨は止む方向に。
90分後に撤収。
無事に帰還できたことを奇跡と思う。
日頃の行いが幸いしたのだろうと胸を撫で下ろす。
ようやく食事らしい食事にありつけそうだ。
街道沿いにある蕎麦屋の暖簾をくぐる。
12:00 朝兼昼餉
小上がりより全景
舞茸の天麩羅
天丼(時計回りに茄子、海老、舞茸、獅子唐)
手打ち蕎麦
特製定食(時計回りに天丼、茗荷と大根と胡瓜の新香、胡瓜と鶏肉の辛味和え、蕎麦)
さあ帰ろう。
もはやこの地に用はないのだ。
往路に比べると復路は怖いくらいに順調である。
16:55 給油
17:30 返却
車両返却時の総走行距離を確認すると555kmだった。
前日都内での四時間走行で距離を稼いでいたのがよく分かる結果である。
疲弊し切った我が身を労おうと、A4クラス牛肉のみを取り扱うという店を目指すのだった。
(了)
追記:
参加された方々、お疲れ様でした。
次回もありましたら、よろしくお願いします。
何かに追われる夢から目覚めた気がした午前4時。
約束の時刻は一時間後、5時である。
這うように室内を移動して、出掛ける為の準備を整える。
どうにか形だけでもと揃えた後、身一つさえあればよいことに気付き、全てを破棄して逃げるようにドアから出てゆく。
薄暗い空の下、闇に包まれた地階へと降りてゆくとそこには、暗灰色のバンがヘッドライトを点滅させながら高回転でのエンジン音を唸らせている。
戦慄を覚えつつも運転席を覗くが無人である。
車窓には自分の名が「様」付きで直書きされており、読んでみれば既に手続きは済んでいるとの内容だった。
文字は赤く粘着性があり、窓枠に少し滴っている。
強く拭いても消えないので、そのままにして座席に乗り込んだ。
何処へゆこう。
いや、目的地は決まっている。
その前に幾つか済ませることがあるのだ。
05:03 神山町
05:18 渋谷区xxx
05:45 新宿区xxx
06:16 麹町
06:42 渋谷区xxx
07:01 南麻布
07:21 六本木
07:48 上大崎
08:00 目黒区xxx
09:00 北区xxx
初めに車両に乗り込んでから、既に四時間が経過している。
その上、未だ東京を脱出していない。
焦燥感だけが奥の方で空回りしている。
首都高より東北自動車道へ。
慢性的な渋滞が続く。
道中、真新しい事故現場を四つも目撃。
そのどれもが追突であるように見える。
明日は我が身ながら素通りしてゆくしかない。
気が付けば、予想到着時間を三時間も超過していた。
14:00 龍王峡
ここからは少しのトレッキング。
虹見の滝
龍王神社
「ハチに注意」
竪琴の滝
← むささび橋 0.4km 虹見橋 0.3km →
龍王峡(左:上流方面・右:下流方面)
さあ地上へと戻ろう。
残された時間は少ないのだ。
龍王観音
辺りは日暮れてきたようだ。
駆け足でBBQの準備を開始。
釣り人からの白い視線を軽やかに黙殺しながら空騒ぐ。
鬼怒川温泉オートキャンプ場@鬼怒川温泉滝
闇雲に焼く。
コンロでの炭火だけでは飽き足らず、EPIガスバーナーもダブルで使用。
バーナーのメーカーがそれぞれ異なる為、高さ調節は困難を極める。
斜めった鉄板に載るリブロース
「まだ居たのか」と吐き棄てる管理人より、猫を追うように追われ、宿へと向かう。
東急ハーヴェストホテル鬼怒川@鬼怒川温泉大原
ここは何処だろう。
楽園にも見える。
おそらく幻なのだろう。
狐狸妖怪の類に騙されてもいいから、今はただ眠りに就きたい。
(續く)
世田谷区は商店街の一角にある麺専門店に来ている。
昭和34年創業の老舗という。
暖簾をくぐって中を眺めると、昼時ながらに客はまばらである。
L字型カウンター奥の隅に座ると、小学生らしき男児が水の入ったグラスを運んできた。
カウンター越しの厨房には、親子と思しき老婆と中年女性のふたりが居るだけである。
メニューには「50周年記念」との手書き文字が見える。
記念と銘打ち、一部の品目が低価格に設定されている。
昨年がそうなのだろう、今年も続いているようだ。
初めて訪れた店なのだが、何処か懐かしい佇まいと、初対面とは思えないほどにフランクな従業員らの存在が客を旅気分へと誘(いざな)う。
もう、持ち上げ方が地方色濃厚なのである。
「も、もしかして、げ、芸能人の方ですか?」
え? いや、一般人です。
これで「いやぁ、わかっちゃいましたぁ?」とかいいかげんに答えていたら、奥から色紙とサインペンを持ってきたのだろうか。
それが壁に飾られるという絵面は大変面白いのだが、要らぬ詮索されて会話が長くなるのは必至なので、そういう悪戯心は留めおいた。
味? 味はまァ普通でしたよ。
(了)
塩わんたんめん
煉瓦造りの台湾料理店に来ている。
週末の20時台ということで、当然円卓にて相席となる。
左隣には年の差が不明な女同士、右側が年齢差が歴然とした老紳士と若い娘である。
左は青菜らしき炒めを、右は黒い貝殻を卓上に並べている。
菜譜も開かずに啤酒、蜆、香腸(腸詰)を頼む。
続けて豆苗を。
〆は粥である。
薄いと思うくらいが丁度好く、そして胃腸に優しい。
余力を残しつつ、河岸を変える。
大通りの地階にあるベルジャンビア店内の壁面には、故"MJ"来店時の署名が残されている。
"MJ"とは先年亡くなったキング・オブ・ポップの方ではなく、ベルギービールを世に広めたビール評論家としてビアハンターの異名を持つキング・オブ・ホップの方である。
煉瓦に直書きされた筆跡を指先でたどってみたところで、マイケル・ジャクソンとはさっぱり読めないのだが。
やはり金曜だけあって、店内は混雑を極めている様子。
元々が狭い空間、特にボトルが立ち並ぶショーケース前ではすれ違いが困難となっている。
立ち飲みは性(しょう)に合わずと、スタッフに頼んで階段下の空間に席を確保してもらう。
階段を客や従業員が昇降する真下で前屈みながらグラスに口を付けていると、第二次大戦下のベルリンにて小部屋に匿われている一家の一員であると錯覚する。
"Leffe Blonde"
ドラフトである。
ベルギー南部、ムーズ川沿いに建つレフ修道院にて13世紀より造られているという。
"La Trappe Dubbel"
記憶が曖昧で恐縮だが、確かこの銘の入ったボトルだったと思う。
内部記憶装置には「ラ」と「ペ」、二音のみの残滓しかない。
あと、ラベルの色が赤。
ベルギービールとして認識されているが、実はオランダ北部、ブラバント州にあるコニングスホーヴェン修道院の作という。
トラピストビールの中では唯一のベルギー外の産である。
程好くいただき、仄暗き塹壕より撤収。
敗戦国の末裔として、世界の飲食物による本土上陸を幸せと感じる。
選択肢の多さとは食の侵略に直結しないと信じる。
取捨択一の結果、何かしらのものを身の内に納めているに過ぎないのだ。
今を食と体の蜜月期と仮定する。
それでも我々は一汁一菜的な粗食を何処かで意識しつつも、現在での過剰に自由な立ち位置の為に、闘病でもしない限りは、振り返って原点に立ち戻ることもないのだ。
それは、大人の自由度が不自由になる転機かもしれない。
何だか湿っぽい話になった。
今宵はこの辺で。
(了)
今年で25周年を迎えたという老舗麦酒専門店に来ている。
40種類の樽生、70種類の地ビールで客を待つってんだから、もうこれは自分から脱ぐしかないのだ。(何故?)
スタッフには「浴びるように」と一言だけ告げ、やがて運ばれてくる品を順々にやっつけてゆく。
飲んだ麦酒の銘を失念しないように、醸造所の所在地、メモ書きと併せて備忘録とする。
"Extra Pils 25+10" ・・・ 当店25周年記念醸造、"+10"の意は失念
"Preston Pale ale" ・・・ ジョイフル本田宇都宮店もしくは千葉ニュータウン店内醸造所
「富士桜高原麦酒ヴァイツェン」・・・ 山梨県河口湖町、ヴァイツェンとはドイツにおける「白ビール」の呼び名
"Rogue (秘) IPA" ・・・ オレゴン州アシュランド⇒ニューポート、秘密の醸造という
"Nide beer Cream ale" ・・・ 東京都世田谷区
"Swan Lake IPA" ・・・ 新潟県阿賀野市、"IPA"とは「インディア・ペール・エール」
"Black bitter 25x2 Stout" ・・・ 黒ビール、"x2"の意は失念
"Baird beer Rising sun" ・・・ 静岡県沼津市
"Divine Vamp 3 IBA" ・・・ "IBA"とは「インディア・ブラック・エール」
特定種を頼むと半分サイズのフードが無料というので、ここはひとつ調子に乗らせてもらおう。
◆突き出し ・・・ 蒸し鶏とキャベツ
◆ノルウェーサーモンのエール漬け ・・・ 酢橘でいただく
▼ソーセージとザワークラウト ・・・ プレーン、チョリソなど三種を荒挽きマスタードで
▼焼きそば風スパゲティ ・・・ 麺がパスタ、具はキャベツとにんじん
▼厚切りポテトフライ ・・・ 小ぶりな丸ごとを縦に四等分
▼豆冨とトマトのカプレーゼ ・・・ モッツァレラチーズの白、トマトの赤、バジルの緑、そして豆冨の白
▼ハーフピザ ・・・ ほんとに一枚の半分、片割れ探して旅に出る
見る見る間に身体がビア樽化してゆく妄想を抱き始めたので、宴も酣(たけなわ)と撤収。
此の地を引き上げ、彼(か)の地を目指す。(何処だ)
雑居ビルにある地階へと続く急階段を踏み締めるように下りる。
暖簾こそ下がっていないが、木製の扉をくぐるとそこには、角型の馬蹄形カウンターがあり、馬蹄を囲む止まり木は満席である。
丁度入れ違いに空いた席へと案内され、まずはと冷酒を頼む。
◆雪漫々 Yukimanman (山形)
◆扶桑鶴 Fusouzuru (島根)
◆黒帯 Kuroobi (石川)
胃腸が酒精にやられついでに、目の前で茹だる具を幾つか頼む。
◆大根 ・・・ 定番
◆里芋 ・・・ 皮を剥かれたほくほくなのが串に2個刺さる
◆牛たん ・・・ ほろほろやわやわなのを山葵でいただく
◆プチトマト ・・・ 温(ぬく)い酸味が身上(しんしょう)
◆つみれ ・・・ 魚と生姜がしっかり絡み合う味だが、好みで云うとも少し煮たい
◆生麩 ・・・ 白と緑の二色、食感もっちもち
あ、これおでんか。
梯子か、しれっと二軒目か。
ていうか、どんだけ喰って飲んでんだ。
好い加減にぐだぐだになりまして、店主より閉店を告げられてもなお飲み続けましたら、見兼ねた女将より泥棒猫を追うような手付きで追われまして、聞いたこともない罵声を浴びせられまして、背中をひどく押されまして蹴り出されまして逃げるように帰ります。
あたしの靴下は何処かしら。(涙)
(量)
故MJ掲載記事
涼しいには違いないが、曇天を通り越して降り始めているようないないようなそんな気配。
夜半には雨になるという。
それでもまっつぐに帰るという気遣いはない。
久方振りに食べたい物を目指して移動している。
千代田区、地下鉄の出口より地上に出る。
家路に急ぐ人々の間を縫って泳ぐように進むと、果たして目的地はそこにあった。
時刻は19時半前、既に完成形の酔客らが大声を発しているのが外からでも分かる。
一抹の不安を抱えつつも暖簾をくぐると、嗚呼已んぬる哉、「ウエモシタモイパイデス」とカタコトわられる。
まァ致し方無ぇやなと、店名が入った暖簾と「ぎょうざ・たんめん」と記された看板、女主人が大事に育てていたと思しきプランターに火を放って速やかに撤収。
背後より嗚咽交じりの慟哭が聞こえたが、振り返らずに地下鉄の階段を下る。
・・・食べたかったし、あの湯麺。
そして、新宿区。
予報通り、雨は降り出している。
木製看板を横目にしながら暖簾をくぐり、手前に斜めったカウンターに案内される。
江戸の仇は長崎に相違ないと啤酒(ビール)と湯麺(タンメン)を頼む。
香港映画におけるやられ役顔の従業員より「オジカンカカリマス」と告げられ、無言で頷いたのが唯一の国際交流と信じている。
ほどなくして運ばれる、器になみなみとした湯麺。
顔でも洗えとばかりに、白く輝く陶器の底深な洗面器がそこにある。
・・・これはもう、何ともまあ、わりと多いな。
それでも、やっつけよう、仕事のように。
錯乱気味に、豆苗とトマトの炒め、牡蠣のオイスターソース炒めを小皿で追加。
前者は、皿に盛られたフレッシュトマトに、炒められたベーコン、長葱、干し海老の入ったチリソースが掛けられ、素揚げされた豆苗と中国三つ葉(パクチー)が載る一品。
赤に緑と派手な彩色ながら、組み合わせとしてはいまひとつな感は否めない。
後者は、云わずもがな、牡蠣の牡蠣による牡蠣まみれな一品である。
オイスターにてほどよく味付けされた絹莢(きぬさや)と長葱が添えられ、酒類は前に進むしかない。
そして、完食。
外はまだ止む素振りもない。
遣らずの雨てんで、神輿ィ据えても少しいただいきましょうかねぇ。
(量)
旅行に同行する者を選定する過程において重要なのは、その人物が通常時に没個性で且つ曖昧であれば邪魔にならない。
同行者に宿、若しくは移動の車中にて一定量の酒精を与え、酩酊時にその旅の主題とも云えるべき単語が発せられればそれでよいのだ。
内田百閒氏の鉄道記、『第三阿房列車』を読んでいる。
当シリーズの三冊目であり最終巻である。
誤解のなきように断っておくが、上記内容は百閒氏の言葉ではない。
百閒氏の旅程に付き添うヒマラヤ山系こと、平山三郎氏の存在があまりにも現実離れしており、大変に秀逸なので、虚実綯(な)い交ぜな彼の稀有な存在を記しておきたいだけである。
無論、実在する平山氏と阿房列車に描かれるヒマラヤ山系とは大いに異なるキャラクタアであることは承知している。
全ては百閒氏の筆致が成せるが所以である。
ただ引用するだけでは芸がなさ過ぎるので、「旅の途中に体調不良であることを理由として身を焼かれるべく生きながらにして恩師であるはずの百閒より焼き場を予約される男」として、次へと引き継ぎたい。
(了)
週明け初日というのも手伝って、まっつぐに帰宅。
唯一の寄り道は、ひと玉百円のキャベツを購入したのみに留まる。
江東区生まれという新宿区在住の古老に教わった、ソース焼きそばの再現である。
参照:2010-09-02 『九月上席~龍典和尚』
やはりどう頑張ってみても、料亭や天麩羅屋からの廃棄物、いわゆるリアル天かすが手に入らないので、致し方なしとして市販の揚げ玉で代用。
意地でも油は使用しないので、蒸らしも兼ねて水を最初から投入してみる。
熱せられたパン、注がれた水により揚げ玉がふやけてゆくのがよく分かる。
丸い構造体を維持できずに崩壊してゆく様を眺めていると、何処か実験のようである。
水分が蒸発しないうちに刻んだ葉を投入し、続けて麺を入れ、しばし蒸らす。
ここでうっかり塩胡椒を忘れる。
思い付きでオイスターソースを投入。(古老から叱責されるべき愚行である)
仕上げにウスターソースをと戸棚を開けると、哀しい哉、在庫切れである。
古老からの罵倒と共に繰り出される拳骨を想像しつつ、身も竦(すく)む思いで急遽、付属の粉末ソースを水で溶いて使用。
殴られるどころか、亡き者にされる覚悟の上での作業工程である。
最後に盛られる紅生姜だけが、唯一の正義といえよう。
完成品をひとことで云うならば、前回よりもチープ感増し増しである。
絵的にはジャンクな美しさなのだが、食してみると、しなしなったキャベツと一度溶け少し焦げてクリスピー感が増した揚げ玉だけがほどよい食感で、構造体が崩壊した揚げ玉にまとわり付かれた麺は幾分か水分を含み、そしてやはりダシ風味が足りない。
反省点は多々あると自覚している。
以下の点が特に致命的であるといえよう。
(1)市販揚げ玉の不正使用 -52
(2)早期における水分の投入 -12
(3)塩胡椒投入の失念 -48
(4)オイスターソースの不正使用 -39
(5)ウスターソース在庫管理能力の欠落 -59
(6)付属粉末ソースの不正使用 -72
ひどいマイナス採点である。
取り返せる気が全くしない。
古老に顔向けできない日々が続くのだ。
(了)
『無題』 2010/09/13
(0923工期満了)
きれいなわきみずでそだったという、ふくしまさんの「はわさび」をてにいれました。
たべかたとしてはいろいろあるのですが、おとこのてりょうりはざっくりがしんしょうなので、もっともらくでかんたんなちょうりほうをえらびます。
せっかくのおとなのしょくざいですし、はなからめにぬけるほどにからみをあじわいたいので、こんかいは「なましょく」をえらびます。
・・・えっと、おとなのじじょうで「ねっとうかけまわしてからのしょうゆづけ」となりました。
そこがおとこのてりょうりゆえんのけーすばいけーすなのです。
1.せんじょう
どろつきでしんせんあぴーるのしょくざいをよっくあらいます。
2.ぶちぶちざくざく
たべやすいおおきさに、てでひきちぎるか、ほうちょうでざくざくきります。
(まるごとのままですすめると、できあがりのしながくちのなかでからみせいぶんおおあばれするかのうせいがあるので、しょっかんがのこるくらいのほどよいさいずにぶっちぎってぶったぎってください)
3.しおもみ
きりきざんだしょくざいをかるくしおでもみます。
もんでーるはくしゃくです。
・・・ふるいですね、だれもしりませんね。
4.あくぬき
「ざる」にのせたしょくざいに、ねっとうをかけまわし、「あく」をぬきます。
これいこうのさぎょうは、てばやくおこなわないとよい「からみ」がでません。
ねっとうはやりすぎると「からみ」がとんでしまうので、たいへんにむずかしいところです。
5.れいきゃく
「こおりみず」にしょくざいをつっこんで、きゅうげきにひやします。
6.あっさく
こおりみずからひきあげたしょくざいをてでぎゅうっとしぼります。
7.つけこみ
あらかじめよういしておいた「びん」か「たっぱー」に「たまりじょうゆ」をみたし、しょくざいをつけこみます。
8.れいぞう
いやがるしょくざいを2、3かいひっぱたいて、3、4じかんほど「れいぞうこ」にとじこめます。
9.いただきます
これはもう、「にほんしゅ」とあわせないてはありません。
みやぎさん「いちのくら」をれいしゅでいただきます。
・・・んー、・・・めからはなにぬけるようです。
ん? はなからめ? じゅんじょがぎゃくでしたね。
10.ごちそうさま
ほぞんようのびんごとをたたきわって、でかけるじゅんびをします。
11.いってきます
すでにこころは「うらんばーとる」ほうめんにとんでいます。
でんわでよやくをいれて、がいしゅつです。
ぶじにせきはおさえましたが、かみかみながらのよやくれんらくでした。
「おあう」、これでよやくっていってるつもりなんですから、にほんごもしんかしたもんですね。
(おわり)
前日からの痛飲が後を引き、帰宅時間は29時。
ていうか、もう5時じゃん!
茫洋としたまま、旅支度を整え、外へ出る。
空では太陽が無駄っ光りしている。
暑くなりそうだ。
ここからは元来持たないはずの「鉄」度を上げてゆきたい。
7時30分 総武線沿線某駅 改札外集合
7時50分 総武線 乗車・出発
7時54分 三鷹駅 到着・乗換
7時58分 「特別快速ホリデー快速あきがわ(E233系H編成)」 乗車・出発
当列車、中央本線、青梅線、五日市線を経由する。
拝島駅では増解結(分割・併合)が行われるという。(往路では分割=解結)
拝島駅より東では10両編成だが、拝島駅より西からは「あきがわ」4両、「おくたま」6両の編成となる。
そして、我々の乗っている車両は、五日市線武蔵五日市駅ゆき「あきがわ」である。
旅きぶんな向かい合わせのボックス席をひとりで二席分占領して仮眠をしようと計画していたら、電車は普通に中央線の様相を呈しており、また、東京駅始発の為、普通に乗客で混雑している。
もちろん、座れない。
つまり、眠れない。
<あきがわ停車駅(三鷹駅以西)>
国分寺駅(中央線)
立川駅(青梅線)
西立川駅
拝島駅(五日市線)
熊川駅
東秋留駅
秋川駅
武蔵引田駅
武蔵増戸駅
8時48分 武蔵五日市駅 到着
木製看板とは観光地らしい
五日市街道を歩く。
直に到着。
秋川橋河川公園@あきる野市留原
川水は緩い流れの為か、温い
河原では直火は禁止というので、借りた炉の中で薪と炭で火を熾す。
暇なので、川中にある岩に寝そべって仮眠を取る。
本気で熟睡し、あわや携帯電話ごと自分が水没しそうになった。
火を維持しながら待つ間、買出し部隊は二時間弱、戻らなかった。
他の食材や酒類は駅周辺にて購入したものの、生産者個人名付きの有機野菜を販売する店までが遠かったという。
根性ありますなァ。
ほどよく冷えたビールを何本も空にしてゆく。
すぐに汗に変わる為、他の酒類には手が出ない。
仲間のひとりがタコスを仕込んでいる。
人の頭ほどもある挽肉のカタマリにプチトマトや玉葱、仕上げにスパイスをぶち込んでいる。
完成品をトルティーヤに巻き、レタス、アヴォカド、チーズ、サルサソース、目玉焼きを載せて喰えという。
この食材は後に飯盒で炊いた米からタコライスとなる。
満腹である。
そして、お好み焼きが焼かれ始めた。
何故かお好み焼きの上にも目玉焼きが載せられる。
陽にさらされた肌が既にひり付いている。
仲間の大半の二の腕が赤く灼けている。
撤収の指令が下り、片付けが始まる。
しゃぼん玉でも吹きに行こうかなとひとり川中へと逃げる。
15時55分 武蔵五日市駅 ホリデー快速 乗車・出発
16時xx分 三鷹駅 乗換
16時xx分 某駅 到着
熱中症寸前だったのか、物凄い疲労感で膝がぐらぐらである。
それでも、反省会として、青森は八戸名物である煎餅汁を出す店へ向かう。
がしかし、それは冬限定の品と聞いて、断念せざるを得ない。
代わりに薦められたのが、白髪葱がどっさりと盛られ、熱い葱油が掛けられた雲呑である。
次の反省会の会場、沖縄料理店に移動。
ぐずぐずと日付が変わるまで飲んだくれよう。
(了)
追記:
皆々様、お疲れ様でした。
日帰りでは疲労度が逆に上がります。
次回は泊まりに致しましょう。
朝に油揚げと温泉玉子と刻み葱と若芽の載った蕎麦を手繰り、昼には牛蒡と蓮根と鶏の天麩羅の載った丼を掻っ込む。
めづらしく、北大塚へと出向く。
十年ばかり無沙汰していた為、記憶が曖昧であり、店への道程がどうにも怪しい。
思っていた場所とは違うが、店名は合致しているので、どうにかたどり着いたと入店。
実は、当店五年前に旧店舗跡より移転していたという。
なるほど、と隠居した店主の座る席の真ん前へと案内される。
夕:
◆突き出し一品目(冬瓜の煮、はたはたの煮、五目つみれ)
◆突き出し二品目(菅平産玉蜀黍、かんぱち照り焼き、おくら酢味噌和え)
◆鰺のたたき
◆穴子のナッツ揚げ
◆酒(東洋美人、鶴齢、鳳凰美田=ぷんぷん丸、亀の尾)
美味しゅうございました。
並んでいるラーメン店の列に加わらないが、行列のできるキャバクラには進んで並ぶという、仙人の如き風体の隠居に別れを告げ、次の店を目指します。
(了)
ようやっと涼しゅうなりましたなァ。
本日ァ皇居に最も近い演芸場でござんす。
十八時四十五分より開演なんてんで、最寄の支那料理屋で杯一引っ掛けまして、ちょいと間をつなぎます。
・・・小龍包の皮が蒸籠に貼り付いてますな、えェ、この、強情だなァおい。
どうにか時間内にやっつけまして、ずずずいと会場に向かいましょうかねぇ。
『第349回 日本演芸若手研精会 長月公演』@国立演芸場
「寿真打昇進柳家三之助卒業公演」
入船亭辰じん◆狸の札
「お客様にお願いがあります。携帯電話、PHS、アラーム時計の電源は必ずお切りください!」
「私の仕事はこれだけです」
春風亭一之輔◆錦の袈裟
「後程、三之助あにさん真打披露の口上がありますから、若手研精会勢揃いです」
「(三笑亭)夢吉さんは脇でいい仕事があるらしく、来ておりません」
「おかみたーん」
「おかみたんなんて呼ぶんじゃァないよ、みっともない」
「じゃァ、ハニー」
与太郎に『明烏』における若旦那時次郎の台詞を吐かせます。
「大変結構なお籠りでございました」
瀧川鯉橋◆だくだく
口調が師匠そっくりですな。
「たったひとりの芸協です」
入船亭扇里◆藁人形
扇里あにさん、近々真打昇進を控えております。
「ひとの口上に出てるばやいじゃないですね」
お仲入りで御座ィます。
口上◆市楽、こみち、一之輔、三之助、扇里、遊一、鯉橋、小駒(並び順)
緞帳が上がりますてぇと、紋付袴姿の噺家さんらが平伏しております。
柳亭市楽
「急遽司会を仰せ付かりました」
「まずは柳亭こみちよりご口上がございます」
柳亭こみち
「三之助あにさんは大変心の広い方です」
「毎年、三之助あにさんの家に集まる会がありまして」
「私はDVDライブラリーから二、三枚借りてゆくんですが」
「一度も返せと云われた覚えがございません」
「私の野望はあのライブラリーを少しずつ自宅に持ち帰ることです」
「隣が柳家の流儀が大嫌いな一之輔あにさんです」
春風亭一之輔
「こみちさん、三十超えての袴姿ですよ。・・・どの面下げてねぇ」
入船亭遊一
「三之助あにさんからPCをもらいました。ディスプレイはありませんでしたけど」
「協会のホームページ委員会です」
「圓朝祭のホームページ更新は、三之助あにさんがいないとどうなるかも分かりません」
「この会のチラシも三之助あにさんが作ってますね」
「卒業してもチラシ作りに来て欲しいと思います」
瀧川鯉橋
「何を話したらいいんですかね」
「この中で私だけが芸協なんで、なかなか話すことがね・・・」
「・・何年か前に三島の駅で偶然会ったことを思い出しました」
「私の師匠鯉昇のお供で行ったんですよ」
「三之助さんは、当時小ざると呼ばれてまして、(柳家)喜多八師匠のお供でした」
「ご案内かとも思いますが、三島では毎月第二と第四水曜日に落語会がありまして」
「喜多八師匠とうちの鯉昇、まァいわゆるダブルブッキングだったんですね」
「おふたりの香盤(格付け)はほぼ同期なんでさほど変わらないんですけど」
「うちの鯉昇の方が僅かに上で、『あにさんすいません』って喜多八師匠が謝ってました」
「そんな三島での思い出です」
柳家三之助
「いや、あの後ね、喜多八師匠から『三之助、すまん』なんて云われちゃったりして」
「来た時は新幹線だったんだけど、やっぱり仕事がなくなっちゃったから」
「帰りは各駅で帰ったんだ」
金原亭小駒
「来月より二ツ目筆頭」とのご紹介でした。
「経験から云いますと、真打になって卒業した際にはですね」
「ご贔屓の方々も同時に卒業されます」
「がくーんと一度は落ちるんですが、やはりそこは残された二ツ目が頑張りまして盛り上げます」
「で、卒業と同時に、こう、がくーんと、この繰り返しです」
入船亭扇里
「あたしも下席より真打披露興行となります」
「高座での絶句がいちばん多い三之助さんでした」
「よろしくお願い致します」
柳亭市楽◆鮫講釈
「柳家小三治と掛けまして、性質の悪い風邪と解きます」
「そのこころは?」
「席(咳)を押さえるのが大変」
「入船亭扇橋と掛けまして、寝相のよくない女の寝床と解きます」
「そのこころは?」
「まくらの行方が分からない」
「ほな、上方でいきまひょ。桂米朝と掛けまして、ピントの合わない写真撮影と解きます」
「そのこころは?」
「呆けとる呆けとる」
柳家三之助◆野晒し
「前座時代は根多がほんとに少なくて、『道灌』ばっかり演ってましたね」
「他の前座に聞いたら、みんな二十や三十持ってるんですよ」
「六つぐらいしかない噺をね、毎月演るんですよ、毎月ですよ」
「またか、また道灌か、って顔をされるんですよね。やがて諦めてくれますが」
「そのお蔭で、この会のお蔭で図々しくなりました」
当会、昨年に亡くなられた方なんですが、主宰の稲葉守治氏の審査が大変しびあだったらしくてですねぇ、前座で切られる方もいらっしゃった中、二ツ目として抜擢され、そして真打昇進にて卒業するてぇのはやはり、十年単位の歳月を噺家仲間と苦楽を共にし、研精を重ねてるだけに感慨深いものなんでしょうなァ。
江戸の仇を長崎なんてんで、赤坂見附で炭火ィ焼きましょうかねぇ。
(了)
※記憶が曖昧な為、正確な表現ではない箇所もございます。
勝手ながらご了承いただきたく、お願い申し上げます。
まっすぐに帰ろうとしていたのだ。
内なる理由として、
(1)外食として食べたい対象物を容易に想像できないから
(2)台風9号ことマーロウが東海地方まで迫っているから
(3)世話の焼ける子猫ちゃんがいるから (何それ)
(4)『ホタルノヒカリ2』が観たいから (もっと何それ)
とまァ虚言もいささか含んではいるのだが、まっつぐ帰宅きぶんで職場を離れたのだ。
・・・着信があるまでは。
ほどよく乗り換えて、西新宿に来ている。
先駆けて早くから飲っている連中(♂と♀)と合流。
始発の優先席で完全に横になれる猛者どもだ。
これが7時台となると、脚で蹴られるね。
「お前ら、ひどいよ」
お前もたいがいひどいよ。
「俺はそうでもないね」
いや、お前がいちばんだね。やらかし率高すぎ。しかも致命的なの。
「何をぅ。ていうか俺こないださ、カラオケでこいつが割ったグラスを片付けたんだぜ」
ああ、それ知ってる。それは見てた。こいつがははーんて顔して唄ってる横で拾ってた。
「だろ? 」
だろじゃねぇよ。破片拾うまではいいんだけど、その後で隠蔽しようとしてたんだ、お前は。
「いんぺい?」
お前は割れたグラスを隠そうとして、おしぼりを幾つも被せて見えないようにしてたから、店員が下げに来た時に危ねぇから止せって止めたんだ。
「えー? 全然覚えてない」
お前がひどい。
「でも割ったのはこいつだよ?」
お前らまとめてたいがいひどいんだよ。
帰りは山手線ぐるぐるツアーに飛び入り参加しないようにせいぜい気を付けるんだな。
(了)
存在しない肉体の部位が痛む症状を幻肢痛という。
個人名を出すのもあれだが、例えば戦中南方で左腕を失った水木しげる御大が「左手の甲が痒い」と仰るのに近いと云えば理解されるだろうか。
時には激痛を伴うとされ、
「電流を流した万力で潰されるような痛み」
とこれまた想像するに気を失いかねない衝撃の喩えである。
で、この場合、つまり私には失った「肢」もなければ、摘出した臓器さえあるはずもないのだから、正確な喩えか否かはいささか暗いのだが、腹部というか胃腸というか、その周辺の臓器がぼんやりと痛むというか、何となく不快感というか、何かこうもやもやとした雰囲気となっているのかと問われれば、まあそうかな程度の症状が続いており、果たしてそれが何なのか、ただ消化器科への通院を余儀なくされた立場であることを先延ばしにしている結果の代償に相違ないと、ほどよく酩酊した脳で思考するのだった。
・・・しきゅう?
(寥)
きょうは「かじょうがき」ないちにちでした。
◆きゅうしゅうぶっさんてん
ながさきぶたまん、みやざきわぎゅうまきおにぎり、かごしまとくじょうさつまあげ、おおいたうにあわびさざえめし、ふくおかめんたいこ、くまもととんこつらーめん。
あれ? さがは?
うでにたとぅーのはいった、とてもまともなしょくについているようにはみえない、ぼうしひげめがねのおとこは、どのぶーすでもかうようなかおをして、わかったふうにうなづきながらししょくをつづけています。
ぼくにはずうずうしさがたりないのか、ひとまえでいいかおをしたいのか、なにひとつししょくしませんでした。
◆うぉーたーぷるーふ
にちようびにこうにゅうした、すうぇーでんせいのぼうすいがたすとれーじあくせさりー、「ふぉるだぶるもばいるぽーち」にけいたいでんわをいれてみます。
これでおおあめのひもみずにおちてもだいじょうぶだぞ!
あれ? これ、なんで? ながさがたりない・・・?
・・・はいりません。(なみだ)
けいたいでんわはひょうじゅんてきなさいずのはずですが、じっぱーぶぶんが3じゅうこうぞうなためにしゅうのうぶぶんのながさをちぢめているようです。
なんのやくにもたたない、でざいんだけのおされあいてむげっととなりました。
◆げつ9
うれしすぎてしゃがみこむひとをはじめてみました。
しょくばでいちゃいちゃするのはいかがなものかとおもいます。
◆ゆうげ
すぎゆくなつのげんていめにゅーです。(うそ)
ぱるまふう ぱるみじゃーのれっじゃーののふぇでりーに 〜しーうぃーどをそえて〜
◆よやく
5ねんかんに3どめのよやくをします。
りれきをしんじるならば、ぜんかいは2ねんまえでした。
それがなんのようじだったのか、まったくきおくにありません。
こんかいもなにをよやくしたのかわからなくなりました。
◆おきあみ
なつかしい「かいようせいぶつ」からめーるがとどきました。
ぶんめんはきんきょうをたずねるようなそうでないようなあいまいなないようです。
ねんに1どくらいのやりとりですが、まいかい1おうふくでおわりになります。
おそらく、へんしんはらいねんのいまごろでしょう。
◆ふくつう
「ふくやまつううん」ではありませんよ。
なにかいへんがおきているきもしないでもありません。
ぼんやりと「かんぽうやく」をふくようします。
◆きぜつ
24じまえにきをうしないます。
ゆめはきっとみないでしょう。
おやすみなさい。
(おわり)
"5ºFestival Brasil 2010"
Data 04 e 05 de Setembro (Sabado e Domingo)
Local Parque Yoyogi (toquio)
Brazilian Chorizo e Churrasco Frango (BBQ Chicken)
kabāb with Molho (from Syria 1914-1918)
(fim)
(-0906 em construção)
(-0906 Durante preparações de imagem)
まだ陽も高い17時よりも前から飲んだくれ始め、着信で知った知人からの誘いすら都合のよい脳内変換で翌日と思い込んで即答するも、実は当日の今日これからの会合だったと知ったところで後の祭り。
謝罪の意を込めた返信の文面すらもぐだぐだである。
そして、西新宿にて同年代の男と交わすのは、「メロコアって何?」という議題。
「最近の奴らは飛ばないねー」
何だっけ、ライヴハウスの話?
「そう、俺ん時なんて毎回々々、誰かしら逆さんなってたし」
あー、犬神家ねー。
「当時なんてさ、こんなタトゥーの物騒な奴らがふつうに後ろの方でxxでxxしてるわけよ」
治安悪っ。
「今なんて無理よ、全然。演奏なんて即中止でxxがxxして、すぐ連れてかれちゃうから」
へー。ところで、メロコアってまだあるの?
「いや、もうそんな呼び方はないね。昔は『みんな死ね』的な内容の歌詞だったけど、今はみんな『愛だの恋だの』になっちゃったから」
じゃあ、何て云うのさ。
「何だろう。あ、そうそう、真後ろにいる人たちに聞いてみなよ」
その言葉で思わず振り返ると、モヒカンが緑色の革ジャン男と、スキンヘッドにサングラス着用の男が向かい合って静かに杯を酌み交わしているという非日常な絵面がそこに。
うっかり目が合いそうになり、店員を探すような素振りの後で実際に呼び付けたりしてその場を取り繕う。
聞く相手として人選的に間違っちゃァいないが、海外での路上にて道を尋ねるよりも敷居が高いぜ。
(了)
"JAPAN RUGBY TOP LEAGUE 2010-2011 WILD CARD TOURNAMENT"
@Chichibunomiya Rugby Stadium
TOSHIBA Brave Lupus vs SANYO Wild Knights
...Maybe, Sanyo Wild Knights won this game.
(End)
(-0906 under construction)
(-0906 Please pass taking care due to construction)
昨年傘寿(八十歳)を迎えたという古老が二十五年よりも以前に著した書籍を読んでいる。
江東区常盤生まれの古老が半生を振り返る際に欠かせないのは、屋台から漂う香ばしくも芳しいウスターソースの焦げる匂いであったという。
古老流ソース焼きそばの特異点は、天かすにある。
市井の食料品店等で販売されている袋詰めの揚げ玉は使用せず、天麩羅や掻き揚げの余り、つまりリアルな意味での天かすを使えという。
何故なら、料亭や天麩羅屋から出る天かすには、海産物や野菜のエキスが染みており、それが焼きそばの仕上がりを左右するからと説明が付く。
そりゃァ無理だぜ、爺さんよ。
まァ自流に堕ちるには、それなりに理由はあるものだと理解する。
一、買い出し
◆焼きそば(蒸し麺)
・・・ 「生麺」は不可である。古老の放つ理由は「大変なことになる」から。
◆キャベツ
・・・ 品質は問わない、腐れてさえなければ。
◆天かす
・・・ 上記の理由によりリアル志向は諦め、市販の揚げ玉を使用。
とはいえ、商品名は「天かす」である。
せめてもの海産物エキスとして、「海老入り」を買い求める。
◆紅生姜
・・・ 赤くて結構。
◆ウスターソース
・・・ さらさらでなければならない。古老曰く「とんかつソースは却下」。
二、仕込み
何のことはない、キャベツを1センチ片にざく切るだけである。
三、点火
フライパンをがんがん熱する。鉄板使用でも同様。
四、油
ここが最大の難関で山場で正念場である。
かく云う小生、ここでしくじる。
何と、古老はあえて油を用いない。
「熱したフライパンに天かすを敷き詰める」という。
「自然と油がにじみ出てくる」とある。
市販の揚げ玉は、きゅうきゅうと哀しい悲鳴を上げながら焦げゆくのみである。
何度も云おう、やはり市販の揚げ玉では代用にならないのだ。
・・・説明を続けよう。
五、具材のせ
1センチ片となったキャベツを天かすの上に敷き詰め、蒸し麺を載せる。
そして、水を注ぐ。
六、味付け
塩、胡椒を適量振る。ウスターソースはまだ早い。
七、仕上げ
水気がなくなるかなくならないかというタイミングで、ウスターソースを投入。
香ばしいソースの香りを愉しみつつ、具材を混ぜ合わせる。
麺が千切れるといけないので、箆(へら)は用いず、菜箸をしっかりと持ってソースと麺を絡めてゆく。
八、出来上がり
皿に盛り付け、紅生姜を添えて完成。
全てが茶色である。
紅の色だけが異彩を放つ。
九、いただきます
・・・少しダシ風味が足りないのは、天かす品質の差だろう。
改善の余地は大いにある。
食感はかなり好みである。
ほどよく溶けてソースに絡められた揚げ玉とキャベツのしなり具合が中太の麺によく合う。
十、いってきます
さて間食も済んだところで仇討ちに出掛けよう。
江戸の仇を長崎で討つてんだ。
あ、ってことはちゃんぽんかな?
今宵はこの辺で。
(了)
創業昭和三十三年という。
「五十三年目の老舗感謝」と銘打って、特定品目が値下げ対象となっている様子。
・・・老舗って自らを述べる単語かしらとも思う。
暖簾越しに店内を覗くと、まだ外も明るく時間も早い所為か、「お一人様」だらけである。
・・・よくよくこういう店に引き寄せられるみたいで、微妙な心持ちになるのは致し方ない。
まァそこは同じ独り身の同志よ、と自動扉の前に立ち、中へと足を踏み入れる。
レジスター横に座っていた店主らしき大陸顔の中年男性がおもむろに立ち上がり、どぞどぞどこでもどぞと猫でも追うような手付きで席へと促す。
入口より右方面の壁際に追われ、隅にある四人掛けの卓に壁を背にして座ると、壁にも卓上にも菜譜(メニュー)だらけであると気付く。
情報量の多さは人心を惑わすだけと知っている大人は絞込みに余念がない。
当店、過去にグルメ大賞を受賞した上海風四川麺が売りという。(何だい、それは)
掲載された画像には、やや褐色がかった白いスープの上に炒め野菜ががっつりと乗っており、所々に白胡麻がちらほらと窺える。
説明文には「特製!」「激辛!」ともある。
・・・何ひとつ脳に入ってこないので、これは止しておく。
決めかねてうろうろと菜譜を眺めていると、「ジース」なる表記があり、「鶏絲」のことかしらとも思ったが、明らかに「飲み物」カテゴリーなので、これがジュースと気付くのに数秒要したりもした。
大陸顔を呼ぼうとするが、奥に座る常連らしき初老の男性に向かって大声で何か話しており、自分の声の大きさからこちらに気付かない様子。
その内容も、わっかいからね若いひとわっかいから若いねー、としか聞こえず、まるで要領を得ない会話である。
ようやく振り返った大陸顔に、五十三年目価格の湯麺を頼む。
大陸顔が厨房に向かってオーダーを告げる。
「ティアンミェ~ン、イ~」(そう聞こえた)
待つこと数分。
湯麺
鶏がら白濁したスープには、定番通りに炒められた野菜(もやし、韮、人参、白菜、木耳、玉葱)と豚肉が載る。
菜の下には、これまた定番な中太ちぢれ麺が沈んでいる。
付属の蓮華でスープを掬う、かなり熱い、口内火傷前提食に相違ない。
木箸で具材を沈めたり、麺を絡めてゆく。
む、決して悪かァないのだが、キクラゲ先生だけが独特な乾物臭を醸して止まない。
湯戻し後の水洗いを失念したらこうなるのは知っている。
とはいえ、完食。
このまま居座って、別の品を頼もうかとも考えたが、そうなると当初の趣旨と変わってしまうので、今宵はこの辺でと退出するのだ。
・・・舌、火傷してるし。
(了)
(0906工期満了)