May 31, 2011

◆『悔恨ト情念』

本日ァ古書店街での落語会でござんす。
開演が十九時なんてんで、其の辺をぶらつきまして繋ぎにペイイチ戴こうかと店に入りますてぇと、やれ十八時開店だ後五分だ十分だなんてぇ云われまして、まァ何処の店も気遣いがござんせん。
やさぐれたまま何杯か戴きまして、ぐだぐだな様子での会場入りとなりんした。

『らくごカフェに火曜会』
@神田神保町二丁目・神田古書センター五階

柳亭こみち◆湯屋番

「こういう会の帰り際によく質問される事がありまして」
「あまりにも問合せが多いので、紙に書いて配ろうかと思いました」
「ご存知の方もいらっしゃるかと思うんですが」
「ドラマ『仁-JIN-』を観てらっしゃる方に質問されるのが、日本生命のCMについてです」
「『あのCMに出てるのはこみちさんですよね?』なんて聞かれますので、あれはあたくしで御座居ますと申し上げて置きますが」
「そうですね、撮影時の事等を三分だけお話し致しましょうか」
「あ、此れから三分延びますんで」
「撮影は浅草にあります木馬亭で行われました」
「美空ひばりさん、森光子さん、オノ・ヨーコさん、荒川静香さん等、数数の有名人の方の映像が流れまして、あたしが一瞬映るだけなんですが」
「で、最後に『2011年の女性たちへ』と出るんですね」
「・・・今年はいいんですけど、あたしは来年何をしているんでしょうか・・・」

「落語には似た噺がよく御座居ます」
「ABCと選択肢がありまして、Bの噺をしようとしたら途中からCになってしまうという事もあります」
「本日は其のBをお話ししようかと思いますが、もしかしたらCに行ってしまうかもしれません」

此のABCは飽くまでもあたしの想像の域を出ませんが、大家のしくじりの若旦那が二階に厄介になっている「十階の身の上」というしちゅえーしょんから鑑みまして、以下の三つに特定されるかと存じます。

A:「船徳」 ・・・ 船宿に奉公
B:「湯屋番」・・・ 湯屋「櫻湯」に奉公
C:「紙屑屋」 ・・・ 紙屑屋に奉公

金原亭馬吉◆錦の袈裟

「こみちさんもねぇ、入り立ての頃は素直でしたね」
「何でも云う事を聞いてくれてまして」
「あたしは当時立て前座でして、もう新人の子には立て前座が頼りなんですよ」
「で、新人も段段と前座の仕事を覚えて参りますと、段段と立て前座も頼りにされなくなるんですね」
「・・・もうそうなると駄目ですね、全然云う事を聞いてくれなくなるんですよ」
「・・・あんなに優しくしたのに、先に結婚しやがりましてねぇ・・・」
「あ、此れ今だから云うんですよ、ほんとに、ねぇ・・・」

お仲入りで御座ィます。

金原亭馬吉◆厩火事

サゲ:
「お前ェに怪我なんてされてみねぇな、明日ッから遊(あす)んでて酒が飲めねぇ」

柳亭こみち◆祇園祭

本編:
京者が祇園祭での鳴り物を口で表現するんですがねぇ、高音域から始めたばっかりに、
「・・・ちょいと高過ぎたんじゃねぇか」
なんてぇ自嘲気味で御座ィました。

縄でも手繰ろうかなんてぇ思い立ちまして、蕎麦屋めいた店の暖簾を潜りますがねぇ、後三十分で閉店ですなんて無下にされましたてんで、江戸前もどきの啖呵ァ切って扉ァ力の限り閉めて再び彷徨(さまよ)いますな。
ささくれた儘河岸ィ変えまして、海鞘(ほや)と饅(ぬた)を肴に冷酒を幾杯か戴いて古書店街の夜は更けゆくので御座ィます。

(了)


<覚ヱ書キ>
◇"MONTAGNE NOIRE" Syrah
◇飛露喜(福島・会津)
◇王禄(島根・出雲)

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May 30, 2011

◆『副長ト隊員』

えェ、お足許のお悪い中の落語会でござんす。

『第十八回 市馬・菊之丞二人会』
@西池袋一丁目・池袋演芸場

柳亭市也◆転失氣

本編:
和尚、花屋に「てんしき」を借りに行かせた小僧より「今朝御御御付けの具にして食べた」との言を聞きまして、
「あれは今ァ旬だからなァ」
と返します。

古今亭菊之丞◆浮世床

「先日、NHKの収録がありましてね」
「『キャンパス寄席』という番組でして」
「目白大学という学校でした」
「目白大学と云っても目白にあるわけではないんです、埼玉県岩槻市にあるんですよ」
「最寄の駅から車で十五分という場所でして」
「司会はサンドウィッチマンという漫才師の方でした」
「こちらの学校の卒業生というのが、作家の江國香織さん、タレントの酒井和歌子、後は猫ひろしさんですね」
「・・・半分ぐらいのお客さんからしか反応がありませんね」
「で、このキャンパス寄席にも出てるんですが」
「共演者がザ・たっちという・・・皆さんご存知ですかね」
「双子で、こう小太りの、『幽体離脱~』というネタの人達でしてね」
「しかもこれ、ラジオ番組なんですよ」
「まず映像で双子である事が伝わらない上に、双子ですから声まで同んなじでして」
「ラジオだけ聴くと、一人で喋ってるみたいにしか聞こえないんですよ」
「彼らは演り難そうでしたよー」
「樂屋でこんなんなって項垂(うなだ)れてました」

「猫ひろしさんは楽屋入りする時はびしっと縞のスーツを着てらっしゃるんですが」
「出番が近付きますと、・・・よれよれのTシャツと短パンに着替えるんです」
「・・・普通、逆ですよね」

「この間、床屋で髭なんぞ当たって貰ってますてぇと、聞こえて来たのがラジオの番組でして」
「FMえどがわという局の放送でしてね」
「レポーターの方が『今日はですね、江戸川区は篠崎にあるスタンディングバーに来ています』とか云ってるんですよ」
「はァん篠崎ィ? あんな所にスタンディングバーがあんのかよなんて思って聴いてましたら」
「・・・あ、この中に篠崎の方、いらっしゃいませんよね? ・・・居ませんね」
「そしたら放送中にですよ、そこの店の大将がですね」
「『スタンディングバースタンディングバーって五月蝿(うるせ)ぇなッ、うちは立ち呑み屋ってんだッ!』って怒鳴ってました」

本編:
町内の若い衆の馬鹿ッ話、
「『太閤記』は姉川合戦、真柄十郎左衛門の件における横板に鳥黐(とりもち)な抜き読み」、
「芝居小屋と茶屋での夢」
は演ってましたが、此れに続きます、
「煙管の雁首と吸い口を取り替えられた上に将棋盤の側面に鬢付けを塗られてしまい手駒が飛ぶの飛ばないと騒いで喧嘩」
の件は端折ってらっさいました。

柳亭市馬◆船徳

本編:
船宿船頭の若い衆の四つのしくじり、
「新造の艫先を欠く」、「坊主(軍鶏)にて店の半纏着で大喧嘩」は演ってましたが、此れに続く、
「隣家の取った店屋物の天麩羅蕎麦と代金をこっそり頂戴する」、「油屋の猫を捌いて喰う」
は端折ってらっさいましたな。

お仲入りで御座ィます。

出囃子『吾妻八景』が三味の音と鳴りまして幕が開きます。

柳亭市馬◆狸の賽

本編:
仔狸が小僧らにとっ捕まってる描写は割愛しまして、既に助けられた後に恩返しとして八五郎宅を訪れます。

古今亭菊之丞◆大山詣り

「山岳部でした、・・・自称ですが」
「・・・ほんとはハイキング部なんですがね」
「大山は千二百米(メートル)級の山でして、意外と本格的なんです」
「江戸ッ子にとっての御山と云いますてぇと富士山ではありません」
「目指すは相模ノ国、今の神奈川県、大山は阿夫利神社で御座居ます」
「往きは赤坂から道玄坂を抜けて東海道を行きまして」
「帰りは藤沢を廻ったなんてぇ聞きます」
「・・・今の表現で云いますと」
「行きは246、帰りは1国で」

サゲ:
「御山は無事で御怪我無くって御目出度い」

追い出しが鳴りまして、お開きでござんす。
噺の尺を幾つか端折った感はありましたがねぇ、意外にもみっちり二時間半の長講でした。
中國東北部は山東省の辛ぇ品を求めて移動しますな。

(了)

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May 29, 2011

『入梅ト僥倖』

渡し守 櫓さえ寝かせて 舟を漕ぎ
不義

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May 28, 2011

"locomotora y tren"

"fiesta de aficionado Flamenco" vol.16
cantante;
Curro Valdepenas

I-1
"Fandangos de Huelva"
I-2
"Alegrias"
I-3
"Tientos"
I-4
"Tanguillos"
I-5
"Solea"
I-6
"Tangos"
II-1
"Sevillanas"
II-2
"Tientos"
II-3
"Guajirá"
II-4
"Fandangos de Huelva"
II-5
"Alegrias"
II-6
"Tarantos"

(fin)


//memorándum//
涼拌干絲、猪肉水餃子、腰果鶏肉
"Inishowen"
"Macallan"

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May 27, 2011

『説諭ト開錠』

昼時分、喫煙所、隣席、見知らぬ上司らしき中年男性と部下らしき二十代後半男性

小笠原諸島って行った事ある?」
「島ですか? ないっすねー」

「いや、俺もないんだけどさ」
「行く予定でもあるんですか?」

「・・・いや、別に」
・・・あー、そうですねぇ・・・。

・・・え? 終わり?
無理に会話しようとして着地点すら見えなくなっている。
・・・気を付けねばなるまい。

(了)


<覚ヱ書キ>
夕:とろ鰺一夜干し、蚕豆、切り欠き鰊

<20110424>

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May 26, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾参回)

<贋作英雄譚>
眠過ぎる。
という訳でもないが、早早の店仕舞いも考慮しつつも人間狩りの旅に出る。
と表現してしまうと人聞き悪い事此の上も無いのだが、世の為人の為という大義名分を掲げた世直し巡業である。
一軒目、人世の生血を啜る輩どもを太陽の光の名の下に殲滅
所管の組織に彼等の遺灰を持参すると換金して呉れるという至れり尽くせり具合。
二軒目、不埒な悪行三昧の下郎どもを正義の鉄槌とばかりに皆殺し
剥ぎ取った遺品を血糊も拭わない儘、懇意にしている商店に持ち込んで売り捌いて上客扱い。
三軒目、醜い浮世の鬼どもは人型でこそあれど知的水準に稍(やや)届かず、最下層の暮らしを強いられているので、屈強頑丈な図体に由来する腕力体力等物理的な手応えの割には貰いが少なく、生態系が狂う程度に根絶やししても、過程に於いては手傷を負うばかりで損得で云うな感も否めない。
一汗流し、いやァ狩った狩ったと云いながら勝ち得た戦利品を死屍累累とした殺伐たる事件の現場で拡げて品定めをしている。
・・・確かに捕った悪狸には相違無いが、死骸の前で皮算用する守銭奴に成り下がったかと思うと、正義の味方としては子供達には見せたくない姿でもあるのだ。

(續く)

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May 25, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾弐回)

<三ツ巴>
「地球」という大仰な意が名付く洞穴前に居る。
地球は意訳であり、直訳すると「岩乳」である。
まァ其れはさて置き、空は晴天、小鳥が囀り花も咲いているというのに、薄暗い地下へと潜ろうとしている。
此処は「黒川弓子団(仮)」と名乗る、近隣を荒らす盗賊どもの巣窟となっているという。
早速木戸を押し開け忍び入って見ると、大勢の人数の怒號と悲鳴が洞内に響き渡る。
黒弓っ子倶楽部の仲間割れかしらと訝(いぶか)しむが、如何も様子が違うようだ。
侵入者対策の岩石落下罠も楽に作動し始め、複数の人間が圧死する厭な音が響き、内部は大混乱大混戦の体を相している。
数人が奥へと駆けて行き、弓矢を番えるぎりりという撓り、びょうと空を裂く摩擦音、ぎゃあという断末魔が幾つも聞こえ、蔭から覗いているだけで死骸の山が段段に積み重なってゆく。
同層での混戦が収まり、人気が無いのを確かめてから斃された人人の素性を探ってみると、黒弓ズは元より山賊ズと野盗ズも加わっての総当たり戦となっていたようだ。
漁夫の利とばかりに遺品を漁り、選別しながら貴重品のみを剥ぎ取ってゆく。
死屍累累とした風景を横目に、幾つかの乱戦を見守りながら最深層まで降りてゆくと、黒弓団長が一人ぼっちである。
いや、もう一人、ていうか団長の愛玩する畜生が一匹のそのそと歩いている。
近付いてみると此の飼い犬に名が付いている、其の名も「かぼちゃ」
団長、不思議ちゃんだなァと思いつつ、かぼちゃ犬に何らかの特殊な技を施して団長を襲わせ、此の不毛な戦いに終止符を打つのだった。

(續く)

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May 24, 2011

『起立ト覊絆』

例の東北の一件、同時刻に何処で何をしていたかという話題になる事もある。

「俺? 新宿に居たよ」
仕事してた?

「いやー、仕事してるというより仕事されてたかな
いや、意味分かんないし。

「・・・歌舞伎町だったかなァ」
何をぅ? 接客されてたの? 平日に? 昼間ッから? 強ぇなァ。

「まァ落ち着けって
それはー、支払いとかどうなっちゃうのよ。あー、前金か。

「ちゃんと払いましたよ
それは自慢にならんな

・・・後で知るのだが、上記の「報道機関における『飲食店』と表現される店」での被災は全てだった。
虚偽よりも当会話に続く、津波を指して「ビッグ・ウェンズデー」と呼称する言語感覚は何よりも壮絶だと感じた。

(了)

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May 23, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾壱回)

<僕達ノ失敗>
怠惰と高慢が災いし、一夜にして滅んだ王国が在るという。
然も其の結果、人知を超越した存在の怒りを買った為、滅びの瞬間を永遠に継続するという無限ループに陥る事態と為っており、日日繰り返される日常が滅亡の其の刻なのである。
聞けば、異教徒の軍勢によって城門が破られる際に自軍側にて幾つかの不手際が見受けられ、四つの人為的な失策を正しい道へと導けば或いは滅亡エンドレスが解除されるかもしれないという。
一人目、射手でありながら肝心の矢を武器庫に忘れた女に忘れ物を渡す。
が、此の女射手、元来より数をカウント出来ない為、敵勢が門を越えても尚出鱈目な矢数を口ずさみながら弓も構えずに棒立ちである。
二人目、人を救う身でありながら「俺が俺が」としか云わない僧侶短剣を渡す。
渡した瞬間に「俺が俺が」と云いつつ斬り付けて来やがって、其の隙に敵勢の飛び道具で斃される。
三人目、婚約者を捜しているという男、彼が「婚約者」と言い張る人形を敵勢の一人の背中にそっと載せてみる。
婚約者を敵に奪われたと思い込んだ男、孤軍奮闘するかと思いきや、只其の場に蹲(うずくま)るのみである。
四つ目のミステイクが何なのか分からず、万策尽きてしまう。
如何にも動きが取れないので、恥を忍んで業界の先人に事情を訊ねてみると、「終りが無いのが終りなのさ」と返される。
何だ其れは。
「哲学的でしょ」
いや、そんな抽象的な話はしてない。
「手詰まりするのは此の件だけじゃないからさ、もっと構えていかないと人生愉しくないよー」
・・・。

詰みの因果関係も分からぬ儘、振り返りつつも滅びの時を繰り返す王国を後にする。
其の行動における自由度の高さが進行に災いしていると感じた瞬間である。
・・・まァ色んな人と話してはみたけど、皆あんまり善い人でもなかったみたいだから、ぶっちゃけ此の儘滅び續けてもいいや。

(續く)

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May 22, 2011

『騎士ト獅子』

"Oktoberfest 2011"
独逸はミュンヘン十九世紀初頭から毎年催されているという動員数六百万人規模の麦酒祭り、オクトーバーフェスト
日本での開催は今年で六回目を迎え、本日も日比谷公園にて開催されていたのだが、午後から風雨が強まったのを理由に不参加とした。
「何故に五月にオクトーバーか」と問われれば、現地では九月半ばから十月上旬までの期間に行われているからだと答えるしかない。
代案として室内にて飲んだくれてやろう。

以下は覚え書き

#1
啤酒、紹興酒、香腸、雲呑、炒葱筍
#2
Baird Beer "TEIKOKU IPA"
#3
"Bowmore Enigma" Islay Single Malt
"George Dickel No.12" Tennessee

・・・江戸の仇を長崎で独逸的要素は皆無である。
尾張町を徘徊する理由も無い儘、滞在時間は常に後ろ倒しなのだ。

(了)

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May 21, 2011

『土佐ト壬生』

**壱**
先付◆菜の花の浸しと筍の和え物
菜物◆春きゃべつのみもざさらだ
焼物◆備長炭火串焼き
刺身◆鮮魚三点舟盛り
揚物◆若鶏竜田揚げの霙餡かけ
蒸物◆黒豚と春野菜の蒸篭蒸し~地鶏のがらすーぷ~
〆物◆蒸し饂飩

**弐**
(品名失念)

**参**
(失念)

(了)

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May 20, 2011

"fève et entrepôt"

//un//
//"Abbot Ale"
//"Chimay White"

//deux//
//Santa Marta Bodegas "Vinaredo Godello 2009" (Galicia, España)
//Poelee de Poisson(sweetfish) sauce moutard et bouillons de legumes
//Chateau Fondouce "Cuvee Juliette" Syrah45, Carignan30 Grenache25 (Languedoc-Roussillon, Française)
//blanc asperge
//Paté de campagne
//Cahors L`Authentique "Château Pineraie" (Cahors, Française)
//Confit de cuisses de canard de Barbarie sauce

//trois//
//(inconnu) vin blanc (Italiana)

(fin)

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May 19, 2011

『馬鹿ト愛慾』

實篤を読もうと思った。
言わずと知れた白樺派の重鎮、武者小路實篤(Mushakōji, Saneatsu)である。
最寄の区立図書館が開設するHPより予約し、確保フラグを確認した上で受け取りに行く。
・・・常常思うのだが、図書館員と書店員は如何してこうもxxが薄そうというか、xっさりしているというか、葬x屋みたいというか、x抜け無いのだろうか。
不遜な態度で図書館利用カードを提示すると、図書館員は端末の画面で内容を確認し始める。
「一冊届いてますねー」
一度窓口から離れ、書棚から該当の書籍を探し出して再び戻って来る姿がやたらと不恰好なのが気になった。
「・・・よっこらせと、こちらですね」
と提示されたのは、高さ23糎(センチ)、頁数879の化粧箱の無い豪華装丁本だった。
手に取ると、両手で持って頭上より高く振り下ろせば殴殺可能な重量である。
・・・加害者には為りたくないので、其の儘そっと返却口に置いて図書館を後にするのだった。

「仲良きことは美しき哉」
實篤

(了)

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May 18, 2011

『紅姜ト蕃茄』

まさかの坂を越えられず、都営線二本を乗り継いで降り立つ約束の地
以下は覚ヱ書キ

#00 Andrew A. Watt & Co "Inishowen"
#01 AOC Médoc "Chateau les moines" (Bordeaux, France)
#02 前菜盛り合わせ(蕗リエット、蟹キッシュ、パテ・ド・カンパーニュ)
#03 緑野菜のサフランマヨネーズ(アスパラ、インゲン、スナップ、ブロッコリー)
#04 ゴルゴンゾーラとマスカルポーネの蜂蜜がけ
#05 Henri Bourgeois "Petit Bourgeois" Sauvignon Blanc (Sancerre, France)
#06 筍のバターソテー
#07 茨城産フルーツトマトとホワイトアスパラのサラダ仕立て(フルーツトマト品切れの為、生ハムを代用)

ドラッグストアでは万引きしないで帰ります。

(了)

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May 17, 2011

◆『美輪ト丸山』

本日ァ例の東北の一件の影響にて延期となりました落語会でござんす。

足許の悪い中、地下鉄を乗り継いで降り立ちますは新宿御苑
会場のある建屋にゃァ埼玉発祥のはんばーがー屋が在るんですがねぇ、何故か本日に限って休んでおりました。
致し方無ぇてんで、一度屋外に出まして御苑前にある喫茶店にて麦酒を戴きます。
店内は蒸し暑く、引き戸を開けようと努力しますが、終ぞ自力では無理でござんした。
何か仇してやろうと、螺子式の錠を開けた儘にしまして店ェ後にしますな。

『神楽坂伝統芸能2011 落語・演芸企画「神楽坂落語まつり」
「神楽坂劇場二人会」』
@内藤町・新宿区立四谷区民ホール

元来、三月十五日(火)に執り行われる筈だった本公演が本日、五月十七日(火)に延期されまして、同会別枠の入船亭扇辰・柳家喬太郎両師匠の高座が三月十四日(月)から五月十八日(水)と相成りました。
此れ、数字の罠なんですがねぇ、行かない予定の前日公演が延期後に対となっている公演の翌日となっているてぇのが、脳が劣化したあたしには何とも厳しい記憶作業でして、日付ェ間違ってやしないかといちんち不安になりまして、幾度となくテケツ(前売券)を出しては入れ入れては出し、其の都度ィ見比べたりしてましたなァ。
今ァ此れ書いてても分からなくなりまさァね

柳家まめ緑◆寿限無

本編:
孫の名を最後まで云えてない祖母が登場します。

柳家花緑◆宮戸川

「僕の一番弟子は初花(しょっぱな)と云います」
「師匠の小さんが名付けた最後の前座名なんです」
「僕は初めて弟子を取るに当たって前座名を四十個ぐらい考えたんですよ」
「で、師匠の小さんに考えた名前を見せたら、師匠は初花と名付けました」
「・・・僕の考えた四十個は全否定してですよ」

本編:
締め出しを喰った商家の若旦那、半七は霊巌島の叔父宅へ行こうとしますが、船宿の娘、お花にも叔母が居ると云います。
「叔母が・・・ヨルダンに居ますの」
此の噺、二人が霊巌島にある叔父宅にて二階であれこれする噺なんですがねぇ、花緑師匠はお花ではなくて半七の媚態描写となっておりました。
「其の時、肌蹴た胸元から半七の痩せッ扱けた肋骨(あばらぼね)が・・・」

古今亭菊之丞◆お見立て

前方(まえかた)の花緑師匠の『宮戸川』に対して一言。
「・・・落語に対する冒涜ですねぇ」
まァあにさんに向かってばっさりですなァ。

「噺家は年中着物で通して居ると思われがちですが」
「ほとんど人は洋服で楽屋に来て着物に着替え、高座の後また着物を脱いで前座に畳ませて洋服を着て帰ります」
「今ァ年中着物で通しているのは(落語藝術協会の桂)平治師匠と(落語協会の柳家)さん生師匠ぐらいですかねぇ」
「あたしも家で稽古してる時に気分を変えて浴衣に着替えたりするんですが」
「そういう時に限って宅配便の方が荷物を持って来るんですね」
「家に誰も居ないとあたしが出るしかないですから」
「『はい』って出ますと、『ご病気ですか?』と云われました」
「まァまたあたしが着ると此れが似合うんだ、ほんとに病人みたいで」

「此の間、クリーニング屋にジャケットを出したんですよ」
「袖んところを汚しちゃったんで、『此れお願いしますね』って渡すと『仕上がりは明後日』って云うんですよ」
「で、二日後に受け取って、家に帰ってジャケットを見ますと、全ッ然落ちてないんですね」
「此れしょうがねぇなァって、又店に持ってって『如何なってんの此れ』って云ったんです」
「そしたら、『其れほんとにうちに出したんですかァ、タグ付いてませんねぇ』とか云いやがるんですよ」
「其れでも矢ッ張り証拠が無いてんで、まァ頭に来ましたがもうしょうがねぇやと家に帰りましてカミさんに云ったんですよ」
「そしたらカミさんが云ったのが、『あんたの噺と同んなじね、落ちそうで落ちないのよ』って」
「・・・あれはそろそろ如何にかしなくちゃいけないと思ってます」

「電車に乗ってましたら、あたしが座った目の前に女子高生が二人吊り革に捉まってましてね」
「此の二人が、ご時勢でしょうか、互いに節電自慢をするんですね」
「自分がどれだけ電気を使ってないか云い合ってるんですよ」
「まァ感心な話じゃァないですか」
「『パチンコ店の灯りって要らないよねー』」
「そうだなって聴いてましたら」
「『そうそう、台さえ動いてりゃァいいのよ』って」
「また、もう一人は『あたし、自販機では煙草買わなーい』なんて云ってました」

本編:
あたしの知る限り、五街道雲助師匠と同ンなじ型でした。
共通の大師匠、古今亭志ん生師匠の演ってた型とは考え難いんですがねぇ、何かしらの関連はありましょうな。

お仲入りで御座ィます。

古今亭菊之丞◆替り目

本編:
酔いどれの亭主、女房とおでんダネの短縮系で揉めております。
「じゃァあたし『じ』」
「『ぢ』? 『ぢ』ってぇのは何だよ」
「『すじ』」
「馬鹿、長ぇのを詰めろてんだよ、短ッかいのは其の儘でいんだよ!」

柳家花緑◆出来心

「僕が十二歳の時に教わった泥棒噺で御座居ます」
「道徳的教訓は何ンにも御座居ません」

追い出しが鳴りましてお開きでござんす。
新宿三丁目が近ぇてんで、徒歩にて移動しますな。
海底に暮らす軟体生物二種の内臓を引き摺りだして混ぜ合わせた塩辛の名を冠する葡萄酒に特化した欧風居酒屋に向かいまして、一盞傾けるは西班牙産の代物でござんす。
渋味重みとすぱいしぃさが相成りまして、夜は更けてゆくので御座ィます。

(了)

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May 16, 2011

『幻想ト猊下』 (第参拾回)

<蓑山太郎(三十八歳・無職)>
其れは巷間では「ミノさん」と呼ばれている。
昼の番組に出演する方の名字敬称と同音ではあるが、当然別人である。
彼等は緑深き森林に住んでいる。
又、遺跡、廃坑の奥にも潜んでいるという事例もある。
(野で捕らえられ、番犬替わりの放し飼いであろう)
稀に得物を用いる個体も在る。
腕力に頼った殴打系重量級の得物ばかりである。
鼻息の荒さと図体の大きさから遠目からでも容易に発見される。
的が大きい為に飛び道具で狙われ易い。
走る姿に「えっほえっほえっほえっほ」と掛け声を被せてやるとより滑稽味が増す。
斃した後の戦利品は雄雄しく天に向けて尖ったである。
擂り潰して食すと苦いが滋養が在るという。
二頭で行動している姿もよく見受けられるが、番(つがい)だろうか。
殺伐とした世界に生きていると、日中に彼等が草原を闊歩している姿さえ牧歌的である。
・・・まァぶっちゃけだしな。

(續く)

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May 15, 2011

『下垂ト贅六』

飲ンダクレト喰イ倒レノ為ノ覚ヱ書キトス。

#01 cava ... Spanish white sparkling wine *1
#02 olive and mozzarella
#03 fried mashroom(SHII-TAKE) and sprout(TARA-NO-ME)
#04 "Le paillee de Bourgogne" *2
#05 "Pave d'affinois" *3
#06 buttered omelet with mushroom(SHIMEJI)
#07 Weingut Dr. Loosen "Villa Loosen" Mosel Riesling (Mosel, Germany)
#08 鰹ノ造リ
#09 鰺の干物
#10 魳(カマス)ノ干物
#11 皮剥ノ干物
#12 Robert Mondavi "Woodbridge" Cabernet Souvignon (California, US)
#13 spaghetti peperontino con germoglio(TARA-NO-KI) ed un cavolo cappuccio *4
#14 strawberry and banana cream roll
#15 BALI coffee

※1:西班牙産、銘柄失念
※2:仏蘭西産、白黴チーズ、「麦藁色」
※3:仏蘭西産、白黴チーズ、「石畳」
※4:キャベツとたらの芽のペペロンチーノ

(了)

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May 14, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾玖回)

<波止場の灰頭巾ちゃん>
・・・長かった盗賊稼業も愈愈(いよいよ)佳境へ。
長年謎の人物とされていた組合長からの信頼も順調に勝ち得て、今では社命を左右する大仕事ですら任されている。
此の組合長、三百年も生きていると噂されている伝説の人物で、人知を超えた存在から盗んだとされる灰色の頭巾を被っている。
・・・其の姿は若干寄り目にも見え、絵的には大変に間抜けな被り物ではあるのだが。
其れはさて置き、今回の指令に限って云えば、組合規定として第一義に掲げている「殺生ヲ禁ズ」すら免責するという。
此れは余程の内容に違いないと身が引き締まる思いである。
誰からの依頼ですかね。
「誰からの依頼でもない、名誉の為だ、此れは伝説になるぞ、誰もが為し得なかった事をお前がやるのだ」

何と動機に乏しい指令だろうか。
厳戒態勢にて難攻不落とされる王宮図書館より一本の巻物を貰って来いという。
貰って来い、とは?
「実在する常連の名で閲覧を予約してあるから、盲目の図書館員が棚より探し出して来た巻物を其の儘持って帰って来い、いいかくれぐれも云って置くが、一言も喋るなよ、ばれちゃうから」

ばれちゃうからって云ったって、其の常連も只じゃァ済むまいとは思いつつも決死の盗みを実行。
・・・艱難辛苦如何ばかりよれよれに為りながらも巻物を持ち帰る。
た、只今帰りましたァ。
「お前凄ぇな、そう此れよ此れ、そうかそうか頑張ったな、まァゆっくり休めと云いたい処だが、もう一つ頼まれてくれ」
何を云うんだ此の変態腐れ頭巾!とは云わなかったが、組合長より偉効を労われつつも、近郊にある領主夫人指環を届けて欲しいと頼まれる。
何だ色気付きやがってと思いつつ、伯爵夫人の下を訪れてみると、謁見の間に人相の悪い男が居るのが目に入る。
何か不穏な気がしない訳でもないが、此の儘指環を手渡さないと話が先に進まないので兎に角伯爵夫人の下へ。
件の男はやにわに立ち上がると、此方へにじり寄って来る様子。
見れば、薄汚れた布を手にしている。
「今まで留守にしてて済まなかった、俺だよ」
「まァ貴方、十年間も何処へ行ってらしたの」

聞けば、男は失踪中の伯爵であり、帝都を震撼させた大盗賊の長であった。
十年前、呪われた頭巾を被ったばっかりに公務を家庭を放り出さざるを得ず、今日まで頭巾を脱ぐ方法を探しており、漸く件の巻物の効果で脱着可能となったいう。
「で、お前が次の長になるのだ」
・・・其のあまりいけてない頭巾は被らなきゃ駄目すか?
「悪事を働く時以外は脱いでれば良かろう」

という経緯で今では大親分の座に就き、富める者から貧しき者への上がりの一部を上納金として受け取って、納税時に申告する収入の欄には書けない類の金銭を手にする事になるのだが、其れは又別の話。

(續く)

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May 13, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾捌回)

<貧スレバ鈍ス>
貧者の為の盗賊組合へ就職活動中。
所謂ひとつの義賊である。
富める者より奪い、貧しき者へ配り、残りは組合の運営資金となるという。
まずは親方と呼ばれる泥棒頭との面接から始まる。
面接官は眉間に刻んだ皺にも年季が入った、此の裏稼業の辛さを顔中に滲み立たせた中年男性である。
今期は就職希望者三名の内、採用は一名という。
一人は頭の回転が然程良くなさそうな男、もう一人は角角で小回りが利きそうな女である。
よろしくお願いしまーす。
「全員揃ったな、では実技試験を始めようか、試験の内容を発表する、街に住むとある人物より日記を盗んで来い、先に持ち帰った者が合格だ」
ある人物って誰ですか。
「街に居る物乞い等は我我の眼だ耳だ、僅かな小銭で知るべき情報は得られよう」
って、もう駆け出してる奴が居るんですけど。

小回り女は既に目標を知ってるかの如き疾走で迷い無く、日記の主の住処を目指している様子。
ずるいじゃん。
後を付け回し、目標である家屋に忍び入った処で、女との家探し一騎打ちとなる。
(頭の回転があれな男は家さえも見付けられない)
僅差で日記を奪い、面接官へ献上。
「お前は今日から我我の仲間だ、『こそ泥』から始めるがいい」
・・・。
不名誉且つ屈辱的な役職名を与えられ、怪盗や快盗には程遠い立ち位置からの成り切り義賊生活の始まりである。

(續く)

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May 12, 2011

『幸甚ト拷訊』

霧雨そぼ降る中を歩いている。
雨脚は強さを増すばかりである。
道行く人の傘の多さに辟易しながら流れに逆らってゆく。
酒精と幾ばくかのを求めて久方振りに訪れる地階の店である。
先ずは一盞。

◇三十六人衆(山形・酒田)
◇綿屋(宮城・一迫)

いささか時候は外れるが、鍋で煮込まれた具材も幾つか。
大根、生麩、牛たん、里芋、蛸、つみれ、筍
他、大将手製の葛豆冨を一丁。

河岸替えする頃合いに表へ出るが、未だ降り續けている。
なんぞ持たなければ、手にする煩わしささえ覚えないのに。

(了)

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May 11, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾漆回)

<終リノ始マリ>
再び杖の爺ィの土地に居る。
王国の滅亡が差し迫っているという。
「お前を後継者にしようと思ったが、其れも儘為らん」
初耳ですけど。
「儂ゃァもう召されるが、後は何とかしてくれ」
いやいやいや、爺ィ、全部投げ出してゆくんかい。
「残念だ」
まだ行けるって。
「いや、もう逝く」
えー? って其処の執事も止めろって。

杖の爺ィは勝手な世迷言を並べると、文字通り消失
棄て台詞が「お前の目玉を刳り抜いてやりたかった」ってそんな言い草があるかい。
茫洋(ぼんやり)と棒立ちに為らざるを得ないので、執事に此れからの展開を尋ねる。
「旦那様は逝ってしまいました」
今見てたってば。
「貴方様が御世継ぎで御座居ます」
あたしゃァ血統的に無理だろう。
「確かに前例は御座いませんが、先代は貴方様に何かを見出したので御座居ましょう」
見出すのは勝手だけど、どうすりゃいいのさ。

詳細をよくよく聞いてみれば、爺ィの所持していたが必要という。
今の杖は爺ィが召された為に効力を失っており、只の抜け殻にも等しいので、新しく造る為の手順を爺ィが過去に遺恨を残した男から教われと告げられる。
内容はまァ痴れた話で、件の男、幽閉された不死の図書館長を訪ねて手順を尋ねてみれば、毎度毎度の人死にありき素材集めで、心を痛めながらの小旅行を経て如何にか杖を入手。
此れかい?
「其れで御座居ますが、今此の地は大変な騒ぎになっております」
真打登場?
「はい、先代の旦那様が恐れていた通り、大軍を率いて攻めて参りました」
其奴を斃せば幕が降りるのね。

返事も待たずに庭に出てみれば、成る程、祭り騒ぎである。
手下共が死屍累累としている中、苦心惨憺にて最終目標を撃破。
で、斃された奴の遺言
「此れは何千年も繰り返された俺の俺の分身の遊戯である、異分子であるお前が其れを断ち切った、お前に此の国を任せよう」
つーか、あんたも爺ィも同んなじかい!

という経緯にて当代の王となる。
城に帰ると執事より王位継承の祝辞を述べられ、次いで女医と踊り子を紹介される。
・・・女医は過剰に処方箋を書く藝風で然程親身になって治療しているとは思えず、中東風な舞踊を披露する踊り子は絵的に美しくないというのが、新しい主人に対する嫌がらせかとも邪推したりもした。
・・・其れでも旅は未だ續くのである。

(續く)

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May 10, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾陸回)

<絶望ト恍惚>
其の地方の長(実は杖の爺ィ)より、爵位を呉れてやると云われる。
貰える物は何でも貰うのが身上ではあるが、当然条件が付き纏う。
「暗殺ね」
何ですと。
「暗殺を知らんのか」
知ってますよ、知ってますけど其れはー、人としてどうでしょうか。
「だって、殺さんと椅子が空かんじゃないか」
・・・勇退とか駄目すか。
「聞く耳持たんな」
糞爺ィ。
「何をぅ!」
聞こえてるし。

しかも、当地方は宮殿を挟んで南北に分断されており、何方かの領主としての爵位を授けるという。
ざっくり云うと、方や陽性、方や陰性人柄と土地柄である。
絵的には陽性側の領主に就任したいのだが、そうなると薬物中毒だけが罪である現・領主を殺害せねばならないし、陰性側である疑心暗鬼を絵に描いた女領主が憎いかと云われればそんな思いも無きにしも非ずとは云えども、陰性爵位の環境は微妙だし、等等思い悩むこと数分、即決しろとの言に逆らわず、陽性を選択
「あー、彼奴も遂に退職か、ていうか殉職? そういやァ最近陰薄かったしなァ、じゃァ毒殺でよろしく」
此の糞爺ィ。

夕餉支度中のヒレ肉と葡萄酒致死量の薬物を混入させ、自ら晩餐会にも出席して見物する事数分。
現領主、薬物摂取による昂揚感からか、食卓より立ち上がって歌い踊り出す。
時折目が合うも、つい逸らしてしまうのも暗殺者の人情なのだろう。
やがて現領主は、心臓が息が歌が、と苦しみ出し其の場に斃れて事切れる。
側近どもは棒立ちとなっており、自分が疑われやしまいかと側近の一人(料理番)に恐る恐る話し掛けてみるが、「祭りの始まりだァ!」と振り付きで踊り出し大変に浮かれぽんちな様子。
早速杖の爺ィに結果を報告すると、晴れて公爵に任命され領地を与えられる。
・・・もう後には戻れないのだ、逝く処まで逝くしかないのだと自分に云い聞かせながら玉座に座るのだ。

(續く)

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May 09, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾伍回)

<熱狗>
街道より外れた国境沿いの小高い丘に来ている。
杖を突いた老人の像の前で下着姿の男女が群れている。
何をしとるんだ、君らは。
「邪魔をするな」
邪魔はしないけど、そんな破廉恥な格好して。
「我が主への捧げ物を教えてやる」
主ってあれ? あの杖の爺ィ?
「よく聞けよ、毛糸にレタスに小さい石だ」
・・・何か虫っぽくて厭かも。
「持ってないなら此処には用は無い筈だ! 去れ!」
って此の人、偉そうですけど下ァ履いてないんですよ。

それでもまァ希望通りの供物を持参して現地に集合。
無事に捧げて請け負ったのは「迷信深い村を破滅させる」という仕事である。
早速村へ出張すると、村長らしき人物より村的終末思想に付いて伺えた。
「初めに害虫(鼠)が大量発生する」
「次に大事な羊達が全頭死ぬ」
「最後は恐ろしくて云えない」

成る程、あたしがやるのは臭チーズをぐらぐら煮込んでミッキィとミニィを呼び出して、
羊舎で迷える子羊を皆殺しにして、
最後の瞬間を待てばいいんですね。

全ての仕事を順調にこなしてゆく。
村人らが不吉な出来事の前兆に怯え逃げ惑う中、村の中央部で其の時を待っていると、空から・・・犬が燃えながら大量に降って来た
・・・杖の爺ィ、洒落きついわー。

(續く)

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May 08, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾肆回)

<海豚蹴リデ痺レテミタイナ>
湖沿岸の南方都市に居る。
此処は毒素を含んだ湿気が売りという。
・・・観光地にはならんな、それは
前述の環境ゆえに、毒耐性を持つ民族の姿をよく見掛ける。
「飛魚」という異名を持つ泳法の達人が住むという噂話を耳にし、街を徘徊するが見つからない。
別の情報筋では「運河を泳いでいるよ」という。
流石に街の外に出掛けてまで探すのは骨が折れると諦め、其の日は遇えず終いであった。
そんな達人の存在も忘れ、数週間後の深夜に同地を訪れていると、官憲らが犯罪者らしき人物を追い詰めている現場に遭遇する。
街の外では然程珍しい光景ではないが、中となると住人の誰もが騒騒しくなる為、ある意味祭りとなっており、街も賑やかに活気付いている。
暗がりの中、追われてる人物の顔を見ると・・・飛魚先生である。
やがて先生は街の中央部にある聖堂に逃げ込み、続いて官憲らも踊り込む。
状況を見届けてやらうと後に続くも、官憲は世間話をしながら入れ違いに出て行き、中は静寂そのものであった。
・・・先生、殺されたかしら。
せめて遺体だけでも確認しておこうと姿を探すも見つからない。
背後でが開いて閉まる音が聞こえ、自分も外へ出てみる。
人影を追うと先生其の人である。
先生、無事だったんすね。
「あ、君か、最近は物騒だから気を付けた方がいいぞ」
何を呑気な。

・・・後で気付いたのだが、此の先生は泳法の達人ではなく、盗ッ人技術の熟練者だったと知る。
名前から連想する先入観で誤解していたようだ。
先の捕物劇万引程度の盗みで聖堂で捕獲され、罰金刑で放免されたのだろうと推測。
こんなすっとこどっこいから何も教わる技は何も無いと覚り、此の街を後にするのだった。

(續く)

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May 07, 2011

『荒木ト寶屋』

どうにもが細くなっている気がする。
自宅での妄想劇場愉悦に過ぎ、前月度比で酒量が激減している所為だろうか。(やや嘘)

そうだ、内臓を喰おう。
目指すは西亜細亜周辺民族の方が采配を振るうという稀有なほるもん専門店である。
運ばれて来る炭火赤外線効果で肌艶がみるみる甦る(気がする)

和牛脂付きしま腸(醤油・にんにく醤油・味噌・甘辛・塩・梅だれ)
和牛肝グレンス(塩)
和牛上ミノサンド(味噌)

極上とまで名の付くシビレが品切れだったのは残念だったが、それでも多量の脂を摂取した気になった。
顔面から零れ落ちそうな脂をなみなみと湛え、今日はもう顔を洗わないぞと決め込んで、二軒目の店では先に取り込んだ脂にをするべく、泥炭仕込みの酒精五臓六腑に滲み渡らせるしかないのだ。

(了)

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May 06, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾参回)

<鹿鳴館ガ下駄ヲ履ク>
入り組んだ入り江で構成されているに来ている。
島内北東部にある聖堂にて緑色の法衣を纏った聖職者より当聖堂の由来である聖人の逸話を聞かされる。
教団の信者に裏切り者が潜んでいると感じた聖人は晩餐会にて自分以外全員の盃に毒を盛り、倒れた彼らの腹部を鋭利な何かであれこれして取り出した内臓読んで信者らの真意を探ろうとしたが、何だかさっぱり分からなくてうやむやにしたくて自分も自害したという。
何だそれは
という突っ込みはさて置いて、そんな茶目ッ気のある聖人の衣が貰えるというので、有り難く受け取っておく。
・・・って此れドレッシーにも程があるんですけど。
陰謀と奸計と殺戮と暴力の世界で生きている自分には程遠い社交界貴婦人的正装である。
それでも洋傘(らしき得物)を小脇に抱えて今日も小粋に石畳の上を走り抜けるのだ。

(續く)

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May 05, 2011

『骨髄ト圓錐』

肉肉しい一日である。
近接した最寄り駅が存在しないという地階に店を構える専門店へと向かう。
同行者は既に着座している様子。
遅れた非礼を詫びもせず、ぞんざいに座り込むと店員を呼び付けて咥え楊枝にて発注。
特に伺いもせず、「特選」と名付いた品を頼む。

ミスジ
サブトン
ヒレ
ハラミ
トモサンカク

どれもが腔中にて蕩ける高品質ではあるのだが、幾つかの種は希少部位の為に各各一枚ッ切りなのが切なさを助長する。
とは云え、わさわさ焼いてもりもりと喰いたいかと問われれば、否、少しが好いと答えるのは目に見えているのだ。

後は定番とも呼べる品品を幾つか喰らい、期せずして鬼教官と化した同行者の下で涙ながらに慈悲と教えを乞い、打ちひしがれた面持ちで帰路に着くしかないのだ。

(了)

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May 04, 2011

"Sebastian e Andrés"

"ERRAZURIZ" Merlot Cabernet Sauvignon (CHILE / Aconcagua)
"Ginestet Bordeaux Rouge" Merlot Cabernet Sauvignon (FRANCE / Bordeaux)
"Ginestet Bordeaux Blanc" Merlot Cabernet Sauvignon (FRANCE / Bordeaux)

(fin)

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May 03, 2011

"Luciano and Catherine"

"What Happens in Vegas... (2008/20th Century Fox/99)"
directeor;
Tom Vaughan
starring;
Ashton Kutcher as Jack Fuller, Jr.
Cameron Diaz as Joy McNally Fuller
Rob Corddry as Jeffrey "Hater" Lewis
Lake Bell as Toni "Tipper" Saxson
Dennis Farina as Richard "Dick" Banger
Zach Galifianakis as Dave the Bear

"Zoolander (2001/Paramount Pictures/89)"
director;
Ben Stiller
starring;
Ben Stiller as Derek Zoolander
Owen Wilson as Hansel McDonald
Will Ferrell as Jacobim Mugatu
Christine Taylor as Matilda Jeffries
Milla Jovovich as Katinka Ingabogovinanana
Jerry Stiller as Maury Ballstein
David Duchovny as J.P. Prewitt
Jon Voight as Larry Zoolander
cameos;
Vince Vaughn as Luke Zoolander
Judah Friedlander as Scrappy Zoolander
Christian Slater
Cuba Gooding Jr.
Lenny Kravitz
Paris Hilton
David Bowie
Claudia Schiffer
Natalie Portman
Victoria Beckham
Winona Ryder
Billy Zane
Stephen Dorff

"Gangs of New York (2002/Miramax Films/166)"
director;
Martin Scorsese
starring;
Leonardo DiCaprio as Amsterdam Vallon
Daniel Day-Lewis as Bill "The Butcher" Cutting
Cameron Diaz as Jenny Everdeane
Liam Neeson as "Priest" Vallon
Jim Broadbent as William "Boss" Tweed
Henry Thomas as Johnny Sirocco
Brendan Gleeson as Walter "Monk" McGinn
Gary Lewis as McGloin
John C. Reilly as "Happy" Jack Mulraney
Stephen Graham as Shang
Martin Scorsese as Wealthy homeowner

(end)

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May 02, 2011

『幻想ト猊下』 (第弐拾弐回) ※

<赫イ兎>
気が付けば自分の名刺には雑多な肩書きでつらつらと並び余白要素が皆無となっている。
其のどれもが大仰で赫面、噴飯物である。
初めて呼ばれたのが「英雄」、「ヒデオ」ではなく"Hero"方面である。
初に訪れた時点で既に壊滅していた都市を解放した際に戴いた称号ではあるが、特に何かに貢献した記憶も無く、其の名称さえ面映いばかりである。
他に論っても果てしが無いので此処で止しておくが。
無論自称ではなく公称であり、何処かの泡沫候補とは異なる立ち位置であると胸を張って云えるのが此れ幸いである。

(續く)

※(改題)『終ノ棲家』 (第玖回~第弐拾壱回) #009-021
※(改題)『継ぎ目無きヘリウムの都』 (第壱回~第捌回) #001-008

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May 01, 2011

『嫉妬ト慾望』

西新宿、二十三時、小雨。

女子居ないの?」
居るよ、その辺にうろうろしてるじゃん。ほら、ほら。

「そうじゃなくてさ、特定の彼女はいらっしゃいますかと聴いています」
あー、そういう話題か。まァ居ませんねー。

「作らないの?」
どうやって作るのさ。

「しょ、紹介とか」
しょうかいぃぃぃ。

「・・・変なところ掻かないでくれますか」
面白い事云うね。

「だっ、だからさ、出会いとかそういう」
であいぃぃぃ。・・・此れは無理があるな。

「ていうか、人の話聞けよ
ていうか此れはお前の話だな。

「ばっ、だっ、ちがっ、・・・そうだよ!
開き直りやがった。

「俺が作りてぇよ」
どうやったら作れるのかな。

「話戻してんじゃねぇよ」
まァひとつ云えるのはだ、お前に、紹介する、義理は、ない。

「・・・さらっと酷い事云うね」
飲んでっからね。それにそういうのって後後面倒じゃん?

「じゃァどうしたらいいんだよぉぉ(涙)
えー? 泣くかー? 面倒臭ぇ野郎だな。

「・・・俺、行くわ」
何処へ。

キャバ嬢が待ってるんだ、上野で」
・・・。

何処でも行けって。

(了)

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