だれがこんな締めくくりを予想しただろうか。
こんな寒い夜はあったかいラーメンでも食べて帰ろう。
ふとそう思い立ち、帰りに立ち寄ったのは”「味噌タンタン麺」だけ”は自分好みの味がする、地元では「不味い」と評判のラーメン店。
もちろん注文したのは「味噌タンタン」。
「あい。味噌タンタンね」と返事が返ってきたのは、３回くらい「すみません、味噌タンタン」と言った後だった。
相変わらずニンニクが効いて白菜と木耳と挽肉と卵という不可解な具が絶妙なハーモニーを織り成す不思議なラーメンだ。
「味噌タンタン」の奇怪だが癖になるその味を充分堪能し、スープを半分程飲み干したところで食後の一服。
これ以上この店にいると、コートがニンニク臭くなるからさて帰ろう。
普段はそのままお会計をしてもらうところだが、その時は「常識人」もしくは「社会適合者」を装いたかったのであろうか、「ごちそうさまの証」としてドンブリを一段上のカウンターに上げようとしたのだった。
無理はいけない。
案の定、指を滑らせると同時に見事にドンブリをひっくり返し、味噌スープを思いっきり全身に浴びる結果となってしまった。
コート、ズボン、バッグ、靴。全てが味噌スープづけ。
「大丈夫？大丈夫？」、慌てて推定５０歳以上のおっさん店員３人衆が水で濡らした手ぬぐいでボクのコートやら何やらを拭き始める。
うわ、何だこの匂い、もういい、そもそもその手ぬぐい自体臭いから、うわ、くせー、何に使った手ぬぐいだよ、それ。余計コートが臭くなったぞ。
「クリーニングに出すんでもう大丈夫です。」
そう言った後、逃げるようにお会計。
【小さな親切大きなお節介】
昔母親がよく口にしていた言葉を思い出しながら、味噌スープまみれのボクは店を後にしたのであった。
「ダメ人間は、慣れないことをしようとすると必ずとんでもない失敗を犯す」
家を出たのは10時3分の急行電車に丁度間に合う時間。9時53分だった。
いつもなら20メートル程歩いたところでタバコに火をつけ、暗い1日の始まりを肺いっぱいに感じるところであるが、ポケットを探ってもタバコがない。
どうやら忘れてきてしまったようだ。
一瞬取りに帰ろうかどうか迷ったが、急行の時間が控えている。
先を急がねば…。
しかし80メートル程歩いたところで何が何でも吸いたい衝動に駆られ、ついには途中のローソンで立ち止まり、セブンスターを購入してしまった。
これによる時間のロスはおよそ2分。間に合うかどうか微妙だ。
かといって走る気力もなく、駅に着いたのは10時3分ジャスト。
急行電車を見送りながら、たった一本のタバコを我慢できなかった自分に呆れ、どうでもよくなる。
やむなく各駅停車に乗り、途中駅で急行の待ち合わせ。
この待ち合わせの間、またもやタバコを吸いたい衝動に駆られ、全面終日禁煙にも関わらずホームのはじっこで一本。
気分が落ち着いたところで売店で日経ＰＣを購入。
たまにはこういう本を読むのもいいよね。
待ち合わせていた急行電車に揺られながら日経ＰＣを熟読。
しかし表紙にでかでかと書いてある【特別付録「エクセル大辞典」】がいくら熟読しても付いてる気配がない。ってか雑誌の厚みからして確実に付いてない。
付録に魅かれて買ったはずだったんだけどな…。
「ダメ人間は、付録だけ抜き取られた商品を運悪く購入してしまいがちだ」
先日行ったラーメン屋でもそうでした。
※ラーメン屋というよりつけ麺屋といった方が正しいでしょうが、
ボクはつけ麺といったものに全く馴染みが無く、且つ旨いと思ったことが一度もないので、ここではラーメン屋と言いきってしまいます※
初めて行くラーメン屋というものは非常にドキドキするものです。
オーソドックスにラーメンを頼むか、ラーメンが不味かった時の事も考え「ラーメン＋チャーハン」などのセットにするか、もしくは思いっきり逃げの思考で「肉野菜炒め定食」などとりあえずラーメンとはかけ離れたものを頼んでみるか。食券の機械を目の前にして色々考えてしまいます。
※但しラーメン屋は「ラーメン」を売りにしているので、逃げで頼んだつもりの定食が大失敗に終わる可能性も多分にあります※
ボクはとりあえず「ラーメンと半チャーハンのセット」を頼むことにしました。
これで両方美味しければチャラ。
どっちも不味ければ900円の大損。
ラーメンが不味くてチャーハンが美味しい、もしくは逆なら500円程度の損。
単品を頼むよりは損害額を抑えることができます。
お腹が減りに減って待ちに待った「ラーメンと半チャーハンのセット」でしたが、
出てきたものは予想通り、ぶっとい縮れ麺（つけ麺用の麺）がどっかり器に入ったいかにも不味そうなラーメンでした。
見た目があまりに不味そうだったので、見た目が若干ラーメンよりマシなチャーハンから先に食べることに…。
これがベタベタしててなかなかB級の味だったのでラーメンのスープで舌を整えようとしたのですが、このスープがまた煮干のきいた口に全く合わないスープでありましたので、ボクはどうしてよいのかわからなくなり、心の中でつぶやく言葉すら失ってしまい、ただただそれを味わうこともなく、昼休みに皆が外で楽しそうに遊ぶ中、先生に給食完食を迫られ教室に1人ポツンと取り残されていたあの頃を思い出しながら、半ば義務的に「ラーメンと半チャーハンのセット」をたいらげたのでした。
セットを頼んで被害を和らげるという作戦は見事失敗に終わり、やはり単品で頼むのが一番無難であること、つけ麺屋でラーメンを頼んではいけないことを30間近にして学んだのであります。
「ダメ人間は、その店で一番不味いモノを無意識に選んでしまう」